佐世保高1殺害 凶行は防げなかったのか

読売新聞 2014年08月03日

佐世保高1殺害 なぜ少女は凶行に走ったのか

長崎県佐世保市の県立高校1年の女子生徒を殺害したとして、同級生の少女が逮捕された。

少女はなぜ、凶行に及んだのか。捜査当局には徹底解明を求めたい。

少女は自宅マンションで、女子生徒を工具で殴った後、首を絞めて殺害し、ノコギリなどで遺体の一部を切断したとされる。

殺害された女子生徒は歴史好きで、大学の文学部への進学を希望していた。父親は告別式で「娘は宝物だった」と語ったという。悲しみは、察するに余りある。

少女は調べに対し、「人を殺してみたかった」という趣旨の供述をしている。女子生徒とは中学時代からの同級生で、2人の間にいじめやけんかなどはなかったという。事件当日も、犯行直前まで2人で買い物を楽しんでいた。

その友人をなぜ、殺害せねばならなかったのか。猟奇的な面も際立つ。理解に苦しむばかりだ。

少女は幼い頃から成績が良く、スポーツにも熱心だったが、小学生時代には、給食に洗剤などを混入するトラブルを起こした。

昨秋、母親が病気で死亡した。今年に入って父親が再婚した頃、少女は父親に金属バットで暴力を振るった。小動物を解剖する問題行動も見られたとされる。

多感な年頃である。家庭環境の変化が、少女の心に何らかの影響を及ぼしたのだろうか。

少女は今後、家庭裁判所に送致される見通しだ。犯行に至る心理状態を解き明かすには、精神鑑定のほか、家庭環境や成育歴の詳しい調査が求められよう。

少女は今春からマンションで一人暮らしを始めた。高校には、ほとんど登校していなかった。

中学時代の教員らが時折、少女を訪ね、一緒に食事をしながら、相談に乗っていた。少女を支えようとする学校関係者の努力が実らなかったのは、残念である。

児童相談所には6月、少女を診察した精神科医から「人を殺しかねない」と相談があったが、児相は助言をしただけだった。

少女の行為が深刻さを増しているという情報が、学校や警察に伝わらず、適切な対処につながらなかったことが悔やまれる。経緯の検証が欠かせない。

佐世保市では10年前にも、小6女児が同級生を失血死させる事件が起きた。その後、命を大切にする教育が全国で広がっただけに、今回の事件の衝撃は大きい。

政府は、子供の心の問題に対応するスクールカウンセラーの活用などを、さらに進めるべきだ。

産経新聞 2014年08月01日

佐世保高1殺害 凶行は防げなかったのか

かわいそうで、たまらない。長崎県佐世保市の高校1年女子生徒は、1人暮らしの同級生の部屋で惨殺された。

両親は女子生徒を「大切に育ててきた宝物」と表現した。心痛のほどは想像もつかない。

加害少女は殺害の動機を「人を殺して解体してみたかった。個人的な恨みはなかった」と供述した。残虐極まりない犯行だが、彼女もまた加害者としての大きな不幸を背負う。凶行に至る前に彼女を止め、救うことはできなかったか。

少女は小学6年時に、同級生の給食に洗剤など有害物質を混ぜる問題行動を起こしていた。過去に何度もネコなどを解剖したことがあると供述している。今年3月には、自宅で父親を金属バットで殴打し、重傷を負わせた。

異常行動の兆候はあり、しかもエスカレートしていた。給食への有害物質混入時に、徹底したカウンセリングや専門家の治療を受けさせるべきだった。

佐世保市内では10年前、小学6年の女児が同級生に殺害される事件があり、以来、命の大切さを学ぶ教育に力を入れてきたという。それも大事だが、一方で個別の問題への対処に問題はなかったのか。検証が求められる。

金属バット殴打時には刑事事件として警察に届け、医師の診断をあおぐべきだった。だが少女は父親に1人暮らし用の部屋を与えられ、4月入学の高校にはほとんど登校していなかった。彼女を、一人にしてはいけなかった。

後からなら、何でも言える。それでも言わなくてはならない。彼女を助けるチャンスは、何度もあったはずなのだ。

少女の動機を聞き、思い起こしたのは平成12年5月、愛知県豊川市の住宅で64歳の主婦を殺害した17歳の少年だ。彼は「人を殺してみたかった。死ぬとどうなるのか見てみたかった」と供述した。精神鑑定が繰り返され、少年は医療少年院に送致された。

同年同月には佐賀市の17歳の少年が西鉄高速バスを乗っ取り、乗客の68歳の女性を殺害した。事件の2カ月前には、卒業した中学校の襲撃も計画した。その際の手記には、次の一文もあった。

「誰か僕を止めてください」

少年の内なる心の叫びではなかったか。せめて少女にも、同じ葛藤があったと信じたい。こうなる前に助けてあげたかった。

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