中国食品リスク 国際常識を守れないなら

朝日新聞 2014年07月26日

中国鶏肉 対策もグローバルに

中国では、外資系の食品メーカーは「世界基準を採用しているから大丈夫」と信頼が厚いという。

ところが、米食品卸大手のグループ会社で、多くの世界的な外食チェーンと取引してきた「上海福喜食品」が、期限切れの肉を使っていた。

日本でも、取引していたファミリーマートと日本マクドナルドが、商品の販売中止や仕入れ先の変更を迫られた。

ファストフードに代表される日々の食では、安全や品質はもちろん、安さも欠かせない。より安い食材と作業員を求め、農畜水産物やその加工品が中国など新興・途上国とわが国を含む先進国の間を複雑に行き交っている。

グローバル化する食の安全・安心をどうすれば確かにできるのだろう。

まずは、今回の問題の徹底解明である。

上海福喜食品は、組織ぐるみで不正行為を続けていたと伝えられる。日系企業を含む取引先の立ち入り検査の時にはきちんと対応し、チェックをかいくぐっていた、ともされる。

事実なら、こうした行為に対する罰則の強化や抜き打ち検査などを含めて、中国行政当局の監督や指導の見直しが検討課題になる。

日本の厚生労働省は、4年前から中国と食品安全に関する定期協議を続けている。日本側からは、残留農薬の管理強化などを求めてきた経緯がある。

中国側から情報提供を受けて、食の安全・安心につながる態勢づくりを進めてほしい。それが日中双方の消費者の利益にかなう。

とはいえ、まず消費者に責任を負うのは、商品を提供する民間企業だ。日本企業の取り組みには定評があるが、改善の余地はありそうだ。

海外の取引先への検査態勢の見直しを急ぐとともに、日本国内の消費者に対する情報提供も増やしてはどうか。

加熱処理した加工食品の多くは、生鮮食品と違って原材料の産地表示が義務づけられていない。しかし、産地や加工場所、仕入れ先をどうチェックしているかなど、消費者が知りたい情報は少なくない。

中国を始めとする海外産の食品は不安だと言ったところで、国産だけでは日常生活が成り立たないのが現状だ。

無責任な企業は淘汰(とうた)され、信頼できる企業が生き残るような仕組みを国際的に整えていく。そのために、一歩一歩、改善を重ねていく以外に解はない。

産経新聞 2014年07月24日

中国食品リスク 国際常識を守れないなら

中国・上海の食品会社から使用期限切れの鶏肉を仕入れた可能性があるとして、日本マクドナルドなどが対象食品の販売を一時中止した。

食の安全をめぐる「中国リスク」が、またも食卓を悩ませる。

菅義偉官房長官は「問題のある食品が国内に入らないよう検査態勢を強化する」と強調したが、期限切れ食品などを水際で食い止めることは、現実には難しい。

厚生労働省によれば、今月までの1年間に同社から約6千トンの食肉加工品が日本に輸入されていたという。だが本当にそれだけか。氷山の一角ではないのか。

今後も彼らが国際常識を守れないのであれば、日本企業や消費者も自衛のため、中国リスクとの付き合い方を、本気で考え直さなくてはならない。

上海のテレビ局が報じた潜入取材の映像は、衝撃的だった。床に落ちた肉を従業員が拾って生産ラインに戻し、腐った肉を映しながら「食べても死ぬことはない」と話した。しかも笑いながらだ。

同社の責任者は上海市当局の調べに対し、期限切れ食品の利用は長年続いた会社のやり方で上層部の指示だったと語ったという。

これが初めてではない。

2008年には、日本企業が仕入れた中国製ギョーザに有機リン系殺虫剤が混入する中毒事件が発生した。04年には偽粉ミルク事件で乳児が死亡し、08年には有害物質が混入した粉ミルクが中国国内で出回り約30万人の乳幼児が腎臓結石などを発症した。

同年には、輸入した中国産冷凍インゲンから高濃度の農薬が検出されたこともある。

中国食品が多用される最大の理由は安価であることだが、安全や安心と引き換えであるなら、普通は手を出さない。加工食品も含む産地表示のルールも、現状より厳正にする必要があるだろう。ただ根底にあるのは、中国での食に対する規範意識の低さである。

食だけではない。ディズニーやドラえもんなど、他国のキャラクターの偽物が大手を振って歩く商標問題や、国際法を無視して東シナ海や南シナ海の海洋権益を声高に叫ぶなど、自国の常識が世界に通用しない事実を、まず中国は自覚すべきだ。食品会社を厳しく罰し、損害を与えた日本を含む海外企業に真摯(しんし)に対応することが、その一歩となる。

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