西アフリカで、エボラ出血熱の大量感染が起きている。国際社会が連携し、拡大を食い止めなければならない。
感染は今年2月頃、ギニアから広がった。隣接するシエラレオネとリベリアを含め、死者は3国で900人を超えた。1976年に最初の患者が確認されて以来、最大の被害である。
3国と国境を接していないナイジェリアで死者が出たほか、中東のサウジアラビアでも、似た症状の患者が死亡した。感染が世界に拡散しかねない危険な状況だ。
世界保健機関(WHO)は「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、空港での監視強化や旅行者への情報提供など拡散防止策を取るよう各国に勧告した。
日本も「対岸の火事」とみなさず、着実に対策を取るべきだ。
エボラ出血熱は、患者の血液などに触れることで感染する。有効な治療法はなく、患者の致死率は50~90%と極めて高い。
過去の感染は主に農村部で起きたが、今回は人口の多い都市部にも及んでいる。感染が広がりやすい、憂慮すべき事態である。
エボラ出血熱の拡大を封じ込めるには、感染者を厳格に隔離することが肝要だ。住民に対する衛生知識の周知徹底も欠かせない。
大量感染が起きた3国は、近年まで内戦やクーデターが続き、行政や医療の体制は今も脆弱だ。自力での対処には限界がある。
多くの医師や看護師が感染したため動揺が広がり、治療スタッフの確保が困難になっている。
米国政府は、西アフリカに派遣する医療専門家を50人増員する方針を決めた。現地の厳しい現状を踏まえてのことだろう。
日本も資金援助など、できる限りの支援が求められる。
外務省はギニアなどの3国を対象に「感染症危険情報」を出し、不要不急の渡航を延期するよう呼びかけている。感染を日本に飛び火させないため、水際での警戒を怠ってはならない。
国内で感染者が出た場合は、指定医療機関に隔離されることになっている。搬送や受け入れの手順を再確認することが大事だ。
問題は、エボラ出血熱など致死率の高い感染症のウイルスを安全に扱うための特別な施設が、国内には1か所もないことである。病原体の分析を外国に依頼せざるを得ないようでは、対応が後手に回る恐れがある。
国民の命を感染症から守ることも国家の重要な危機管理である。体制の強化を急ぐべきだ。
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