陸自オスプレイ 南西諸島防衛を強化したい

朝日新聞 2014年07月26日

オスプレイ移転 選挙目当てで済ますな

安倍政権が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備中の新型輸送機オスプレイを、佐賀空港(佐賀市)に移転させる計画を明らかにした。

沖縄では米軍統治下、強制的に基地がつくられ、本土の基地が移ってきた。復帰42年の今も、全国土の0・6%の沖縄に米軍基地の74%が集中する。

軍用機の事故や騒音、米軍兵士らによる事件、事故に脅かされ続ける沖縄県民に、これ以上過重な負担は強いられない。

これまで政権は、地理的な条件などを理由に、沖縄県内への移設を唯一の選択肢としてきた。一時的とはいえ、県外への移転も可能だという認識を自ら示した意味は重い。

しかし、今回の計画には数々の疑問が浮かぶ。

まず背後に、11月の沖縄県知事選対策という政権の意向が透けて見える。

知事選では、普天間飛行場の県内移設を容認する現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏と、反対する那覇市長、翁長雄志(おながたけし)氏の立候補が見込まれる。

容認派の仲井真氏が敗れれば、政府が進める名護市辺野古への県内移設は頓挫しかねない。県民の反発を和らげるために、政権は基地負担軽減を必死でアピールしている。

空中給油機15機の普天間から岩国基地(山口県)への移駐や、都道府県を対象にした米軍再編交付金の浮上も、知事選を見据えた動きの一環だろう。

一方、今回の計画は沖縄の負担軽減につながるものではない。辺野古に基地が完成すれば、オスプレイは沖縄に舞い戻ってしまう。

もともと陸上自衛隊は、2015年から17機のオスプレイを佐賀空港に配備する検討をしていた。今回の移転案は、そのプランに便乗した、その場しのぎの計画と言わざるをえない。

佐賀空港建設前、県が地元漁協と交わした公害防止協定の関連文書で、空港を自衛隊と共同使用しないとしており、陸自の計画も簡単に進む保証はない。

事故を繰り返したオスプレイの安全性への疑問も、消えていない。低周波騒音も心配され、住民の反発は根強い。

さらに、これまで県外移設に強い難色を示してきた米軍に対し、説得できる見通しを日本政府は持ち合わせているのか。

政権が本気で沖縄の負担軽減に取り組むのなら、辺野古に新たな基地はいらない。選挙向けのパフォーマンスで終わらせないよう、計画を県外移設への一歩と表明し、佐賀県や米国との真剣な交渉に臨むべきだ。

毎日新聞 2014年07月27日

佐賀にオスプレイ 丁寧な説明欠かせない

突然降ってわいたような提案に佐賀県の人たちは驚き、戸惑ったのではないか。政府は陸上自衛隊が導入する垂直離着陸輸送機オスプレイ17機を、2019年度から佐賀空港(佐賀市)に配備する方針を示し、県に協力を要請した。

沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備されている米海兵隊のオスプレイも、同県名護市辺野古への移設が完了するまでの間、暫定的に佐賀空港を利用する可能性があることを伝え、理解を求めた。

市街地にある陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリコプター50機も移駐する計画だ。

地元では賛否両論が巻き起こっている。なぜ佐賀なのか。これまでの政府の説明は極めて不十分だ。

政府は、佐賀空港を選んだ理由として、離島防衛や奪還作戦を担うため長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦(あいのうら)駐屯地を中心に新設する「水陸機動団」との一体運用を目指す方針を示した。佐賀空港から佐世保まではわずかに約60キロ。佐賀空港配備のオスプレイで、佐世保の水陸機動団を輸送し、沖縄県・尖閣諸島などの南西諸島防衛にあたる計画だ。

佐賀空港が2000メートルの滑走路を持ち、駐機場や格納庫を整備するための十分な用地があることや、有明海に面していて騒音の影響が抑えやすいことなども大きな理由だ。

しかし、空港を管理する県は開港前に漁協と「自衛隊との共用はしない」と約束した経緯がある。なぜほかの既存の自衛隊施設の利用ではいけないのか。民間航空機に影響はないのか。騒音や事故の危険はないのか。政府はこうした県側の疑問や不安にきちんと答える責任がある。

この問題が難しいのは、沖縄の負担軽減が関わっていることだ。

佐賀県庁には、25日夕までに電話やメールで約110件の意見が寄せられた。過半数は騒音、墜落の危険、米軍基地になりかねない懸念などからの反対意見だったが、賛成も国防や沖縄の負担軽減のためを理由に3割にのぼったという。

オスプレイの普天間飛行場への配備にあたっては、日米両政府が夜間飛行制限などのルールで合意したが、沖縄では必ずしも守られていない事例が報告されている。安全面への不安は払拭(ふっしょく)されていない。

沖縄の過重な基地負担は本土がもっと分かち合うべきだ。ただ、危険が全国にまき散らされては困る。米軍はルールを徹底してほしい。

武田良太副防衛相は、来年度予算案の概算要求に用地取得費を計上するため、8月末までに地元の理解を得たい考えを示した。期限ありきのやり方ではなく、まず政府の丁寧な説明が不可欠だ。

読売新聞 2014年07月24日

陸自オスプレイ 南西諸島防衛を強化したい

離島防衛はもとより、災害派遣や急患搬送などで、その高い輸送能力を発揮させる環境を整えることが肝要である。

防衛省は、陸上自衛隊が2015年度から調達する新型輸送機「MV22オスプレイ」の佐賀空港への配備を佐賀県に打診した。19年度から全17機を佐賀空港に駐機したい考えだ。

尖閣諸島など南西諸島の防衛を強化するため、陸自は18年度までに、長崎県佐世保市に駐屯する離島防衛専門の普通科連隊を中心に、米海兵隊をモデルにした「水陸機動団」を新設する。オスプレイは、その隊員輸送を担う。

佐賀県が管理する佐賀空港は、佐世保市から約60キロと近く、海に面している。南西諸島の有事などに迅速に対応するうえで、オスプレイ配備は理にかなっている。

オスプレイは、ヘリコプターの垂直離着陸機能と固定翼機の高速飛行の長所を兼ね備える。米海兵隊の輸送ヘリCH46と比べ、速度で約2倍、搭載量で約3倍、行動半径は約4倍の能力を持つ。

滑走路のない離島でも自由に離着陸できるほか、災害時の人命救助や物資輸送などでの活躍が期待される。昨年11月のフィリピンの台風被害時も、米軍オスプレイがいち早く救援活動に当たった。

オスプレイは極めて危険であるかのような誤解が広がっている。しかし、実際の事故率は、米軍の全航空機の平均以下で、むしろ安全な輸送機と言える。

自治体管理の空港を自衛隊が共用する例としては、愛知県営名古屋空港の滑走路を使う航空自衛隊小牧基地がある。防衛省は今年度予算に約9億4000万円の愛知県への使用料を計上している。

佐賀空港は当初の見通しほど利用されず、歳出が歳入の約3倍の状態が続く。自衛隊との共用化は、地元漁協などとの調整が必要だが、現実的な選択ではないか。

政府は、佐賀県や関係団体にオスプレイの安全性などを丁寧に説明し、理解を得るべきだ。

防衛省は、沖縄県の米軍普天間飛行場のオスプレイが佐賀空港を暫定利用する可能性があることも佐賀県に伝えた。

日米両政府は、沖縄県の過重な米軍基地負担を軽減するため、米軍オスプレイの飛行訓練を日本各地に分散移転する方針だ。

沖縄の負担を本土の自治体が分かち合うことは、日米同盟をより持続可能なものとし、平和と安全のコストをより公平に担ううえで極めて重要だ。佐賀県も、その意義を十分に分かっていよう。

産経新聞 2014年07月25日

オスプレイ佐賀に 「安保」と「災害」に有益だ

いったん事あるときは、佐賀空港(佐賀市)を飛び立ち、近隣の長崎県佐世保市にできる陸上自衛隊の「水陸機動団」を乗せて、尖閣諸島や被災地に急行する。

政府は陸自が調達を予定している垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを、平成31年度から佐賀空港へ配備する方針を打ち出した。

また、米軍普天間飛行場の海兵隊オスプレイを、佐賀空港で暫定使用することも検討している。沖縄県が普天間の5年以内の運用停止を要望しているためで、名護市辺野古への移設工事が間に合わない場合に備えた対応だ。

佐賀県と佐賀市に受け入れを打診し、調整は始まったばかりだが、理解を得て着実に実現を図ってほしい。

佐賀空港にオスプレイが配備されれば、まず、自衛隊の離島防衛能力が格段に高まり、紛争を未然に防ぐ抑止力を大幅に向上させることになる。

固定翼機とヘリコプターの両方の機能を持つオスプレイは、長い滑走路がなくても離着陸できる。航続距離約3900キロ、戦闘行動半径約600キロと、ともに長い。警戒監視に当たれ、沖縄本島から尖閣まで兵員を輸送できる。

米海兵隊をモデルにした「水陸機動団」と連携する態勢が整えば、尖閣など南西諸島防衛に大きく貢献し、朝鮮半島有事で米軍を支援することもできる。

米海兵隊の暫定使用が沖縄県の負担軽減となる意味も大きい。

配備が実現すれば、佐賀のオスプレイが救難、救援に投入される場面も訪れるだろう。

特に強調したいのは、災害派遣で高い能力を発揮することだ。昨年11月、巨大台風によって大きな被害を受けたフィリピンへ、普天間から米海兵隊のオスプレイが直接飛んでいき、避難民や支援物資の輸送に大いに活躍した。

佐賀空港へのオスプレイ配備は、安全保障上も災害派遣上も重要なものである。

自衛隊の配備を含む安全保障政策はもとより政府の仕事だが、地元の理解を得たものであることが望ましい。

今回の方針について、地元側には唐突な印象もあるようだ。なぜ佐賀空港なのかや、国民の生命財産や領土を守るためにオスプレイが果たす役割について、政府は丁寧に説明すべきだ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1894/