中国期限切れ肉 徹底究明し再発防止を

毎日新聞 2014年07月24日

中国期限切れ肉 徹底究明し再発防止を

米国大手食肉グループの中国現地法人「上海福喜食品」の工場で、品質保持期限が切れた鶏肉や牛肉を混ぜて食品を製造していたことが発覚した。品質保持期限は日本の消費期限に当たり、安心して食べられる期間を示す。チキンナゲットなどの商品を輸入し、国内で販売していた日本マクドナルドとファミリーマートは販売を中止した。

中国当局は5人を拘束し、調べを進めている。何が行われてきたか徹底的に究明し、公表することが求められる。親会社の米OSIグループは世界で食材を供給している大手だ。米国本社は「当局と協力し、原因を調査する」との声明を出したが、一刻も早く調査結果を明らかにしなければならない。

厚生労働省によると、日本には、1年間で約6000トンの鶏肉製品が問題の食品会社からマクドナルドなど2社に輸入されていた。期限切れの商品が実際に輸入されたのかは現時点では不明で、政府や2社はその調査が必要だ。また、健康被害の報告はないというが、十分確認してほしい。

中国メディアによると工場の品質管理担当者は工場長らの関与を認めており、会社ぐるみの疑いが濃厚という。事態を最初に報じた中国・上海のテレビ局は、カビで緑色に変色した肉の映像を流している。中国では、ブランドイメージの高い外資系企業の品質管理の方に関心が集まり、「中国の消費者を軽視している」とする報道もある。

食材の世界的な流通は急増している。日本の食材輸入も、安さや食品の多様化で拡大を続けている。財務省の貿易統計によると、2013年度の肉や魚介類などの食料品の輸入額は前年度比9.4%増の約6兆5000億円にのぼり、輸入全体の7.7%を占めた。小売りや外食各社は食材の調達網を中国など世界に広げ、日本人の食を支えている。

だが、安いからといって安全はおろそかにできない。食を扱う企業が仕入れ先の工場の衛生管理や製造状態を定期的に検査するのは常識だ。マクドナルドなど2社は、なぜこうした事態が起きたのか、チェック体制が十分だったか、しっかり調査すべきだ。そのうえで、きちんとした再発防止策を消費者に伝える責任がある。

中国製ギョーザの殺虫剤混入や粉ミルクへの有害物質混入など、中国では食品安全に関係する事件が多発している。日本でも昨年、群馬県の工場で冷凍食品に農薬が混入され、従業員が逮捕された。食品偽装問題も相次いだ。食べ物に関する問題で対応を誤ると、企業の存立に関わる。食を扱う企業は、検査、管理の体制を再確認する必要がある。

読売新聞 2014年07月25日

中国期限切れ肉 外資企業にも及んだ背信行為

中国製食品の信頼性を著しく損なう事件が、またも起こった。ゆゆしき事態である。

中国・上海にある米食品加工大手の子会社「上海福喜食品」が、品質保持期限を過ぎた肉製品を出荷していたことが発覚した。

この会社から鶏肉製品を輸入していた日本マクドナルドとファミリーマートが、一部商品の販売中止に追い込まれた。

中国当局は、上海福喜食品による組織的な違法生産と断定し、工場責任者ら5人を拘束した。実態解明を急いでもらいたい。

問題を暴露した中国のテレビ報道によると、工場では、返品された商品をミンチにして再利用していた。冷凍保存が必要な鶏肉は、常温の倉庫に置かれていた。

従業員は、期限切れの肉を混ぜることについて、「食べても死なない」と言い放った。消費者の安全を最優先すべき食品製造現場のモラル崩壊を象徴する言動だ。

中国では2008年、粉ミルクに有害物質が混入し、乳幼児約30万人に健康被害が出た。昨年にはカドミウム汚染米の流通が発覚するなど、問題が後を絶たない。

もうけを優先し、消費者の健康を軽視する風潮が背景にあるのは間違いあるまい。

食の安全がおろそかにされている現状に対し、中国国民の不満は強い。社会の安定に腐心する共産党政権は、不正に厳しく対処する姿勢を示すため、素早く強制捜査に乗り出したのだろう。

看過できないのは、比較的安全とされた外資企業で違法生産が行われていたことである。

従業員が殺虫剤を混入させた08年の中国製冷凍ギョーザ中毒事件を契機に、日系のメーカーや商社は品質管理に一層努め、安全水準を維持してきた。中国からの食品輸入額も回復しつつある。

今回の事件は、日本側のこうした取り組みに冷や水を浴びせる背信行為と言わざるを得ない。

厚生労働省は、上海福喜食品からの輸入を差し止めた。過去1年間に輸入された鶏肉製品は6000トンに上る。消費者の不安を軽減するため、期限切れのものがなかったか、徹底調査が必要だ。

日本の食産業は今や、中国産の安価な食材なしには成り立たない状況にある。

輸入企業に求められるのは、中国側の生産工程では不正が起こり得るという性悪説に立った監督・検査体制の強化だ。防犯カメラの設置や、現地に出向いての定期的なチェックは欠かせまい。

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