米中両国のアジア戦略の対立が際立った。地域の秩序作りを巡る双方の主導権争いは、今後、一段と激しくなろう。
第6回米中戦略・経済対話が北京で行われ、双方の閣僚級が2日間にわたり議論した。
最も注目されたのは、中国の習近平国家主席が昨年、オバマ米大統領に提唱した「新しいタイプの大国関係」の扱いだった。
習氏は太平洋を米中の勢力圏に分割し、領土などの「核心的利益」を守る構想を持つ。戦略対話の開幕式でも、こうした「大国関係」の構築を呼びかけた。アジアの安保秩序から米国を排除する「アジア安全観」も掲げている。
米側は、オバマ氏の声明を発表し、中国との「実質的協力を増やし、立場の違いには建設的に対処する」と強調した。米国が中国と協力しながらも、アジアへの関与を続ける決意を明示したものだ。両国関係は同床異夢と言える。
オバマ氏が4月のアジア歴訪で体現した「アジア重視」路線を堅持していることを評価したい。
東・南シナ海での中国の独善的な海洋進出について、ケリー米国務長官は、「一方的な行動は許されない」と述べ、中国に国際ルールの順守を求めた。
中国の楊潔チ国務委員は、「米国が一方に肩入れしないよう求める」として、日本や東南アジアの立場を米国が支持することに反対した。だが、力による現状変更を正当化する中国の論法は、関係国の理解を到底得られまい。
中国軍による米国へのサイバー攻撃については、米国が、攻撃の中止と作業部会での協議再開を求めた。中国は、攻撃の事実を否定しており、協議を拒否する姿勢も崩さなかった。
中国のサイバー攻撃は、国際社会に共通する懸案だ。中国が「大国」を自称するなら、きちんと協議に応じる責任がある。
経済分野では、温室効果ガス削減の新たな枠組み作りに向けた米中協力の加速を確認した。中国と米国は世界1、2位の排出国だ。実効性ある枠組み作りへ積極的な取り組みが求められる。
人民元の為替レート問題では、市場原理による為替相場への移行を主張する米国と、これに慎重な中国との溝が埋まらなかった。
今回の対話を前に、岸田外相とケリー氏が電話会談するなど、日米両国は緊密に意見交換した。
米国の主張の多くは、日本と利害を共有している。日本は、対中国政策で、米国との連携を強化することが肝要である。
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