景気の先行きを、引き続き注意深く見極める必要があろう。
6月の日銀企業短期経済観測調査(短観)で、景況感を示す業況判断指数は、前回3月調査に比べて悪化し、大企業の製造業が12、非製造業は19となった。どちらも、6四半期ぶりの悪化である。
4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要と、増税後の反動減で大きな影響を受けた自動車や小売りなどで低下が目立った。
9月時点の景気を予想する先行きの指数は、大企業の製造業が6月から3ポイントと小幅に改善し、非製造業は横ばいとなった。
麻生財務相が「消費増税の影響を最小限に食い止めて、そこそこ緩やかに回復基調が続いている」と述べるなど、政府は増税ショックの乗り切りに自信を見せる。
だが、回復の勢いはさほど強くない。油断は禁物だろう。
家計消費の大幅な減少など、心配な経済指標も出てきた。消費復活のカギは収入の増加である。
安倍政権の要請もあり、大企業の春闘賃上げ率が2%台に乗せたのは好材料と言える。ただ、4月から消費税が価格に上乗せされ、消費者物価の上昇率は3%台に跳ね上がった。賃上げが物価上昇に追いついていないのが実情だ。
好業績の企業が賃金やボーナスで従業員に利益を還元し、それが消費を押し上げる「好循環経済」に向けた動きを、政策で後押しすることが求められる。
政府は、新たな成長戦略に盛り込んだ法人税実効税率の引き下げや規制改革などの施策を、着実に実行しなければならない。
気がかりなのが、建設や外食などの業種で人手不足が深刻化していることだ。受注見送りや店舗休業などの弊害も広がっている。このままでは、景気回復に水を差す恐れがある。
人材を求める企業と、職を探す人の希望がすれ違う「雇用のミスマッチ」の解消を急ぎたい。
人口減少に伴い、労働力不足は幅広い業種に広がろう。官民が連携し、女性や高齢者、外国人の活用などによる中長期的な労働力の確保策に本腰を入れるべきだ。
民間主導の成長を軌道に乗せるには、設備投資の本格化も不可欠だ。各企業は産業競争力強化法などの施策も活用し、成長分野への新規投資を積極化してほしい。
安全性の確認できた原子力発電所を着実に再稼働し、電力の安定供給を回復することは、持続的な経済成長の基盤を作るために必要な条件である。
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