名称変更を機に、違法なドラッグの規制をさらに強めたい。
乱用者による事件・事故が相次ぐ「脱法ドラッグ」の名称が「危険ドラッグ」に改められた。
「脱法」では、法規制が及ばないとの誤ったメッセージを与えかねず、安易な使用を誘発する恐れがある。そうした判断から、警察庁と厚生労働省が公募した。
危険性を強調しようという狙いはわかるが、違法性が十分に伝わる名称なのか、という疑問は残る。政府は、危険性と違法性をともに周知する必要がある。
危険ドラッグに手を出したことのある人は、全国で40万人に上るとされる。厚労省が乱用者を対象に調査したところ、4割以上に幻覚や妄想の症状が出ていた。覚醒剤の3割を上回っている。依存症状が生じた人も6割近かった。
極めて有害であることは明らかである。急性中毒症状で救急搬送されるケースも急増している。
蔓延を阻止するため、政府が緊急対策をまとめたのは当然だ。
警察や地方厚生局が連携し、約250か所とされる販売店への一斉立ち入り検査を行うことなどが対策の柱だ。危険薬物を容易に入手できる状況を改めるには、販売店の規制強化が欠かせない。
摘発が後手に回った教訓から、緊急対策では、違法な指定薬物に分類される前でも、薬事法で販売を禁じる「無承認医薬品」として取り締まることも打ち出した。
指定薬物を含む疑いのある商品については、販売業者に成分検査を命じ、結果が出るまで販売を停止させる。命令に従わなければ、業者に罰則を科す。
移動販売やインターネットを介した注文販売に移行しつつある業者の監視を強めてほしい。
密造・販売ルートの実態把握も重要だ。沖縄、石川両県では製造工場が摘発された。原料の薬物は中国から輸入された疑いがある。日本への流入を水際で阻止するため、税関でのチェック体制を強化する必要があろう。
薬事法上は違法とされていない商品であっても、身体に危害を及ぼす恐れがあれば、条例で独自に規制している自治体もある。
和歌山県は、お香やアロマと表示した商品でも監視製品に指定し、扱う店に届け出を義務付けている。大阪府は、警察官の店舗への立ち入り調査権限を条例に盛り込んだ。東京都も条例を改正し、同様の規定を設ける方針だ。
政府の取り組みを補完する上で、自治体の役割は大きい。
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