経済成長と財政健全化を両立するメリハリのきいた予算とするため、要求段階から厳しく精査する必要があろう。
政府が2015年度予算の大枠となる概算要求基準を決めた。人口減対策や地方活性化など、安倍政権の重要課題に予算を重点配分するため、4兆円の特別枠を設けるのが柱である。
特別枠の財源として、公共事業費などの「裁量的経費」を14年度予算の約15兆円から1割削減する方針も盛り込んだ。
優先度の高い政策を推進するため、予算の配分を変えていく狙いは理解できる。
ただ、特別枠に要求できる予算の範囲を、政府の「骨太の方針」や成長戦略で掲げた諸課題に関係する事業としたのは疑問だ。
これでは、外交や防衛なども含めた幅広い分野の事業が要求の対象となり得る。
来春の統一地方選をにらみ、地域振興に関連した歳出圧力も一段と高まろう。
特別枠を「抜け道」にして、成長戦略などにかこつけた要求が各府省から殺到する懸念がある。
財政運営の司令塔である経済財政諮問会議が本来の役割を果たし、対象を具体的に絞り込むべきだったのではないか。
安倍首相は諮問会議で、来年度予算について「メリハリのついた予算とするよう政府を挙げて取り組んでいく」と強調した。
諮問会議の議長である首相は、「不要不急」の事業の要求が横行しないよう、各府省に指導力を発揮してもらいたい。
焦点は、最大の歳出項目である社会保障費の抑制を徹底できるかどうかである。
高齢化などによる社会保障予算の「自然増」は、来年度も1兆円近い。概算要求基準はこれを厳しく精査する方針を明記した。
予算節約の努力を通じ、割安な後発医薬品の利用促進や、年金支給開始年齢の引き上げの検討など、社会保障制度改革を着実に進展させる必要がある。
政府は、現在30兆円と巨額の赤字である国と地方の基礎的財政収支を、20年度までに黒字化する目標を掲げている。
だが、政府試算によると消費税率を予定通り10%に引き上げ、実質2%の経済成長を見込んでも、11兆円の赤字が残るという。
財政基盤が脆弱では、機動的な経済政策を行えず、日本経済の本格再生も望めまい。来年度予算を財政再建に道筋をつける第一歩としなければならない。
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