白票水増し事件 こんな不正が起きるとは

毎日新聞 2014年07月21日

白票水増し事件 選管の隠蔽にあきれる

選挙の公正という民主主義の根幹を揺るがす事件だ。

昨年7月の参院選比例代表の開票作業で白票を水増ししたとして、高松市選挙管理委員会の前事務局長が公職選挙法違反(投票増減)の罪で起訴された。有権者の1票を踏みにじる行為というほかない。

開票作業は一般市民に公開され、作業が適正かどうかを見守る開票立会人もいる。衆人環視の状況で、なぜこんな不正行為がまかり通ったのか。高松市は第三者による調査委員会を設置した。裁判での真相解明と併せて、経緯や背景を検証して再発防止策を示さなければならない。

高松地検の調べによると、不正の発端は、投票数が有権者に交付した投票用紙の数より約300票足りないと前事務局長らが思い込んだことだ。つじつま合わせのため集計済みの白票を再集計したが、その後、衛藤晟一(せいいち)参院議員(自民)の未集計の有効票312票が見つかった。集計すると数が合わなくなり、そのまま保管箱に入れたとされる。

衛藤氏は全国で約20万票を集めて当選したが、高松市では「0票」という不自然な結果となった。衛藤氏に投票した有権者が抗議し、白票の水増しを指摘する通報も市に寄せられた。疑いの目が選管に向けられる中、前事務局長は隠蔽(いんぺい)工作を繰り返したという。衛藤氏の票を無効票の箱に移し替えたり、無効票を廃棄したりしたなどとして、刑法の封印破棄罪でも起訴された。

さらに一連の不正に関与したとして当時の市幹部2人が起訴、選管職員3人が在宅起訴された。組織ぐるみで不正を黙認、加担していたことにあきれるばかりだ。体質を改めない限り、選挙事務を任せられない。

今回の不正操作で衛藤氏の当選に影響はない。だが、開票事務の公正が疑われると、選挙やり直しという事態も起きる。原発誘致が争われた1993年の石川県珠洲(すず)市長選では、投票者数と票数が一致しないのに選挙終了を宣言したり、点検作業に第三者を入れたりした。最高裁は「開票処理に厳正を欠き、選挙結果に疑念を生ずる」として選挙無効と判断、市長選はやり直された。

開票作業は有権者に結果を早く知らせるため迅速さも求められるが、公正と正確が基本だ。票数が合わなければ数え直せばいいのに、ミスの発覚を恐れて隠蔽すれば今回のような最悪の事態を招く。ミスは起きるものだということを前提に、的確に対処できる体制を築く必要がある。

今回の事件は、選管が意図的に開票結果を操作できることを示した。選管への有権者の目は厳しくなる。総務省や全国の選管は、不正を監視する体制を再点検すべきだ。

産経新聞 2014年07月17日

白票水増し事件 こんな不正が起きるとは

開票時に白票を水増しし、隠蔽(いんぺい)を図るために封印された箱を開けて票を移し替える。実際にそんなことが可能なのかと驚くばかりの事件だ。

昨年7月の参院選の開票をめぐり、高松市選挙管理委員会の当時の事務局長ら6人が公職選挙法違反(投票増減)の罪などで起訴された。

投票用紙の配布や集計をめぐるミスは選挙につきものだが、このような作為的で悪質な行為は聞いたことがない。選挙の公正さへの信頼を根底から失わせるもので、絶対に許されない。徹底解明し、再発防止策をとる必要がある。

きっかけは、比例代表の投票数が交付した投票用紙より約300票足りないと勘違いしたためだったという。つじつまを合わせるため、まず白票を300票余り水増しした。

その後に300余りの自民党候補への投票がみつかったが、票数が増えてしまうのを避けるため、これは集計しなかった。

さらに、選管職員らとともに数回にわたって有効票の箱、無効票の箱の封印を破り、票の移し替えや白票への書き込みなどの工作を繰り返したという。

疑問の一つは、投票の点検や投票用紙の封印などを行う開票立会人がいたのに、どうしてやすやすと不正が行われたのかだ。

また、選挙終了後は箱に入れて厳重に保管される投票用紙に隠蔽工作が行われた。封印があっても、現実にはノーチェックに等しいことを示していないか。

公職選挙法は投票増減罪を犯した選管関係者に対し、一般人よりも重い5年以下の懲役もしくは禁錮などの罰則を設けている。公正な選挙実施という重い責任を考えれば当然だが、そういう立場を顧みず有権者の「清き一票」を無にし、不正に不正を重ねていた。

事件は、得票をカウントされなかった衛藤晟一参院議員の高松市での比例得票がゼロだったことなどから表面化した。数字がゼロとならないよう、より巧妙に操作されていればどうなっていたか。

不正の背景に党派性や政治的思惑がなかったかどうかも厳しく調べるべきだ。

どの選管でも、その気になれば同じ不正が行われる。そんな不信感が有権者に広がってはなるまい。各地の選管や総務省も重く受け止め、チェック体制の再点検と綱紀粛正を図ってもらいたい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1890/