顧客情報流出 売買業者も説明責任負う

朝日新聞 2014年07月12日

顧客情報流出 企業の重い責任自覚を

子どもを含む大量の個人情報が教育産業の大手企業から流出していたことがわかった。

自分と家族の情報が誰の手にあり、どう使われるかわからない。デジタル社会の不安をあおる企業の失態である。

情報管理を誤ったベネッセホールディングスの責任は重い。警察に全面協力し、経路の解明と再発防止策を急ぐべきだ。

流出データは確認されただけで約760万件、最大で約2千万件におよぶ恐れがある。

企業からの個人情報の流出はこれに限った話ではない。業種を問わず不正があとを絶たないのは、顧客情報の価値が相対的に上がっているからだ。

個人情報保護法の施行や、住民基本台帳の営利目的での閲覧の禁止などで、個人情報の入手が難しくなっている。

とりわけ教育産業界では、少子化で競争が激化する一方、親が1人の子どもにかけるお金は増える傾向にある。子どもをもつ家庭に確実に接触でき、成長にあわせて長く使える情報は、のどから手が出るほどほしい。

そうしたさまざまな個人情報を扱っているのが名簿業者だ。その実態は不透明で、今回のように違法な形で流出したデータが出回ることも少なくない。

これまでの個人情報保護法の改正をめぐる政府の論議の中でも、名簿業者の問題はとりあげられてきた。

業者の実態の把握や、彼らが集めるデータの活用はどこまで認められるべきか。今後そうしたルール化を検討する必要があろう。

名簿を買う側の責任も当然問われる。ベネッセの情報を使って自社の勧誘案内を送っていたジャストシステムは、ベネッセから漏れた情報とは認識していなかった旨の釈明をした。

だが、自らがIT事業者であり、電子化された情報管理の機微を人一倍知るはずの企業だ。

それなのに、出どころ不明のデータを安易に業者から買って使っていた事実は、この会社自身の情報管理に対する顧客の不信感を招きかねない。

今回の不正は、勧誘案内を送られた親たちがツイッターなどで情報交換し、次々に問い合わせたことから発覚した。自ら経路を追及して名簿業者を突き止め、公開した親もいる。

情報を軽んずれば、情報の力で反撃される。IT時代だからこそ、企業はデータの扱い方次第でしっぺ返しを受ける。

デジタル社会の情報管理はこれからますます難しさを増す。企業が果たすべき責任と義務をいま一度考えてもらいたい。

産経新聞 2014年07月11日

顧客情報流出 売買業者も説明責任負う

通信教育大手の「ベネッセコーポレーション」から大量の顧客情報が流出した。顧客の元には他社から勧誘のダイレクトメールが届くケースが頻発しており、被害相談を受けた警視庁は、不正競争防止法違反(営業秘密侵害)などの疑いで捜査を始めた。

ベネッセは、データベースに集約していた顧客情報の管理が万全だったか、徹底的に検証を進める必要がある。警視庁には、情報の流出経路の全容解明を求めたい。そして流出名簿を売買し、営業活動に使用していた企業も、責任を負う必要がある。

ベネッセは、顧客情報は社内データベースからアクセス権限のある同社社員以外の内部関係者が故意に持ち出した疑いが強いとし、ベネッセホールディングスの原田泳幸(えいこう)会長兼社長は「情報を流出させた側も、利用した側も明らかに悪意がある」と話した。

不正競争防止法は、市場における公正な競争の確保などのために設けられたもので、平成13年以降、7度にわたって処罰対象範囲の拡大や罰則強化などの改正が重ねられてきた。

21年の改正後は、不正に利益を得る目的での営業秘密の漏洩(ろうえい)にも適用できるようになり、3月には東芝の研究所データを韓国企業に流出させたとして、元技術者の男が同法違反容疑で逮捕された。

ただ摘発には違法性の認識が問われるなどの高い壁があり「善意の第三者」を主張されれば、これを突き崩すのは容易ではない。

ベネッセの顧客情報を流用してダイレクトメールを発送したIT事業者「ジャストシステム」や、同社に情報を売った名簿業者は、「不正なものとは分からなかった」などと説明している。

それなら購入や売買のつまびらかな経緯を公にすべきだろう。刑事罰とは別に、企業には社会的責任がある。摘発に至らなければそれでいい、とはならない。

ジャストシステムの株価は10日、一時ストップ安となった。情報流出関与の疑いを嫌気して、である。信用の回復には、納得のいく説明が欠かせない。

食品の偽装や期限切れ原材料の使用問題などで、虚偽説明や隠蔽(いんぺい)が刑事罰、行政罰を上回る痛手を会社に負わせる例を数多くみてきた。主要な顧客である子供にも分かる明確な説明を、関係者の全てに求めたい。

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