中国では、外資系の食品メーカーは「世界基準を採用しているから大丈夫」と信頼が厚いという。
ところが、米食品卸大手のグループ会社で、多くの世界的な外食チェーンと取引してきた「上海福喜食品」が、期限切れの肉を使っていた。
日本でも、取引していたファミリーマートと日本マクドナルドが、商品の販売中止や仕入れ先の変更を迫られた。
ファストフードに代表される日々の食では、安全や品質はもちろん、安さも欠かせない。より安い食材と作業員を求め、農畜水産物やその加工品が中国など新興・途上国とわが国を含む先進国の間を複雑に行き交っている。
グローバル化する食の安全・安心をどうすれば確かにできるのだろう。
まずは、今回の問題の徹底解明である。
上海福喜食品は、組織ぐるみで不正行為を続けていたと伝えられる。日系企業を含む取引先の立ち入り検査の時にはきちんと対応し、チェックをかいくぐっていた、ともされる。
事実なら、こうした行為に対する罰則の強化や抜き打ち検査などを含めて、中国行政当局の監督や指導の見直しが検討課題になる。
日本の厚生労働省は、4年前から中国と食品安全に関する定期協議を続けている。日本側からは、残留農薬の管理強化などを求めてきた経緯がある。
中国側から情報提供を受けて、食の安全・安心につながる態勢づくりを進めてほしい。それが日中双方の消費者の利益にかなう。
とはいえ、まず消費者に責任を負うのは、商品を提供する民間企業だ。日本企業の取り組みには定評があるが、改善の余地はありそうだ。
海外の取引先への検査態勢の見直しを急ぐとともに、日本国内の消費者に対する情報提供も増やしてはどうか。
加熱処理した加工食品の多くは、生鮮食品と違って原材料の産地表示が義務づけられていない。しかし、産地や加工場所、仕入れ先をどうチェックしているかなど、消費者が知りたい情報は少なくない。
中国を始めとする海外産の食品は不安だと言ったところで、国産だけでは日常生活が成り立たないのが現状だ。
無責任な企業は淘汰(とうた)され、信頼できる企業が生き残るような仕組みを国際的に整えていく。そのために、一歩一歩、改善を重ねていく以外に解はない。
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