経済力を増した新興国が、欧米主導の国際金融秩序に対抗姿勢を示したと言えよう。
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5か国(BRICS)首脳会議は、「新開発銀行」を創設することを決定した。
新興国や途上国による社会基盤(インフラ)整備などを支援するのが目的で、5か国が100億ドルずつ出資する。中国の上海に本部を置き、初代総裁はインドの出身者が務めることになった。
新開銀とは別に、金融危機の際に外貨融通などの支援を行えるようにするため、1000億ドルを共同で積み立てる外貨準備基金を設けることでも合意した。
存在感を増す新興国が、途上国支援や国際金融秩序の維持に一定の役割を果たそうとしていることは評価できる。
新開銀設立の背景には、欧米の主導する現在の国際金融秩序に、新興・途上国が強い不満を持っているという事情がある。
国際通貨基金(IMF)や世界銀行は長年、途上国の支援や危機回避に貢献してきた。
しかし、1990年代のアジア通貨危機などの際に緊縮財政など厳しい条件を課したことから、途上国では各国の事情への配慮が足りないとする批判が根強い。
BRICSは経済規模で世界の約2割、人口で約4割を占めるまでに成長したが、IMFでの発言力を示す出資比率は、BRICS全体で11%にとどまる。これにも新興国は反発している。
IMFは比率を14%に引き上げる改革案をまとめたが、米国などの反対で実現していない。
新興国に応分の責任を果たしてもらうためにも、IMF改革を進展させる必要がある。
ただ、新開銀などがIMF体制のような機能を発揮できるかどうかは未知数だ。
設立時期さえ明示されず、金融支援などの具体的な枠組みも、あいまいである。
新開銀が出資国の資源権益や企業利益の拡大ばかり重視し、安易に支援するようでは困る。甘い審査が原因で巨額の投融資が焦げ付き、国際金融システムを混乱させることにもなりかねない。
人権弾圧や乱開発など問題の多い国への援助も避けるべきだ。透明性の高い運営が求められる。
中国とインドが領土問題を抱えるなど、BRICS諸国は一枚岩ではない。金融危機などの緊急事態に、緊密に連携して対処できるかどうかも疑問である。
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