名護市長選 辺野古反対の民意重い

朝日新聞 2010年01月25日

名護市長選 「県外」探しを加速せよ

沖縄県名護市長選で、米軍普天間飛行場の代替基地を同市辺野古に受け入れるという案への反対を掲げた新顔の稲嶺進氏が当選した。

移設問題は安全保障にかかわることであり、政府が責任をもって判断すべきだ。だが、鳩山由紀夫首相は今回の結果を重く受け止めざるをえまい。日米合意の重さとともに、沖縄の地元の意思の尊重を語ってきたからだ。

今年5月末までに移設問題を決着させると内外に公約している首相は、新候補地探しにいよいよ全力を挙げねばならない。

鳩山政権は辺野古以外への移設を目指して、連立与党間で新たな移設地の検討を続けている。同時に、4年前の日米合意通りの辺野古案に立ち戻る可能性も残しているが、稲嶺氏の当選でそれは極めて困難な情勢となった。

移設容認の姿勢を打ち出している仲井真弘多・沖縄県知事も難しい立場に追い込まれよう。県議会にはこの市長選の結果を受け、自民、公明両党を含む全会一致で県外移設を求める決議を行う動きもある。

名護市民には、難しい選択を迫る選挙だった。

移設容認派の現職、島袋吉和氏は1期4年間の地域振興の実績を強調し、基地受け入れ問題の争点化を避ける戦術をとってきた。一方の稲嶺氏は「辺野古の海に基地は造らせない」と、移設反対を前面に押し出した。

基地の騒音や事件、事故の危険を考えれば、基地を受け入れたくないというのが市民の正直な思いだろう。しかし、失業率の高さなど地域経済の衰えは深刻だ。基地受け入れで、建設に伴う公共事業や見返りの地域振興策に将来の期待をつなぎたい。そんなジレンマの中での選挙だった。

名護市が普天間の移設先に浮上してから10年余りになる。過去3回の市長選ではいずれも容認派が勝った。振興策より基地ノーを求める民意が多数派を占めたのは初めてのことだ。

昨年の政権交代で、普天間の県外・国外移設を主張してきた民主党政権が誕生したことが、そうした変化を後押ししたに違いない。

それだけに、こうした民意を受け止めなければならない鳩山首相の責任は極めて重い。

政府与党の作業チームは近く、各党が辺野古以外の代替案を持ち寄る。「県外」の九州の自衛隊基地や沖縄県の離島などの名前もあがっている。一括移設にこだわらず、基地の機能を分散する打開策も検討すべきだ。

いずれにせよ、自治体に受け入れを説得したうえで、さらに米国政府を動かさなければならない。相当な力わざが必要だろう。広く国民の間で基地負担を分かち合うという難問に、答えを見いださなければならない。

毎日新聞 2010年01月25日

名護市長選 辺野古反対の民意重い

沖縄県の名護市長選で、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対し、県外移設を主張する新人の稲嶺進氏が、受け入れ容認派の現職を破った。

稲嶺氏は当選を受けて、「辺野古の海に基地を造らせないという約束で(選挙を)戦った。公約を、信念をもって貫く」と語った。

普天間受け入れが争点になった過去3回の市長選では、いずれも条件付きながら容認する候補が当選していた。政権交代によって「県外」を模索する鳩山政権が誕生したことも追い風になったのだろう。明確に受け入れ反対を掲げた候補の勝利は初めてである。移設問題に与える政治的な影響は極めて大きい。

鳩山由紀夫首相は、選挙結果が移設先の検討に影響する可能性に言及していた。また、政府・与党の沖縄基地問題検討委員会は辺野古以外への移設を前提に検討を始めている。選挙の結果、仲井真弘多沖縄県知事も辺野古移設を前提に手続きを進めるのが難しくなった。辺野古移設の道は限りなく狭まったと言える。

外交・安全保障は国の基本政策であり、地方自治体選挙の結果に影響されるべきではないという原則論もある。しかし、移設先が再検討されているこの時期に「受け入れNO」を突きつけた地元の意思を尊重することも現実の政治には必要だろう。

鳩山政権には、選挙結果をどう受け止め、どんな方針で移設問題に取り組むのか、明確にしてもらいたい。

普天間移設の原点は飛行場周辺住民の危険・生活被害の除去であり、移設が暗礁に乗り上げて「普天間」が固定化することは何としても避けなければならない。同時に、移設先選定では、米軍基地が集中する沖縄県民の負担軽減と、米軍のプレゼンスによる抑止力の維持を両立させることが求められている。

沖縄基地問題検討委は、県外を含めて視察・検討を進めているが、具体的な候補地の選定に苦慮しているのが実情である。そして、米政府は公式には辺野古への移設を内容とする日米合意の履行を求める立場を繰り返し強調している。国内の調整に日米外交が絡み合って、鳩山政権の対応は極めて難しい。

政界が「政治とカネ」問題に翻弄(ほんろう)され、小沢一郎民主党幹事長の発言力が弱まれば、鳩山政権の意思決定能力は一層低下しかねない。首相が表明した「5月までの決着」に懐疑的な見方も出ている。

しかし、先の日米外相会談で「5月決着」は対米公約となっており、これをほごにするようなことになれば、日米関係が一層悪化する可能性もある。普天間問題解決が日米同盟深化の試金石になると明言した鳩山首相の言葉を信じたい。

読売新聞 2010年01月25日

名護市長選 それでも辺野古移設が最善だ

米軍普天間飛行場の移設問題の解決が、一段と困難になった。

沖縄県名護市長選で、現行の移設案に反対し、県外移設を主張する稲嶺進・前市教育長が当選した。現行案を容認する島袋吉和市長は、普天間問題より経済振興の重要性を訴えたが、及ばなかった。

名護市辺野古沿岸部に普天間飛行場の代替施設を建設するのに必要な公有水面埋め立ての許可権限は県知事にある。市長が反対しても、法律上、建設は可能だ。

ただ、施設を円滑に建設し、安定使用していくには、地元自治体の理解と協力が欠かせない。

鳩山首相は、5月までに移設先を最終決定すると明言した。しかし、政府・与党は、グアム移設や嘉手納飛行場への統合など、地元も米国も反対する非現実的な案を軸に検討している。

こうした案と比べれば、今回の市長選結果を踏まえても、現行案の方が実現可能性が高い。5月の決着が対米公約となる中、現行案を断念すべきではあるまい。

そもそも、国の安全保障にかかわる問題を首長選挙の結果に委ねること自体が誤りであり、国の責任で結論を出すべきだ。

名護市長選は1998年以降、常に移設受け入れの是非を争点にしてきた不幸な歴史がある。地元は「この問題で市を二分させないでほしい」と要望し、岡田外相も理解を示していたが、政府は昨年中の決着を先送りしてしまった。

その責任は鳩山首相の優柔不断な対応と決断力の欠如にある。

首相が具体的な展望のないまま県外移設に言及し、「沖縄の民意」を重視する発言を繰り返した結果、沖縄の期待が過剰に高まり、問題解決が難しくなった。

移設先が見つからなければ、市街地の中心に位置し、事故の危険性と騒音問題を抱える普天間飛行場の深刻な現状が、長期にわたり固定化される。日米関係も悪化し、危機的状況に陥るだろう。

それを鳩山政権は望むのか。

96年の日米合意以来、普天間問題が紆余(うよ)曲折を経てきたのは、地元、米国など、すべての関係者が完全に満足する解がないためだ。現状を改善するには、完璧(かんぺき)でなくとも、関係者が同意できる案の実現を追求するしかない。

新市長が早期に現行案をそのまま容認する姿勢に転換するのは無理だろう。だが、現行案を修正したり、新たな条件を加えたりすることで、市側と合意できる選択肢はあるはずだ。政府はその可能性を粘り強く探るべきである。

産経新聞 2010年01月27日

普天間問題 現実的修正なら歓迎する

沖縄県名護市長選で、米軍普天間飛行場(同県宜野湾(ぎのわん)市)の施設受け入れに反対している候補が当選したことに対し、平野博文官房長官は「自治体の反対を斟酌(しんしゃく)していたら何もできなくなる」と述べた。

移設先の自治体の合意が得られなくても、政府として決断する可能性を示唆したものといえる。

この発言には、与野党や地元自治体などから反発が相次いだが、平野長官はさらに「合意をとらないと物事が進められないものなのか。日本の安全保障にかかわってくる問題だ」とも語った。

一連の発言は、日米合意に基づいてキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)に移設する現行案を、選択肢として残すものと受け止められる。

さらに、日本の安全保障は在日米軍の抑止力に直結している。政府がその抑止力の維持に責任を持つ明確な意思を示したといえる。きわめて妥当な判断である。

米側は日米合意が「唯一、実現可能な案」との立場を今も崩していない。

平野長官の発言は、日米同盟や国の安全保障政策を重視する観点から、与党内に根強くある県外や国外移設などの実現可能性の低い方策は排し、現実的な方向に軌道修正を図ろうとしているものといえる。

名護市長選の結果については、鳩山由紀夫首相も「ゼロベースで移設先を決めていくことに変わりはない」と述べている。現行案を残したまま、打開案を探る姿勢を示したものといえよう。

だが、「ゼロベース」などと曖昧(あいまい)な言い方にとどめるのではなく、米側への回答期限としている5月を待たずに、現行案で早期に決着すべきだ。

その決着には、社民党や国民新党の反対が予想されるほか、関係自治体との調整にも時間を要するとみられるからだ。現行案を前提とした環境影響評価などの作業も進める必要がある。

普天間問題の迷走は、日米同盟の空洞化を招いている。安保条約改定50年という重要な節目に日米関係に危機を招いてはなるまい。首相は昨年11月の日米首脳会談でオバマ大統領に「私を信頼してほしい」と語りながら、結論を先送りして信頼を裏切った。

今日の状況を招いた当事者であるが、国民の平和と安全を守るため危機を回避する責務がある。

産経新聞 2010年01月25日

名護市長選 首相は決着に政治生命を

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題が最大の争点となった名護市長選で、県外移設を掲げる無所属の前市教育長、稲嶺進氏=民主、社民、国民新など推薦=が当選した。

これが鳩山由紀夫首相が「県民の声を聞きたい」としてきた結果であり、普天間をキャンプ・シュワブ沿岸部(同市辺野古)に移設する現行計画は著しく困難となった。日米同盟への悪影響は甚大だ。日本の安全保障の根幹を一首長選の判断に委ねてしまった首相の責任は極めて重大で、禍根を残しかねない。

首相は政治生命をかけて移設受け入れを地元に説得し、一日も早く問題を決着させるべきだ。

普天間問題を争点とした市長選は通算4回目で、これまでは移設容認派が勝利してきた。現職の島袋吉和氏は、国の見返りである「北部振興策」や雇用創出などの実績を訴え、自民党や仲井真弘多県知事も実質的に支援した。

だが、今回は鳩山政権がこの問題で迷走を続け、反対派勢力を勢いづかせた。県外移設や福祉・教育の充実を掲げる稲嶺氏を反対派の市民団体・労組が支え、政権与党と共産党がそろって推薦に回ったことも大きいとみられる。

移設問題は日米が1996年に普天間全面返還に合意して以来の懸案だ。2006年に合意された現行計画は両国であらゆる選択肢を検討した末の結論で、米政府も「最善の選択」とし、地元も県も足並みをそろえていた。

にもかかわらず、「県外移設」にこだわった鳩山政権は決断を再三先送りし、新たな移設先も含めて「5月に政府案を決める」としてきた。市長選の結果は政府の不決断と無責任によるものだ。

現行計画が挫折すれば、普天間移設ばかりか海兵隊部隊のグアム移転や嘉手納以南の米軍施設返還も白紙となる。アジア太平洋の米軍戦略や日米の共同抑止態勢にも重大な支障を生じかねない。

「県民の基地負担軽減」という歴代政権の約束を果たせず、米国の対日信頼も失われる。日米同盟関係は空洞化の危機に直面させられるだろう。

連立与党協議でも、現行計画に代わり得る具体案は何もないのが現状だ。鳩山首相は自ら招いたこの結果を深く反省するとともに、今からでも現行計画を推進する決断を下し、地元の説得と政権の意思統一に全力を注ぐべきだ。

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