2020年東京五輪・パラリンピックの会場計画が見直されることになった。
東京は昨秋、選手村を中心に8キロ圏内に会場の85%が収まる「世界一コンパクトな大会」を掲げ、招致に成功した。
国際公約である計画をむやみにいじるのは望ましくないが、大会後に活用されない「負の遺産」を残すようでは困る。
準備の進みぐあいを視察する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会の初視察が、きょうから始まる。広げすぎた風呂敷を率直に説明し、新たにスタートを切る好機としたい。
IOCも、ことさら立派で新しい施設を奨励しているわけではない。03年に五輪の肥大化を抑える提言をまとめ、「のちの利用も考えた規模」「既設・仮設の活用」を打ちだした。
今回、東京都が受けもつ施設の建設費だけでも、当初予定の1538億円が3800億円に膨らむことがわかった。
都は一部の会場建設をやめ、さいたま市などにある既存の施設を使う考えだ。IOCの思想にも沿った方針といえよう。
今回の見直しは舛添要一知事と大会組織委の森喜朗会長の話し合いで決まり、スポーツ界は蚊帳の外。政治主導が色濃い。
国内の競技団体からは「招致のときの約束を破るのは信頼を失う」との不満が聞かれる。
国立競技場、代々木、駒沢など都内の主要施設は、半世紀前の五輪の遺産だ。どれも老朽化し、今回の五輪で再生を願う気持ちは関係者の間に強い。
だが、立派な施設の建設を望むだけでは説得力が乏しい。これほど巨額の投資をスポーツ界が受けるのだから、長い視点で時代を読み解く必要がある。
日本の人口は減っている。東京も、五輪のある2020年をピークに人口が縮んでゆく。
その現実から目をそらさず、ポスト五輪の未来予想図をどう描くか。スポーツ振興の具体的な行動計画やビジョンを発信すれば、共感も広がるだろう。
例えば、国際大会を誘致すれば、スターの競演を子どもたちが見て、競技の楽しさを知る。ひごろは市民レベルの大会に施設を開放し、トップアスリートたちが指導する。そんな試みがもっと広がっていい。
スポーツ愛好者が増えれば、国民の健康増進に役立つ。医療費も抑えられるかもしれない。そうした市民の暮らしに根ざした目線に立つことで、施設計画の優先順位が見えてくる。
少子高齢化が進む社会でスポーツが果たす役割は何か。その構想力が問われている。
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