政務活動費問題 住民の方が泣けてくる

毎日新聞 2014年07月06日

政務活動費問題 住民の方が泣けてくる

異様でかつ根深い問題だ。兵庫県議が年間195回も日帰り出張したとして費用約300万円を政務活動費からあてていたことが発覚した。県議は記者会見で号泣したが、具体的な説明は拒否している。

兵庫県議会が実態解明にあたるべきなのは当然だが、常軌を逸した公金支出が起きた背景には政務活動費制度が抱える問題がある。ことは地方議会全体の信用に関わる。早急にあり方を見直すべきだ。

政務活動費は政策の調査研究などのため、報酬以外に地方議員に支給される。かつては政務調査費という名称だったが2012年の法改正で使途に「その他の活動」も加えられ要請や陳情活動への支出も可能となり、改称した。支給の有無や金額、支出項目の設定や例示は法律の範囲内で自治体に委ねられている。

兵庫県議会の場合、議員1人あたり月額50万円が支給され、使いきらなければ返納する。ところが野々村竜太郎県議は要請陳情等活動費として昨年度、兵庫県豊岡市や東京都など195回分もの日帰り出張費を支出していた。県議会はすべての領収書の添付を義務づけるが野々村県議は自動券売機などで購入した際などに適用される例外規定を使い添付せず、出張による具体的な行動も報告しなかった。

非常識で不自然な支出ぶりだが、野々村県議は「偽りはない」と泣き叫ぶばかりだった。活動費の返納だけで県民は到底、納得しまい。本人が説明しないのであれば議会に実態解明の責任がある。

政務活動費はもともと「第2の報酬ではないか」など批判が強く、住民監査請求で不適切な支出が指摘されるケースが絶えない。携帯電話費など公私の区別、政治家個人の活動との境界など、不明瞭さがつきまとう。愛知県では出席しない会合の経費請求など不正受給で県議2人が昨年、議員辞職に追い込まれた。

今回の事態を踏まえ使途の例示や限定など運用の厳格化に努めることが地方議会の最低限の責任だ。とりわけ「私的旅行」と批判されがちな海外出張は活動費の対象から除外して費用のあり方を検討すべきだ。事前に総額を一律支給し、返還するという方法も再考を求められよう。

野々村議員の場合、初当選後2年間も交通費として不自然な支出が繰り返されていた。議会事務局による形式的な審査には限界がある。支給額や使途について、第三者によるチェックも検討すべきだ。

「号泣議員」の突出したふるまいは海外でも報道されている。だが、現実には地方議会全体に不信の目は注がれている。人ごとと受け止めず、襟をたださねばならない。

読売新聞 2014年07月09日

県議政務活動費 泣かずに説明責任を果たせ

議員の政務活動費が税金で賄われる以上、不正な支出は許されない。地方議会は、支出の適正性の確保と透明性の向上を徹底すべきだ。

兵庫県議の不明朗な政務活動費が問題となっている。

当該県議が議会に提出した収支報告書によると、2011~13年度に兵庫県の温泉や東京などを345回も日帰りで訪問したとして、交通費名目で約800万円の政務活動費を使っていた。

だが、報告書には、訪問相手の名前や目的が一切記載されず、領収書も添付されていなかった。訪問日には、大雨で大半の特急列車が運休になった日も含まれる。

本当に政務活動を行っていたのか。疑問はぬぐえない。

県議は1日の記者会見で号泣しながら釈明したが、具体的な訪問先などの公表は拒んだ。県民の理解は到底、得られない。県議会には抗議が殺到している。

県議については13年度、切手代として多額の政務活動費を受け取っていたことも発覚している。

兵庫県議会議長が、不正が確認された政務活動費の返還と、説明責任が果たせない場合の速やかな辞職を求めたのは当然である。

当の県議は辞職を検討しているというが、不正な支出が確認されれば、詐欺に当たる可能性もある。辞職だけでは済まされない。

地方議員には、報酬とは別に、調査研究活動などのために政務活動費が支給されている。

かつては政務調査費と呼ばれたが、12年の改正地方自治法で名称が変わり、陳情など議員活動への支出も認められるようになった。従来以上に、支出の厳格な監視が求められている。

看過できないのは、兵庫県議会の対応の甘さだ。

収支報告書に原則、領収書の添付を義務づけていたが、本人作成の「証明書」だけでも支出を認めていた。問題の県議が3年間、領収書を添付しなかったのに、事務局が注意喚起しただけだった。

県議会は、政務活動費に関する運用手順を見直すというが、遅きに失した措置である。

政治活動に多額の資金を要するのは事実で、正当な議員活動への支出は認めるべきだ。議員は、公金であることを肝に銘じ、有効に活用せねばならない。

地方議会は、議員の不正を許さないルール作りに取り組まねばならない。第三者機関による使途の監視も有効だろう。ホームページでの収支報告書の公開など、透明性向上にも力を入れてほしい。

産経新聞 2014年07月08日

政務活動費 まず議員自らが襟を正せ

こんな常識を外れた支出が通るのか。政務活動費の不自然な使途がまた問題となった。

兵庫県議が、3年間で300回以上の日帰り出張をした「切符代」として政務活動費をあてていた。議会事務局への支出報告書に領収書添付はなく、出張目的も書かれていなかった。

税金である政務活動費の厳正な使い方と監視を求めたい。

政務活動費は、地方議員の給料以外に調査研究活動などを行うため支出されている。兵庫県議の政務活動費は1人月50万円、年額600万円が出されている。

支出報告書では、問題の県議は初当選後の平成23~25年度の3年間で計345回の日帰り出張をした切符代名目に約780万円を支出していた。25年度は兵庫県の城崎温泉に100回以上など、195回の日帰り出張をしたことになっている。今月1日に釈明会見したが、出張目的などについて詳しい説明をせず途中で号泣し、海外メディアにも報じられた。何度見てもあきれるばかりだ。

兵庫県議会は7日、会派代表者で協議し県議に「説明責任を果たせない場合は辞職すべきだ」との勧告を出した。説明できない支出分の返還を求め、議会として再調査を決めた。仮に実際に出張していない「カラ出張」なら公金詐欺などの違法行為にあたる。辞職による幕引きでは済まされない。

「第2の給与」と呼ばれ、ずさんな使い方で、過去にはキャバレーなどの飲食代を「景気動向調査」などの名目で支出し、指弾されたケースもある。

2年前に地方自治法が改正され政務調査費から政務活動費に名称が変わり、調査研究以外に使えるよう使途が広がった。領収書の裏付けのない支出の返還を命じる司法判断もあり、自治体によって原則、領収書添付を義務づけるなど見直しは行われてきたが、チェック機能は十分とはいえない。

今回の問題でも自動販売機で買ったときなどの例外規定で領収書添付はなかった。出張の具体的な目的を書くよう求める議会事務局の要請に県議は応じず、議会自身の監視が甘かった。

議会によっては支出報告書をホームページなどで詳細に公開し透明性を高めている。使い切れない活動費なら返還するのが義務だ。この問題を機に、すべての議員自ら襟を正してもらいたい。

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