軍事的挑発を続ける中国や北朝鮮への警戒を怠らず、自衛隊の能力向上や関連法整備を着実に進める必要がある。
2014年版防衛白書は、日本周辺を含むアジアの不安定要因が「より深刻化している」と明記し、特に中国軍の挑発行動などに「強い懸念」を示した。
昨秋の東シナ海における中国の一方的な防空識別圏設定については「不測の事態を招きかねない非常に危険なもの」と批判した。
その後、中国軍戦闘機による自衛隊機への異常接近も相次いでおり、白書の指摘は当然である。
領空侵犯の恐れがある軍用機などに対する13年度の航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)は810回で、24年ぶりに800回を超えた。半数以上が対中国機だ。
中国の挑発が日中間の緊張を高めていることは明らかだ。偶発的衝突を回避するため、日中間のホットライン設置などを急がねばならない。日本は、米国などと連携し、中国に危険な行動の自制を粘り強く促すことも大切だ。
白書は、中国海軍の艦艇部隊が、南西諸島だけでなく、北海道の宗谷海峡を昨年7月に初めて通過したことなどに言及し、外洋展開能力を向上させていると分析した。防衛省は、その動向の詳細を監視し続けることが欠かせない。
北朝鮮は今年3月、早朝・夜間に移動式発射台から複数の弾道ミサイルを撃った。白書は、北朝鮮がミサイルの「性能や信頼性に自信を深めている」と指摘した。
中距離弾道ミサイル・ノドンは日本の大半を射程に収めている。北朝鮮のミサイル発射の実戦能力が向上し、核兵器の小型化が実現すれば、脅威は一段と高まる。
日本は、海上自衛隊のイージス艦などによるミサイル迎撃体制を強化するべきだ。米軍との防衛協力を緊密化し、北朝鮮に対する抑止力も強めたい。
白書は、集団的自衛権の行使を限定的に容認する新たな政府見解の閣議決定を「歴史的な重要性を持つ」と評価した。様々な緊急事態が発生した際に、切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備の重要性も強調している。
偽装漁民による離島占拠など、平時でも有事でもない「グレーゾーン事態」に迅速に対処する体制を整えることが急務である。年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定に反映したい。
防衛装備移転3原則に基づく武器の国際共同開発を進めて防衛生産・技術基盤を強化し、総合的な防衛力を高めることも重要だ。
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