衆院選制度改革 有識者答申に拘束力が必要だ

毎日新聞 2014年07月30日

衆院選挙改革 調査会は結論を急げ

衆院の選挙制度改革を検討する第三者機関のメンバーが決まった。検討するテーマは幅広い。だが、まず喫緊の課題である小選挙区の「1票の格差」是正と定数削減を優先させて早急に結論を出すべきである。与えられた時間は長くはないからだ。

伊吹文明衆院議長の諮問機関となる「衆議院選挙制度に関する調査会」は、(1)現行選挙制度の評価(2)議員定数削減(3)「1票の格差」是正(4)衆参の選挙制度のあり方−−について9月から議論するという。委員は佐々木毅・元東大学長、平井伸治・鳥取県知事、山田孝男・毎日新聞特別編集委員ら15人が選ばれた。

気になるのは答申の期限を区切っていない点だ。伊吹議長は「1年以内」との認識だというが、スピード感が足りないのではないか。

中でも緊急を要するのは「1票の格差」問題だ。2012年末の衆院選での格差に対し、最高裁は昨秋「違憲状態」との判決を出した。衆院は小選挙区を「0増5減」する措置を決めてはいるが、その後、格差は再び拡大しており、それが小手先の措置だったのは明らかだ。

前回衆院選から1年半余が経過して、いつ衆院解散があってもおかしくない状況を迎えているが、ここで何も手をつけなければ「0増5減」のままでの選挙となる。国会=立法府が、司法から「違憲」または「違憲状態」と判断される異常事態は避けなければならない。答申後の法改正手続きや周知期間を考えれば答申は早ければ早いほどいい。

消費増税に伴い、自民、民主、公明3党が「自ら身を削る」と一昨年秋合意した定数の大幅削減もたなざらしだ。これも政治への信頼を取り戻すために急ぐべき課題である。

一方、現行の衆院の比例代表並立制にはさまざまな問題点が指摘されているのは事実だ。しかし並立制を根本的に変えるのかどうか、あるいはどんな制度が望ましいのかについては委員の中でも意見が分かれよう。参院も含め制度自体の改廃は本来、各党が案を出し合って国政選挙の争点とすべきテーマといっていい。やはり、これは中期的課題と位置づけ、当面、緊急課題を先行させるのが現実的だ。

与野党の利害が対立し、国会議員自らでは一向に結論が出せないから今回の調査会設置に至った経緯を忘れてはいけない。それを踏まえれば政党側は調査会の答申を尊重すべきだと改めて念を押しておきたい。仮に答申後も各党がもめて結論を出せないとすれば、調査会を時間稼ぎに使ったと見られても仕方あるまい。

また、調査会設置に反対した共産党と社民党の理解が得られるよう努めるのも議長らの役目だ。

読売新聞 2014年07月30日

衆院選制度改革 有識者答申に拘束力が必要だ

有識者に選挙制度改革の検討を委ねる以上、各党は、検討結果をそのまま受け入れることを約束すべきだろう。

伊吹衆院議長の諮問機関である衆院選挙制度調査会の委員が発表された。

大学教授や首長、報道関係者ら15人で、座長には佐々木毅・元東大学長が就任する見通しだ。9月上旬に初会合を開くという。

与野党は3月に有識者会議の設置で合意した。初会合まで半年も要するのは、あまりに遅い。今後の議論を加速する必要がある。

懸念されるのは、調査会の答申の扱いが明確でないことだ。

与野党は6月に、答申を「尊重する」ことで合意している。

ただ、自民党の石破幹事長は、答申について「自動的に法案にするとなると、議会の権能は何かとなる」と語った。答申の内容次第では、一部を修正する可能性を示唆したとも受け取れる発言だ。

与野党は、1年以上も議論しながら、改革策をまとめられなかった経緯を忘れてはなるまい。各党は、答申が拘束力を持つことを改めて確認しなければならない。

調査会は、「1票の格差」是正や定数削減、衆参両院の選挙制度のあり方を検討する。答申時期は、2016年12月までの衆院議員の任期を考慮して決めるという。

答申後の法案作成作業や審議、周知期間を考えれば、残された時間は長くない。調査会は、次期衆院選から適用する改革と、長期的に取り組む課題を仕分けして、議論することが大切である。

喫緊の課題は格差是正だ。

最高裁は、格差が最大2・43倍だった12年衆院選小選挙区を「違憲状態」と判断している。

昨年成立した改正公職選挙法による小選挙区定数の「0増5減」により、いったん格差は2倍未満に抑えられたが、最近の試算では、再び2倍を超えている。

衆院選挙区画定審議会設置法は2倍未満を基本と定めており、さらなる是正策を講じるべきだ。

選挙制度改革では、多党化を避け、安定した政治を実現するという視点が欠かせない。そのためには、当面、現行の小選挙区比例代表並立制の大枠を維持しながら、格差是正を図るのが現実的な選択肢となるだろう。

与野党協議では、各党が競うように大幅な定数削減を主張した。消費増税に伴い、議員も身を切る姿勢をアピールしようとする発想は、大衆迎合と言えよう。

定数削減は、今回の選挙制度改革とは切り離すべきである。

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