中国の掘削撤収 警戒と圧力なお緩めるな

読売新聞 2014年07月20日

南シナ海情勢 掘削を中止させた対中包囲網

強い国際的な批判を受けて、「力による現状変更」を中断せざるを得なかったのだろう。

中国が、南シナ海・パラセル(西沙)諸島付近での石油掘削作業を終了した。

作業は当初、8月中旬までとされていた。中国は「作業が順調に終わった」と説明するが、実際は、対中包囲網が作業短縮の要因だったのは間違いあるまい。

中国がベトナムとの係争海域で一方的に掘削を始めたのは5月初旬だ。ベトナムは強く中止を求めた。中越双方の船が衝突を繰り返し、ベトナム船が沈没するなど、一時は危険な状態に陥った。

ベトナムは、中国の不当性を国際社会に訴え、大規模な反中デモも続発した。中国は、経済面で対中依存を強めるベトナムの抵抗が、これほど激しいとは予測していなかったのではないか。

更に大きな誤算は、日米両国や、東南アジア諸国連合(ASEAN)などによる対中連携が一気に強まったことだろう。

安倍首相は国際会議などで、中国の独善的な行動を批判した。領有権を巡る中国の主張に国際法上の根拠がないことを念頭に、「法の支配」の重要性を繰り返し強調し、幅広い賛同を得た。

集団的自衛権の行使容認を通じた日米同盟の強化も、関係国の支持を集めている。

「アジア重視」政策を掲げる米国も、南シナ海問題に積極的に関与する姿勢を明確にした。中国がアジアの安保秩序から米国の排除をうかがう中、その意図を正面から否定する意義は大きい。

普段は対中姿勢がばらつくASEAN各国も外相会議で、南シナ海の危険な状況に「深刻な懸念」を表明し、共同歩調を取った。

中国の孤立は明らかだった。

来月上旬には、日米中も参加するASEAN地域フォーラム(ARF)が開かれる。11月には、中国が北京でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を主宰する予定だ。

中国には、こうした場で対中批判が集中する事態を避けたい思惑があろう。当面は、抑制的な行動を取るとの見方も出ている。

しかし、南・東シナ海で自らの領土や海洋権益の拡大を図る中国の海洋進出戦略は変わるまい。

日米両国は、中国の覇権的な行動は長期化すると覚悟すべきだ。今回、国際的な連携の積み重ねが一定の成果を上げた。この経験を踏まえつつ、新たなアジア秩序作りに、中国を建設的な形で参加させていくことが求められよう。

産経新聞 2014年07月18日

中国の掘削撤収 警戒と圧力なお緩めるな

中国が、ベトナムなどと領有権を争う南シナ海のパラセル(西沙)諸島の海域で実施していた石油掘削から撤収した。

予定より1カ月早い「探査活動の完了」(中国外務省)は、ベトナムの強い抵抗や国際的非難の高まりからの回避行動を取ったものだろう。

中国はむろん、同諸島を含む南シナ海の全係争地と、東シナ海の尖閣諸島を奪取する試みをやめたわけではない。国際法・規範を無視した一方的な現状変更の動きには今後とも、日米、東南アジア諸国が連携して警戒と圧力を継続しなければならない。

掘削開始の5月初め以降、現場海域は中越公船が衝突し対峙(たいじ)する一触即発の状況が続いてきた。ベトナムでは抗議行動が反中暴動にも発展し、中国系の進出企業などが放火や打ち壊しに遭った。

ベトナム側は、中国公船の体当たり映像を公表して非難し、東南アジア諸国連合(ASEAN)も異例の声明で「深刻な懸念」を表明した。米上院も「強圧的で脅迫的な行動」で地域を不安定化させているとの決議を可決した。

来月上旬には、ミャンマーでASEAN関連の外相会合やASEAN地域フォーラム(ARF)が開催され、中国も参加する。このタイミングでの撤収は、一連の会合での対中批判の激化をかわす狙いもあるとみていいだろう。

中国とフィリピンが領有権を唱える南シナ海スカボロー礁では2年前、中国漁船の操業をめぐり中比艦船がにらみ合い米国が仲裁に乗り出した。だが、比側が受け入れて退いた後に中国の艦船が居座る結果に終わっている。今回の撤収にも油断してはならない。

中国は、地域に脅威をまき散らすこうしたルール無視の振る舞いから、南シナ海での紛争回避に向けたASEANとの「行動規範」の合意に真剣に取り組む姿勢へと転換すべきである。

さもなければ、石油掘削が抵抗や抗議行動、国際的非難を引き起こしたように、その「代償」は高くつくと知るべきだろう。

安倍晋三首相は、先のシンガポールでの講演で「国際法の順守」を訴えるなど各地で中国の海洋進出攻勢を牽制(けんせい)しているほか、巡視艇供与などでフィリピン、ベトナムとの協力を強化している。

中国の拡張主義には、集団的自衛権の行使容認による抑止力強化の重要性も忘れてはならない。

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