足元の景気回復を図りつつ、財政再建など中長期的な課題の解決をどのように進めていくか。
安倍政権の実行力が問われよう。
政府は、経済政策の指針となる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)と、成長戦略の第2弾である新たな「日本再興戦略」を閣議決定した。
安倍首相は記者会見で「成長戦略にタブーも聖域もない」と述べ、日本経済再生に向けて改革を断行する決意を強調した。
骨太の方針は、日本経済は「もはやデフレ状況ではない」としたうえで、脱デフレを確実にするため、成長戦略をさらに加速させる考えを示した。
中長期的な成長力向上のカギを握るのは、財政の立て直しと、人口減対策だろう。
健全な財政基盤がなければ、安定した政策運営ができない。人口は消費や生産力の源泉だ。
財政健全化について骨太の方針は、経済発展に資する歳出への重点化と、成長志向の税体系を両輪に、経済再生と財政再建の「好循環」を目指す戦略を掲げた。
人口減対策では、幅広い分野で規制・制度の改革を進め、2020年をめどに「人口減・高齢化」の流れを変えると宣言した。
総合的に人口減対策を担う推進本部を設け、50年後も人口1億人を維持するとしている。
財政と人口という日本の構造的な問題に、正面から取り組む姿勢は高く評価できる。
とはいえ、財政改革も少子化対策も、長年の課題でありながら、府省縦割りや関係団体の抵抗で、十分な成果を上げてこなかった。肝心なのは、有効な具体策を、ためらわず実行することである。
当面の成長戦略メニューを着実に進めることも大切だ。
昨年の成長戦略は、農業分野をはじめ、強い抵抗勢力に守られた「岩盤規制」に対する踏み込み不足が指摘された。
その改訂版とも言える今年の戦略には、法人税実効税率の20%台への引き下げや農協組織改革などの追加措置を盛り込んだ。市場や経済界には、本格的な規制改革へ前進したと評価する声が多い。
各施策が、具体化の過程で官僚などに骨抜きにされないように、政治がしっかりと目を光らせることが大事だ。
政権の安定している今こそ、大胆な改革を前に進める好機と言える。首相のリーダーシップのもと、政府・与党一体となって取り組んでもらいたい。
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