選挙制度改革 重い宿題を早くこなせ

毎日新聞 2014年06月27日

選挙制度改革 重い宿題を早くこなせ

会期を延長することなく閉会した先の通常国会で、またしても与野党がこなせなかった重い宿題がある。衆参の選挙制度の改革だ。衆参ともに早急に結論を出す必要がある。

消費増税するからには「議員自らも身を削るべきだ」と自民、民主、公明3党が定数の大幅削減を含む衆院選挙制度の抜本改革実現で合意したのはもう1年半以上も前になる。消費税率は予定通り4月から引き上げられたにもかかわらず、衆院では制度見直しを議論する第三者機関の設置がやっと決まったに過ぎない。

約束を果たしていないだけではない。「1票の格差」問題も深刻だ。今年1月1日現在の住民基本台帳人口をもとにした試算によれば、衆院小選挙区の「1票の格差」は最大で2.109倍。14選挙区で2倍以上となり、格差はより拡大している。

3党合意後、唯一実現させた衆院小選挙区の「0増5減」策が応急措置に過ぎなかったのは明らかだ。このままでは再び司法から「違憲」や「違憲状態」という厳しい判決が相次ぐのは確実だ。ところがそんな切迫感が国会には感じられない。

第三者機関のあり方についても各党の調整は手間取り、正式に設置が決まったのは今月だ。伊吹文明衆院議長は地方自治体の首長や学者、元最高裁判事らから7月中にメンバーを決める意向という。そして第三者機関が出した結論に対しては、そもそも設置に反対の共産党などを除く各党は「尊重する」としている。

しかし、どこまで拘束力があるのか、あいまいさが残り、仮に小選挙区の削減が提言された場合、削減に慎重な自民党が受け入れない可能性さえ早くも取りざたされているほどだ。議員自らが決められないから第三者に委ねることになったはずだ。結論の取り扱いについて、より明確な合意を事前に図っておくべきだ。

一方、今回の試算によれば、参院選挙区の「1票の格差」は最大で4.767倍。17選挙区で3倍を超えた。こちらも深刻な状態だ。

与野党でつくる参院選挙制度協議会の脇雅史座長(参院自民党幹事長)は26日、隣接する選挙区を統合する「合区」の数を当初案から縮小する案を新たに示した。だが、人口の少ない県を合区して「1票の格差」を解消する方式には既に自民党内からも対象選挙区選出の議員や地元から不満が噴出しており、今度の修正案もまとまるめどが立たない。

確かに選挙制度には一長一短がある。ただし、一度改革すると決めた以上、早く宿題をこなすのは当然だ。違憲状態をだらだらと放置している人たちに、果たして憲法解釈や憲法改正を議論する資格があるのか−−という話でもある。

産経新聞 2014年06月30日

衆院の第三者機関 改憲視野に幅広い議論を

選挙制度改革を有識者らが議論する衆院の第三者機関が設置され、伊吹文明議長による人選を経て今夏にも始動する。

安倍晋三首相が設置を提起したのは昨年の参院選前だ。すでに1年が経過している。よりよい制度に向け、第三者機関の活発な議論を期待したいが、このスピード感のなさを考えると、答申を得て本当に改革が実現するのか疑問だ。

民主主義の土俵づくりを自分たちで決めきれず、第三者に委ねたのだから、答申が出たら尊重するのは当然である。

総務省が公表した1月1日現在の人口調査から、衆参両院の「一票の格差」はさらに拡大していることが判明した。司法から「違憲状態」などの警告を突き付けられる慢性状況から抜け出すには、一部選挙区の定数是正を繰り返す弥縫(びほう)策とは異なる解決方法を見いださなければならない。

伊吹議長は1年程度の議論を想定しているようだ。最大の焦点は選挙制度の抜本改革だが、次期総選挙から新制度を導入するのであれば、立法作業や周知期間も考慮すると時間はあまりない。

現行の小選挙区比例代表並立制の長所は何で、改善すべき課題は何か。新たな制度を導入するならどのようなものが現実的か。論点を絞るべきだ。利害が対立して集約できなかった与野党協議のように、さまざまな案を並べるだけの答申では意味がない。

定数削減を選挙制度改革と切り離して検討を求めたのは妥当だ。与野党協議では両方の議論が錯綜(さくそう)して成果を出せず、「身を切る改革」は放置された。

本来なら有権者と約束した「身の切り方」についてまで第三者の教えを請うのは恥ずべきことだ。抜本改革の前に決着をつけねばならない。第1次答申で案が示されれば先行実施する必要がある。

衆参両院の選挙制度のあり方については、「現行憲法の下で」という前提に縛られず、幅広く議論してほしい。両院の役割を考えることは、国の形にかかわる憲法問題そのものといえる。間接選挙の導入など、選択肢を広げる意味でも、憲法改正を視野に入れた検討を加えてほしい。人口減少や過疎化の進行を見すえた議論も重要である。

これらは参院側も加わり議論すべき課題だ。両院間の協議の枠組みづくりは国会の仕事だ。

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