ワクチンがあれば新型インフルエンザの感染を防ぎ、急拡大も抑えられるのではないか――。
こんな期待が高まっているが、そうした思惑通りに行くだろうか。
例年のインフルエンザでも、ワクチンの接種で流行を抑え込めたという例はないからだ。
一定の効果はあるだろう。例年の流行でもワクチンを接種すれば症状は軽い、と言われてきた。
大勢が接種すると、感染拡大のペースが遅れるという効能も指摘されている。ワクチンで重症化する患者が減れば、その分、医師や病院も治療に余裕が持てる。
問題は、インフルエンザワクチンの予防効果が低いことだ。接種すれば発症を防げる「はしかワクチン」などと異なる。しかも一般的にワクチン接種には、ごくわずかだが、副作用がある。
政府は、インフルエンザワクチンの限界を国民に丁寧に説明する必要がある。特に大切なのは、ワクチンだけが対策ではない、と理解してもらうことだ。
まず予防する。手洗い、うがいは鉄則だ。ほとんどの人に免疫がないので、流行が拡大すれば、感染を免れることはできないという自覚も必要になる。
その際、腎臓病などの持病を抱えた人や幼児を除き、通常はほとんどが軽症で済む、ということも覚えておきたい。無論、軽症でも感染を広げない注意は要る。
ただ、例年のインフルエンザでも、ワクチン不足は各地に不安を広げることが、よくある。
まして、今回は新型だ。新型用ワクチン製造は本格化しているが必要量に追いつかない。国内で約2000万人分が不足する、とも言われている。新型のワクチンを巡る混乱は避けたい。
そのためにも、ワクチンをだれに接種するか、優先順位の論議を急ぐ必要がある。医療従事者や新型感染で重症化しやすい人は当然だろう。それでも、現在の供給見通し量では追いつかない。
政府は、新型用のワクチン確保に全力を挙げるべきだ。
その切り札として、欧米などからのワクチン輸入が有力視されている。ただ、安全性を確認する方法や副作用が出た時の詳細な対応が決まっていない。
国内では15年前まで、小中学生全員にインフルエンザワクチン接種を義務づけていた。だが、副作用被害に加え効果を疑問視する意見も出て、廃止された。
再びワクチンへの不信感を広げることがない対応が重要だ。
この記事へのコメントはありません。