中国製食品の信頼性を著しく損なう事件が、またも起こった。ゆゆしき事態である。
中国・上海にある米食品加工大手の子会社「上海福喜食品」が、品質保持期限を過ぎた肉製品を出荷していたことが発覚した。
この会社から鶏肉製品を輸入していた日本マクドナルドとファミリーマートが、一部商品の販売中止に追い込まれた。
中国当局は、上海福喜食品による組織的な違法生産と断定し、工場責任者ら5人を拘束した。実態解明を急いでもらいたい。
問題を暴露した中国のテレビ報道によると、工場では、返品された商品をミンチにして再利用していた。冷凍保存が必要な鶏肉は、常温の倉庫に置かれていた。
従業員は、期限切れの肉を混ぜることについて、「食べても死なない」と言い放った。消費者の安全を最優先すべき食品製造現場のモラル崩壊を象徴する言動だ。
中国では2008年、粉ミルクに有害物質が混入し、乳幼児約30万人に健康被害が出た。昨年にはカドミウム汚染米の流通が発覚するなど、問題が後を絶たない。
金儲けを優先し、消費者の健康を軽視する風潮が背景にあるのは間違いあるまい。
食の安全がおろそかにされている現状に対し、中国国民の不満は強い。社会の安定に腐心する共産党政権は、不正に厳しく対処する姿勢を示すため、素早く強制捜査に乗り出したのだろう。
看過できないのは、比較的安全とされた外資企業で違法生産が行われていたことである。
従業員が殺虫剤を混入させた08年の中国製冷凍ギョーザ中毒事件を契機に、日系のメーカーや商社は品質管理に一層努め、安全水準を維持してきた。中国からの食品輸入額も回復しつつある。
今回の事件は、日本側のこうした取り組みに冷や水を浴びせる背信行為と言わざるを得ない。
厚生労働省は、上海福喜食品からの輸入を差し止めた。過去1年間に輸入された鶏肉製品は6000トンに上る。消費者の不安を軽減するため、期限切れのものがなかったか、徹底調査が必要だ。
日本の食産業は今や、中国産の安価な食材なしには成り立たない状況にある。
輸入企業に求められるのは、中国側の生産工程では不正が起こり得るという性悪説に立った監督・検査体制の強化だ。防犯カメラの設置や、現地に出向いての定期的なチェックは欠かせまい。
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