防衛白書と政権 国民と向き合う姿勢を

毎日新聞 2014年08月06日

防衛白書と政権 国民と向き合う姿勢を

今年の防衛白書には、1970年に当時の防衛庁長官として白書を創刊した中曽根康弘元首相が、刊行40回を記念して文章を寄稿している。

読売新聞 2014年08月08日

防衛白書 中朝の軍事挑発に警戒強めよ

軍事的挑発を続ける中国や北朝鮮への警戒を怠らず、自衛隊の能力向上や関連法整備を着実に進める必要がある。

2014年版防衛白書は、日本周辺を含むアジアの不安定要因が「より深刻化している」と明記し、特に中国軍の挑発行動などに「強い懸念」を示した。

昨秋の東シナ海における中国の一方的な防空識別圏設定については「不測の事態を招きかねない非常に危険なもの」と批判した。

その後、中国軍戦闘機による自衛隊機への異常接近も相次いでおり、白書の指摘は当然である。

領空侵犯の恐れがある軍用機などに対する13年度の航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)は810回で、24年ぶりに800回を超えた。半数以上が対中国機だ。

中国の挑発が日中間の緊張を高めていることは明らかだ。偶発的衝突を回避するため、日中間のホットライン設置などを急がねばならない。日本は、米国などと連携し、中国に危険な行動の自制を粘り強く促すことも大切だ。

白書は、中国海軍の艦艇部隊が、南西諸島だけでなく、北海道の宗谷海峡を昨年7月に初めて通過したことなどに言及し、外洋展開能力を向上させていると分析した。防衛省は、その動向の詳細を監視し続けることが欠かせない。

北朝鮮は今年3月、早朝・夜間に移動式発射台から複数の弾道ミサイルを撃った。白書は、北朝鮮がミサイルの「性能や信頼性に自信を深めている」と指摘した。

中距離弾道ミサイル・ノドンは日本の大半を射程に収めている。北朝鮮のミサイル発射の実戦能力が向上し、核兵器の小型化が実現すれば、脅威は一段と高まる。

日本は、海上自衛隊のイージス艦などによるミサイル迎撃体制を強化するべきだ。米軍との防衛協力を緊密化し、北朝鮮に対する抑止力も強めたい。

白書は、集団的自衛権の行使を限定的に容認する新たな政府見解の閣議決定を「歴史的な重要性を持つ」と評価した。様々な緊急事態が発生した際に、切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備の重要性も強調している。

偽装漁民による離島占拠など、平時でも有事でもない「グレーゾーン事態」に迅速に対処する体制を整えることが急務である。年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定に反映したい。

防衛装備移転3原則に基づく武器の国際共同開発を進めて防衛生産・技術基盤を強化し、総合的な防衛力を高めることも重要だ。

産経新聞 2014年08月08日

防衛白書 「国の守り」新たな姿示せ

刊行40回目となる今年の防衛白書の特徴は、集団的自衛権の行使を容認した7月の閣議決定について、「わが国の平和と安全を一層確かなものとしていくうえで、歴史的な重要性を持つ」と、新しい方針の意義を強調したことである。

憲法解釈の変更に基づいて安全保障政策を実際に前進させるには、閣議決定の内容を自衛隊の行動に具体的に反映させる法整備が必要だ。

安倍晋三首相は自ら述べたように、法整備の全体像をしっかり示してほしい。自衛隊の任務がどのように拡大され、日米同盟の強化に結びつくのか。日本の平和と国民の安全をどう確保しようとしているのかを国民に説くべきだ。

記述の対象期間が7月の閣議決定までとされるなど、制約があるにせよ、白書の説明には物足りない点も見受けられる。

停戦前のペルシャ湾での機雷除去など、政府が自民、公明両党による与党協議へ提示した事例を取り上げなかったのは残念だ。

注目したいのは、日本やアジア太平洋地域において、平時と有事の間といわれる「グレーゾーン」事態が増加傾向にあることを白書が指摘し、「重大な事態に転じる可能性」への懸念を初めて盛り込んだことだ。

こうした事態には、偽装した武装集団が尖閣諸島など日本の離島へ上陸する場合が考えられる。

対応には、警察や海上保安庁と防衛省・自衛隊との緊密な連携が求められる。自衛隊の投入をためらっては、取り返しがつかなくなるケースもありえる。関係省庁は新しい連携態勢の運用開始を急いでほしい。

日本を取り巻く安保環境は一層厳しさを増している。中国や北朝鮮の軍事活動が主な原因だ。

白書は、海洋進出を図る中国について、昨年11月に東シナ海上空に一方的に防空識別圏を設け、今年5、6月に中国軍戦闘機が自衛隊機に異常接近したことを「非常に危険」と批判した。

核・弾道ミサイル開発を続ける北朝鮮は「差し迫った脅威」だと断じた。北が対米核抑止力を持ったと過信して軍事的挑発を「重大化」させる恐れがあるとの危機感も表明した。

財政事情が厳しい中でも抑止力の構築は欠かせない。安保政策の転換を実現する自衛隊の人員、予算の充実が必要だ。

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