滋賀県知事選 与党の緊張感欠如も響いた

朝日新聞 2014年07月15日

滋賀県知事選 地元軽視の国策にノー

原発の再稼働を一気に進めようとする安倍政権に、強烈なノーが突きつけられた。

滋賀県知事選挙で、「卒原発」を訴えた嘉田由紀子知事の後継指名を受けた三日月大造氏が、自民・公明が推した小鑓隆史氏らを破って初当選した。

先の参院選で、県内で自公が獲得した比例区票は約半数。当初は小鑓氏の「楽勝」と思われていただけに政権のショックは大きい。何が起きたのか。

滋賀県は、全国最多の14基の原発を抱える福井県と隣接し、県の北部は、事故が起きた際の防災計画を準備しなければならない30キロ圏内に入る。

朝日新聞の出口調査では、原発・エネルギー政策を重視して投票した人の7割が三日月氏に投票していた。選挙戦中盤で安倍政権が集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行ったことも、三日月氏に追い風となった。数の論理をたてに、世論を二分する「国策」を強引にすすめる安倍政権への異議申し立てである。

10月には原発事故の後始末に苦闘する福島県、11月には基地問題を抱える沖縄県で知事選がある。このまま地元の声を軽視した政権運営を続けるようでは、ますます国民から見放されるだろう。

安倍政権は、原子力規制委員会の審査でOKが出れば、鹿児島県の川内原発を皮切りに次々と全国の原発を再稼働させる方針だ。そんな中で、「被害地元」である滋賀県の住民の鳴らした警鐘は重い。

規制委による原発の設備のチェックだけでは住民の安全を守り抜くことはできない。いざというときの実効性ある避難計画をどう整備するか、被害を受けた住民への補償体制をどう準備するのか。三日月氏は、今なお残されたままの多くの課題について、政権や電力会社と交渉しなければならない。

琵琶湖は「関西の水がめ」であり、琵琶湖が汚染されれば関西が大きな影響を受ける。琵琶湖を抱える県の知事として、関西の自治体とも連携し、本当に再稼働が必要なのかも正面から問うべきだろう。

2年前の大飯原発の再稼働時も、関西広域連合が安全性や必要性を厳しく問い、政権と対抗した。だが夏の電力逼迫(ひっぱく)のリスクを突きつけられ「時間切れ」で再稼働を認めた。

あれから国民の節電意識は浸透し、今年は事故以来初めて原発なしの夏を乗り切ろうとしている。事故の教訓は生かされているか、こんどこそ腰をすえて議論し、行動するときだ。

毎日新聞 2014年07月14日

滋賀県知事選 政権のおごりへの批判

強引な自民党1強政治に有権者が異議を唱えた選挙結果ではないか。滋賀県知事選が投開票され、前民主党衆院議員の三日月大造氏が、自民、公明両党推薦候補らを破り初当選した。安倍政権の発足以来、与野党が対立する構図となった国政・知事選で与党が敗北したのは初めてだ。

集団的自衛権の行使を容認する閣議決定後初の大型選挙として注目された。各党は来春の統一地方選もにらみ、秋の福島、沖縄両県知事選とともに最重要選挙と位置づけて臨んだ。それだけに、この結果が国政に与える影響は小さくない。

「もったいない」などのキャッチフレーズで知られ、「草の根自治」を旗印に2期8年務めた嘉田由紀子知事が引退を表明。嘉田路線の継承か、転換かの選挙となった。

自民党は安倍政権の経済政策「アベノミクス」を担当した元経済産業省官僚を擁立。安倍政権への高い支持を後ろ盾に、組織固めを進めた。三日月氏は嘉田氏と二人三脚で「草の根」後継をアピールした。

当初は与党陣営優勢が伝えられたが、選挙戦中盤に安倍政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定したころから風向きが変わったとされる。

三日月氏は安倍政権との対決色を強め、「行使容認を簡単に決めた」などと批判を展開した。自民党は石破茂幹事長らを投入するなど国政選挙並みの態勢で陣営引き締めを図ったが、伸び悩んだ。行使容認に慎重だった公明党との連携がどこまで機能したかも含め点検を迫られよう。

自民党議員の相次ぐ問題発言もマイナスに働いた。

福島第1原発事故の中間貯蔵施設建設をめぐる交渉についての石原伸晃環境相の「金目」発言は、多くの原発を抱える福井県に隣接する滋賀県の有権者に「政府の本音」として響いたはずだ。嘉田氏の提唱した「卒原発」を三日月氏は継承した。原発再稼働に前のめりな安倍政権に対する批判が作用した可能性もある。

東京都議会では「早く結婚した方がいい」との女性蔑視のヤジが問題化した。その後、国会でも同様のヤジが発覚し、有権者の反発を生んだ。与党陣営はこうした逆風をかわせないままだった。

一方の野党も、この勝利がただちに国政での攻勢につながるとは言えない。三日月氏は幅広い嘉田票を取り込むため、あえて民主党を離党して政党色を出さずに戦ったからだ。

国政は現在、「1強多弱」と呼ばれる状況にある。そのおごりが強引な政権運営や自民党議員の問題発言となって表れ、有権者は拒否感を強めつつあるのではないか。政府・与党は選挙結果を謙虚に受け止めるべきだ。

読売新聞 2014年07月14日

滋賀県知事選 与党の緊張感欠如も響いた

政府・自民党の慢心を戒める結果だった、と言えるのではないか。

滋賀県知事選は、無所属で前民主党衆院議員の三日月大造氏が、自民、公明両党が推薦する無所属の小鑓隆史氏らを破り、初当選した。

三日月氏は、2期務めた嘉田由紀子知事の後継者との立場を明確にするとともに、政府・自民党の政治姿勢を攻撃する選挙戦術をとったことが奏功した。

特に、福島県での中間貯蔵施設建設を巡る石原環境相の「金目」発言や、東京都議会や衆院総務委員会での自民党議員のセクハラヤジに対する批判が高まったことが三日月氏への追い風となった。

東日本大震災の被災者や女性への配慮を欠いた言動は、与党のおごりや緊張感の欠如の表れ、と受け止められたのだろう。

国会は自民党が圧倒的多数を占める「1強」体制で、安倍内閣の支持率もなお高いが、政府・自民党は、より謙虚な姿勢で手順を尽くし、政策を遂行すべきだ。

知事選は本来、候補者の資質や県政の問題を問うものだ。自民党の石破幹事長が「候補者、県政に直接、影響があること以外で影響が出ている」と指摘したような展開になったのは残念である。

疑問なのは、三日月氏が、嘉田知事と同様、段階的に原子力発電から脱却する「卒原発」を唱えたことだ。原発政策は、政府が大局的観点から判断すべきものだ。原発の再稼働などには、知事の法的権限は及ばない。

現状は、原発が稼働せず、火力発電の燃料費がかさみ、電気料金は上昇し続けている。政府は、関係自治体の理解を得て、原発の再稼働を急がねばならない。

経済産業省出身の小鑓氏は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の成果を強調し、「滋賀県の経済を再生する」と訴えた。

ただ、アベノミクスの効果が地方では限定的なこともあり、支持は広がらなかった。政府は、地域活性化にも力を入れるべきだ。

知事選は、集団的自衛権を限定的に容認する新たな政府見解を閣議決定した直後に行われた。

日本の安全保障環境の悪化を踏まえれば、集団的自衛権の行使を可能にし、日米同盟や国際連携を強化する意義は大きい。

だが、三日月陣営は、政権批判の一環で新見解に反対し、「場外戦」に持ち込んだと言える。

政府・与党は、知事選の結果にとらわれず、行使容認の必要性を丁寧かつ積極的に説明し、国民の理解を広げる必要がある。

産経新聞 2014年07月14日

知事選自民敗北 慢心への警告受け止めよ

滋賀県知事選で、自民党の候補が現職の嘉田由紀子知事や民主党が支援した候補に敗れた。秋に行われる福島、沖縄両県知事選と並び重視して取り組んでいただけに、安倍晋三政権にとっては痛手である。

敗因としては、出遅れによる知名度不足に加え、選挙の直前に東京都議会でセクハラやじ問題が生じて、自民党への逆風が強まったことなどが挙げられる。

軽視できないのは、そもそも政府が安全保障政策の見直しに踏み込んだことが内閣支持率の低下を招き、選挙の足を引っ張ったとの分析があることだ。

集団的自衛権の行使容認を決めたことの是非が、直接、知事選で問われたとは考えにくい。だが、国民の十分な理解をまだ得られていないことは否定できない。国民の生命を守るために必要な政策判断であることを、今後とも丁寧に説明する努力が求められる。

有権者の信頼を失うような不祥事は起こさず、起きた場合には直ちに対処し、再発防止策を徹底すべきことは言をまたない。

国政での「1強多弱」の状況は変わっていないが、内部には思わぬもろさを抱えている。辞任問題には発展しなかったものの、閣僚の失言もあった。巨大与党に慢心はないか。敗北を厳しい警告と受け止めるべきだろう。

嘉田氏は日本未来の党結成をめぐる混乱をはさみ、3選出馬を見送ったが、その幅広い支持層に推される形で、事実上の後継候補である三日月大造元衆院議員が初当選した。

三日月氏に注文しておきたいのは、知事選でも争点の一つとなった原発問題への今後の対応だ。

滋賀県は原発が多数立地する福井県に隣接する。関西電力高浜原発3、4号機は、九州電力川内原発1、2号機に続き再稼働の対象となることが期待される。

三日月氏は民主党衆院議員時代に、原発輸出を可能にする協定の承認に賛成している。再稼働も安全の確保を条件に容認する立場ではなかったか。

「卒原発」など再稼働に極めて慎重な姿勢を打ち出したのは、嘉田氏の支援を受ける上でやむを得ない面もあったのだろう。

県民の命と生活を守るエネルギーを確保する。自治体のトップは、その責任も負う立場にあることを忘れないでもらいたい。

戸田弘之 - 2014/07/14 17:53
なかなか、現代の世相を映している記事だと思います。
この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1879/