骨太の方針 成長と改革の両立が肝心だ

毎日新聞 2014年06月25日

骨太の方針 今や予算獲得の方便に

安倍政権は経済財政運営の基本方針「骨太の方針」を閣議決定した。昨年と同様に、「経済再生と財政健全化の両立」を掲げ、2020年度の基礎的財政収支の黒字化という政府の健全化目標を維持した。目標達成には、大胆な歳出抑制が欠かせない。財政赤字削減に向けた道筋を示すことも必要だ。

ところが、骨太の方針は、歳出抑制の具体策に踏み込まず、目標達成の道筋も示していない。来年度予算獲得に向けた政策の羅列にとどまっている。かつては官邸主導で歳出を削減する役割を果たしたこともあったが、すっかり変質してしまった。

今年の骨太の方針にも、「聖域なき見直し」や「効率化」といった歳出抑制の言葉だけは並ぶ。社会資本整備も、厳しい財政のもとで計画的に行うとした。しかし、その半面、民間需要を誘発し、投資効率の高い事業は重点化して実施することを盛り込んだ。国際競争力強化や国土強靱(きょうじん)化、防災・減災に資するインフラも効率的に整備するという。名目がつきさえすれば進める構えだ。

膨らむ医療費は、医薬品の価格抑制策が取り上げられた。薬の公定価格である「薬価」は、薬の市場価格をもとに2年に1回改定されている。一つ一つの薬の市場価格は毎年下がっていく傾向があるため、当初案では「改定を年1回とすることを含めて検討する」とされた。だが、自民党議員が「薬の研究開発が遅れる」などと反対し、「頻度を含めて検討する」との言及にとどまった。

骨太の方針のとりまとめにあたった甘利明経済再生担当相は、自民党の会議で予算獲得に向け次々と注文をつける議員に対し、「すべて書き込むと、骨太の方針が『メタボ方針』になる」とぼやいたという。優先順位をつけ、「財政のメタボ化」に歯止めをかけるのが政治家の仕事ではないか。

骨太の方針は、国債発行額に枠をはめたり、分野別に歳出削減の数値目標を定めたりして、財政改革を進める役目を担った時期もあった。それが今や、政策項目を盛り込めば、来年度予算に計上される流れになっている。予算獲得の方便として使われるようでは、骨太の方針を策定する意味がない。

昨年の骨太の方針は、財政健全化目標達成に向けた国・地方の取り組みを具体化した「中期財政計画」を策定すると明記した。しかし、昨夏公表された中期財政計画は、具体策を示したとは言えない内容で、空証文に終わった。今回の骨太はさらに後退し、目標の達成に向けた道筋は「早期に明らかにできるよう検討を進める」と述べただけだ。その道筋はたった今示しても遅いくらいであり、怠慢と言わざるを得ない。

読売新聞 2014年06月25日

骨太の方針 成長と改革の両立が肝心だ

足元の景気回復を図りつつ、財政再建など中長期的な課題の解決をどのように進めていくか。

安倍政権の実行力が問われよう。

政府は、経済政策の指針となる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)と、成長戦略の第2弾である新たな「日本再興戦略」を閣議決定した。

安倍首相は記者会見で「成長戦略にタブーも聖域もない」と述べ、日本経済再生に向けて改革を断行する決意を強調した。

骨太の方針は、日本経済は「もはやデフレ状況ではない」としたうえで、脱デフレを確実にするため、成長戦略をさらに加速させる考えを示した。

中長期的な成長力向上のカギを握るのは、財政の立て直しと、人口減対策だろう。

健全な財政基盤がなければ、安定した政策運営ができない。人口は消費や生産力の源泉だ。

財政健全化について骨太の方針は、経済発展に資する歳出への重点化と、成長志向の税体系を両輪に、経済再生と財政再建の「好循環」を目指す戦略を掲げた。

人口減対策では、幅広い分野で規制・制度の改革を進め、2020年をめどに「人口減・高齢化」の流れを変えると宣言した。

総合的に人口減対策を担う推進本部を設け、50年後も人口1億人を維持するとしている。

財政と人口という日本の構造的な問題に、正面から取り組む姿勢は高く評価できる。

とはいえ、財政改革も少子化対策も、長年の課題でありながら、府省縦割りや関係団体の抵抗で、十分な成果を上げてこなかった。肝心なのは、有効な具体策を、ためらわず実行することである。

当面の成長戦略メニューを着実に進めることも大切だ。

昨年の成長戦略は、農業分野をはじめ、強い抵抗勢力に守られた「岩盤規制」に対する踏み込み不足が指摘された。

その改訂版とも言える今年の戦略には、法人税実効税率の20%台への引き下げや農協組織改革などの追加措置を盛り込んだ。市場や経済界には、本格的な規制改革へ前進したと評価する声が多い。

各施策が、具体化の過程で官僚などに骨抜きにされないように、政治がしっかりと目を光らせることが大事だ。

政権の安定している今こそ、大胆な改革を前に進める好機と言える。首相のリーダーシップのもと、政府・与党一体となって取り組んでもらいたい。

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