ガザ衝突 流血と戦闘の停止を

朝日新聞 2014年07月25日

ガザ紛争 流血拡大を防ぐ収拾を

どの国や地域であれ、人間の安全と財産、権利を守るのが政治の役割のはずだ。

中東のイスラエルとパレスチナとの間で今起きているのは、その逆ではないか。政治の思惑で紛争が起こされる。市民が逃げ惑い、次々に命を落とす。

パレスチナ自治区ガザの紛争は悪化の一途をたどり、23日までの死者は700人を超えた。双方の指導者の責任は重い。

長く複雑な歴史をくぐってきた紛争である。根本的な解決は容易ではない。だとしても、いま眼前で続く流血を止めるのが何よりも最優先である。

力の差を考えれば、紛争を収束させる主導権はイスラエルにある。ネタニヤフ政権は無差別の攻撃をやめるべきだ。

一方のイスラム組織ハマスもこれ以上ガザの市民を危険にさらす行為を続けてはならない。ロケット攻撃などを控え、紛争の収拾を急がねばならない。

イスラエルが先週から踏み切った地上戦は、流血の規模を一気に拡大した。国内の強硬派をなだめる意図だったとすれば、なおさら無謀というほかない。

ネタニヤフ政権はしきりに自衛権を主張しているが、いまの侵攻は明らかに自衛の範囲を超えている。犠牲者の大半がパレスチナ人で、23日までに700人余り。そのうち200人以上は子どもや女性だ。

地上侵攻でイスラエル側も兵士を中心に被害が急増し、死者は30人余りに達した。イスラエル側もこれ以上、痛ましい犠牲を重ねるのは理不尽だ。

ガザの人口は約170万人。その地域全体がイスラエルの強いる検問と人工壁などで封鎖されており、「天井のない監獄」とも呼ばれる。

抜本的にはその窮状の改善が必要だが、当面の域内ではハマスの側に重い統治責任がある。市民の犠牲をいとわず戦い続けて内外の同情を集めようとするならば、大きな間違いだ。

侵攻前の先週、エジプトが停戦案を示し、今週からは米国のケリー国務長官も中東入りして仲介にあたっている。

ハマスに影響力のあるペルシャ湾岸の国カタールや、トルコも巻き込んで、一刻も早く安定化を図る必要がある。

このまま悲惨な状態が続けば、もっと過激な勢力がガザに台頭するおそれもある。イスラエル側で誘拐やテロが頻発する事態も考えられる。

長期的にはイスラエルとパレスチナの共存を探る和平交渉を復活させるべきだろう。そのためにもまず、今は双方が武器を置いて頭を冷やすときだ。

毎日新聞 2014年07月23日

イスラエル ガザ市民の殺傷やめよ

出口のない地獄のような状況でガザ(パレスチナ自治区)の死者が増えていく。住宅密集地で攻撃を続けるイスラエルも、同国にロケット弾を撃つイスラム主義のハマスも、自らの戦いに明確な展望があるようには見えない。パレスチナ人の死者は600人を超えた。際限もなく庶民の血を流す「戦いのための戦い」は直ちにやめるべきだ。

大切なのはイスラエルもハマスも武器を置くことだが、軍事力で圧倒的に勝るイスラエルの自制が欠かせない。ガザに地上侵攻すれば死者が増え、市民をさらに苦しめるという潘基文国連事務総長の警告にもかかわらず、イスラエルは侵攻に踏み切った。主な目的はハマスの拠点を攻撃すると同時に、ハマスが攻撃や物資補給に使うトンネルを破壊することにあるようだ。

だが、トンネルはまた再建されるだろう。ガザに犠牲者の山を築いても根本的な解決にならないのは明らかで、イスラエルの国際的イメージが悪化するだけではないか。ネタニヤフ政権は攻撃長期化を示唆しているが、むしろ市民を巻き込む軍事行動に見切りをつけるべきである。

当面の焦点はエジプトの停戦案の成否だ。イスラエルは停戦案を一時受諾したが、ハマスが攻撃をやめないとして白紙撤回した。イスラエルとエジプトにはさまれたガザは出入りを厳しく規制されている。ハマスはガザに対する経済封鎖の解除を停戦案に盛り込むよう主張して受け入れを拒んでいるが、強硬姿勢一辺倒では住民を苦しめるだけだ。

エジプトのモルシ前政権はガザの紛争調停に一定の影響力を持っていた。政権の支持母体・ムスリム同胞団はハマスの源流といえるからだ。だが、モルシ政権をクーデターで倒して発足したシシ現政権はハマスへの警戒感が強く、これが停戦調停の障害になっている。イスラム教のスンニ派とシーア派の対立が強まる中、アラブ世界が事態打開へ一致協力しにくいという事情もある。

ガザでは2008~09年にも同様の衝突が起き、死者はパレスチナ人が1300人以上、イスラエル側は十数人とされた。今回の流血が収束しても紛争がいつ再燃しないとも限らない。中東入りしたケリー米国務長官が即時停戦を求める一方、「根源的な原因」に取り組むとしてイスラエルとパレスチナの和平協議再開に意欲を見せたのは正しい方向だ。米国がイスラエルの「自衛権」を強調するだけでは国際社会はついてこない。

ガザの流血を終わらせ、もう二度と多くの市民を死なせない政治的枠組みを作るには米国の指導力が不可欠だ。オバマ政権が本気で事態打開へ動くよう重ねて要望したい。

読売新聞 2014年07月27日

ガザ流血拡大 本格停戦への道筋を探りたい

米国や欧州、国連は、紛争当事者に影響力を持つ中東諸国と連携し、本格的な停戦への道筋をつけてもらいたい。

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスとイスラエルの軍事衝突で流血が拡大している。両者は一時的には停戦したが、事態が収拾する見通しは立っていない。

イスラエル軍は、空爆に加えてガザへの地上侵攻に踏み切った。ガザに張り巡らされた多数の地下トンネルの全面的な破壊を目標としている。トンネル網が、イスラエルへのロケット弾の発射や越境攻撃に利用されているためだ。

トンネルは、住宅や民間施設の地下にもあるため、多くの民間人の犠牲者を生んでいる。ゆゆしき事態である。双方の死者は計1000人を超えたという。

国連は、病院や学校、退避施設も対象とするイスラエル軍の攻撃と、民間人を「人間の盾」に使うハマスの卑劣な手段を「戦争犯罪となり得る」と強く非難した。

火力で圧倒的に勝るイスラエルが自国の攻撃を「自衛権の行使」などと正当化する説明には、無理がある。少なくとも、民間施設に対する攻撃は回避すべきだ。ハマスも、人命を軽んじる対応を早急にやめる必要がある。

ケリー米国務長官や国連の潘基文事務総長が、仲介外交を続けている。イスラエルと国交のあるエジプトやヨルダンに加え、ハマスに影響力を持つカタールやトルコなどの協力が欠かせない。

シリアやイラクの内戦などで中東各地が混乱する中、周辺の関係国が結束できずにいる。ハマスを長年敵視してきたエジプトのシシ大統領の影響力も限定的だ。

ケリー長官は、戦闘を1週間停止し、その間に本格停戦に向けた協議を行うとの案を提示した。

イスラエルとハマスは提案を拒否したが、米欧や関係国はあきらめず、双方が受け入れ可能な案を粘り強く探ってほしい。

本格停戦には、イスラエルに対する安全の保証や、7年に及ぶ経済封鎖で慢性的な困窮状態に置かれたガザの再建に向けた、双方の歩み寄りが欠かせない。軍事力だけでは問題は解決しない。

イスラエルとハマスが、12時間の時限的措置とはいえ、人道的観点から戦闘を中断したことは評価できる。これにより、負傷者を含むガザ住民の避難や、食料や医薬品などの搬入が可能になった。

停戦工作の前途は楽観できないが、今回の歩み寄りを問題解決への一歩としなければならない。

産経新聞 2014年07月20日

ガザ地上侵攻 「流血と憎悪」の応酬断て

パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織、ハマスと戦闘に入っていたイスラエル軍がついに、ガザに地上侵攻した。

ハマスのロケット弾発射拠点などを攻撃しているのに対し、ハマスも徹底抗戦の構えを崩していない。8日に始まった戦闘で、ガザでの死者は、すでに300人を超えた。多くは子供を含む民間人だ。

犠牲者をこれ以上増やしてはならない。オバマ米大統領もイスラエルのネタニヤフ首相に対し、「民間人の犠牲」への懸念を伝えている。

一刻も早く、イスラエル軍は地上侵攻を終了し、ハマス側は停戦に応じなければならない。ガザの流血を止めるため、国際社会も全力を挙げてもらいたい。

イスラエル政府は地上侵攻の目的に、ハマスが武器やロケット弾発射台を隠すため張り巡らした地下トンネルの破壊を挙げている。それを伝ってハマス戦闘員がイスラエルに侵入を図ったことから、地上侵攻を決断したという。

だが、そもそもの発端は双方による陰惨な少年殺人だった。イスラエル人少年3人が拉致・殺害され、報復としてパレスチナ人少年1人が焼殺された。そして、ハマスによるロケット弾攻撃、イスラエルによる空爆へと発展した。

戦闘後、子供ら弱者の命が奪われ傷つく状況は悪化している。

ガザの少年4人が海岸で遊んでいてイスラエル海軍の砲撃で死亡した事件は、外国人記者の宿泊先の近くで起きたこともあり、その悲劇性が世界に伝えられた。

イスラエル軍によるガザ地上侵攻は2009年1月以来で、この時は一連の戦闘で1400人以上が亡くなっている。

懸念されるのは、ネタニヤフ首相が侵攻当初から、「地上戦の拡大」に言及していることだ。過去と同じような犠牲者の増大を繰り返すべきではない。

その意味で地上侵攻前に、エジプトのシーシー政権が仲介した停戦交渉が実らなかったのは残念だ。同政権はハマスとは関係が悪いとはいえ、米国などとともに再度、停戦努力をしてほしい。

戦闘-侵攻が長期化し事態が泥沼化すれば互いの憎悪が募り、パレスチナ国家が樹立されてイスラエルとともに2国家が共存するという、パレスチナ和平の大目標はますます遠のいてしまう。

朝日新聞 2014年07月16日

ガザの紛争 流血拡大回避へ停戦を

イスラエルのネタニヤフ政権と、パレスチナのガザを支配するイスラム組織ハマスとの間で紛争が激化している。

14日までの約1週間で、死者は180人を超えた。そのすべてがパレスチナ人だ。

力の差が歴然とした非対称の戦場で、イスラエルは空爆や特殊部隊による作戦を続け、本格的な地上侵攻の構えも見せる。ハマスもロケット弾攻撃で対抗し、暴力の連鎖はとどまるところを知らない。

中東では今、イラクが分裂の危機にさらされている。秩序の崩壊を避けるために、それぞれの国や勢力が妥協を重ね、協力を模索すべき時である。

イスラエル、パレスチナ双方とも自制し、即刻停戦して現実的な話し合いに入るべきだ。

今回の紛争の発端は、イスラエル人の少年3人が6月に行方不明になり、遺体で発見された事件だった。7月には逆にパレスチナ少年が誘拐、殺害され、対立がエスカレートした。

悲惨な事件だが、本来は司法の場で解決すべきことだ。なのに武力のぶつかり合いになった背景には、これまで繰り返されてきた紛争と、その間に積み重なった相互の不信感がある。

08~09年にもイスラエル軍がガザに侵攻し、1300人超の死者が出た。その二の舞いは避けなければならない。

ネタニヤフ政権もハマスも、内部にさらに強硬な勢力を抱えている。互いに譲らない一因は、内部の強硬派の不満を恐れるからだといわれる。そこに、多数の人命を犠牲にする大義は見いだせない。

ハマスは、周辺諸国の政変や危機に伴って、主要な支援国だったシリアやイラン、エジプトと対立するようになり、財政的に弱体化した。ネタニヤフ政権も、長年対立してきたイランが欧米に歩み寄りを見せるようになったことから、孤立感を味わっている。

ともに、長期の紛争を戦い抜く態勢にはない。国際テロ組織アルカイダ系の勢力が力を持つのを防ぎたい点では、利害も共通している。そこを、妥協の糸口にできないか。

エジプト政府が停戦案を示すなど、仲介の試みは生まれている。ただ、アラブ諸国の多くは内紛を抱え、動きが鈍い。ここは、米国がもっと中心的な役割を果たすべきだ。

イスラエルとパレスチナの間で米国が仲介した和平交渉はこの春に頓挫したままだ。憎悪と暴力の応酬を抜け出す道筋は見いだせないのか。当事者たちの真剣な努力を促したい。

毎日新聞 2014年07月16日

ガザ衝突 流血と戦闘の停止を

なぜ、これほど流血が続くのだろう。なぜ、誰も止めることができないのか。改めてそんな疑問がわいてくる。8日から本格化したイスラエル軍の攻撃でパレスチナ自治区のガザでは死者が180人を超えた。

これに対しガザを支配するイスラム主義のハマスはロケット弾をイスラエル領内に撃ち込んでいる。種子島ほどの広さのガザには約150万人が住む。死者の約7割が民間人と聞けば暗い気分になる。海と検問に囲い込まれたガザは逃げ場のない「陸の孤島」と化しているのだ。

この上イスラエルが地上侵攻に踏み切れば、犠牲者の急増は避けられない。明るい材料は、エジプトが提示した停戦案をネタニヤフ政権が受け入れたことだが、ハマスはまだ態度を明らかにしていない。

直ちに戦闘を停止する時だ。ハマスのロケット弾はほとんどイスラエルの防空システム「アイアンドーム」で破壊され、実質的にイスラエル軍の一方的な攻撃だ。民間人の死者数をアピールしてイスラエルの残虐さを訴えるハマスに対し、イスラエルはガザの犠牲者をハマスの責任に帰する。これではパレスチナの一般住民がたまらない。

今回の衝突は先月末、誘拐されたユダヤ人少年3人が遺体で発見されたことに端を発する。数日後、パレスチナ人の少年が連れ去られて殺害された。イスラエルは多数のパレスチナ人を容疑者として拘束し、双方の対立機運が高まった。

イスラエルがガザに地上侵攻した2008~09年の衝突では1300人以上のパレスチナ人が死亡したが、この時も国連安保理や米国の動きは鈍かった。米国が同盟国イスラエルの「自衛権」を尊重し、同国に不利と思われる停戦決議には拒否権行使も辞さないからだ。

だが、オバマ米大統領はワシントンやパリ、東京など世界各地でイスラエルの空爆停止を求めるデモが起きていることを重く受け止めてほしい。米国のユダヤ系市民は選挙に大きな影響力を持つ。11月の中間選挙を考えるとオバマ大統領も動きにくいかもしれないが、イスラエルを説得できるのは米国だけだ。

思えば米国の仲介で昨年再開された中東和平交渉は見るべき成果もないまま中断し、シリアでは内戦が続き、イラクではシリアやパレスチナを含む地域への国家樹立を掲げるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が勢力を拡大している。

こうした状況を米国は事実上静観しているようだが、1990年代から中東に大きな影響力を築いた米国が「退場」するのなら、権力の空白をめぐる抗争も予想される。オバマ大統領の考えどころではないか。

読売新聞 2014年07月17日

ガザ空爆 早期停戦へ国際仲介を強めよ

暴力の連鎖を断ち、早期停戦を実現するため、国際社会は結束し、紛争当事者に対する説得工作を強めるべきだ。

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスなどのロケット弾攻撃と、イスラエル軍による空爆の応酬が激化してきた。

エジプトが、紛争当事者のトップ会談やガザ経済封鎖の解除を柱とする停戦案を示し、イスラエルはいったん受け入れた。だが、ハマスが拒否したため、停戦は実現せず、双方が攻撃を再開した。

ロケット弾によるイスラエル側の犠牲者は少数だが、ガザの死傷者は1600人を超えた。流血のさらなる拡大が懸念される。

200人超の死者の7割以上が巻き添えになった市民とされる。国連安全保障理事会が双方に対して、民間人の保護を全会一致の声明で訴えたのは当然である。

紛争の発端は、6月中旬以降、イスラエル、パレスチナ双方の若者が相次いで殺された事件だ。イスラエル軍と民衆の小競り合いが軍事衝突に発展した。

ガザの武装勢力がイスラエルへ撃ち込んだロケット弾は約1000発に上る。イスラエルは連日、ハマスの関連施設やロケット弾の発射基地を空爆している。

心配なのは、レバノンやシリアからもイスラエルへのロケット弾攻撃が行われていることだ。

中東は既に、シリアとイラクの内戦で揺れている。さらに、今回の紛争が拡大すれば、極めて深刻な危機に陥ろう。

米国は、強い指導力を発揮し、同盟国であるイスラエルに自制を働きかけるべきだ。

ハマスに一定の影響力を有するアラブ諸国やパレスチナ自治政府も、国際機関などと緊密に連携し、事態の早期収拾に向けた道筋を探ってもらいたい。

問題の根底には、イスラエル国家の存在を認めないハマスの強硬姿勢がある。統治能力を欠くハマスの下でガザ経済は破綻し、住民は希望を失っている。

だが、ハマスが弱体化すれば、過激派組織「イスラム聖戦」など、より危険なイスラム主義勢力を台頭させかねない。この矛盾がガザ問題の解決を難しくしている。

イスラエルとパレスチナの中東和平交渉は4月末に頓挫し、現在も中断したままだ。

対話が途絶えると、情勢が不安定化し、軍事紛争が始まる。この中東の宿痾を克服する決意を双方の指導者が共有しなければ、泥沼からの脱却はあり得まい。

産経新聞 2014年07月13日

ガザ戦闘 流血の拡大を食い止めよ

またも爆音と黒煙、流血と悲嘆の光景だ。

イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区への本格的軍事作戦を開始し、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が激化した。

イスラエル軍の空爆でパレスチナ住民多数が命を失い、イスラエル側でも国民がハマスのロケット弾の恐怖におびえている。

双方とも、これ以上、流血を拡大させないように、直ちに攻撃を停止しなければならない。

引き金は陰惨な事件だった。先月中旬、イスラエル人少年3人が拉致・殺害され、イスラエル側はハマスの犯行と主張した。

今月初めには、パレスチナ人少年1人が連れ去られ焼死体で発見されるという、報復とみられる事件が起きた。イスラエル当局はイスラエル人容疑者たちを拘束し、法で裁こうとしている。

だが、パレスチナ人は憎悪を募らせ、抗議デモから、ロケット弾攻撃と空爆の応酬へ発展した。

イスラエルのネタニヤフ首相は11日、平穏が戻ったと国民が確信するまで作戦を継続すると表明した。同国軍は予備役兵を招集、ガザ境界付近に戦車部隊を配備し地上侵攻の構えも見せている。

2008年暮れから翌年にかけてのガザの戦闘では、イスラエルの地上部隊投入で1400人余のパレスチナ人が犠牲になった。惨劇を繰り返してはならない。

国連安保理の緊急会合で「(戦闘の)全面拡大の危機」(潘基文事務総長)という認識が示される中、イスラエルとパレスチナの代表は相互非難に終始している。

国際社会は結束して、双方に強く自制を求めるべきだ。

シリアでは内戦がやまず、同国とイラクにまたがる地域にイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が支配を広げ、国境線変更もあり得る状況だ。中東のさらなる混乱は何としても避けたい。

米国の仲介で1年前に再開したイスラエルとパレスチナ自治政府との中東和平交渉は、具体的な成果を出せないまま中断した。最大の要因は、両者の信頼関係が築けなかったことにある。

オバマ米政権は、シリア内戦で打つべき手を打てず、そこで勢いを得た「イスラム国」のイラクでの台頭になすすべもない。

パレスチナ問題を政権の中東政策の正念場と位置づけ、今度こそ指導力を発揮してほしい。

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