通常国会閉幕 与野党協調を一層進化させよ

毎日新聞 2014年06月23日

通常国会閉幕 言論の府は大丈夫か

集団的自衛権行使をめぐる与党協議が大詰めを迎える中、通常国会が22日閉会した。国会のねじれ状態解消が影響し、政府が提案した法案の成立率は97.5%と極めて高い水準に達した。

野党が安倍内閣への対立軸を示せないことが自民党の「1強」状態を加速させ、国会の機能低下をもたらしている。このままでは国会閉会中に解釈改憲が実現し、既成事実化してしまうおそれすらある。言論の府の埋没を危ぶむ。

事実上の国会最終日の20日には特定秘密保護法の運用に国会が関与する「情報監視審査会」を設ける改正国会法が与党の賛成多数で成立した。一方で石原伸晃環境相の「金目」発言を批判し野党側が衆参両院に提出した不信任、問責決議案は与党の反対多数で否決されるなど与党優位が最後まで印象づけられた。

思えば今国会、1月の施政方針演説で安倍晋三首相は経済の「好循環実現」を掲げ、集団的自衛権については「(首相の)懇談会の報告を踏まえ、対応を検討」するとの言及にとどめていた。入り口と出口で国会の様相が一変するのは特定秘密保護法が成立した昨年の臨時国会と同様だ。国会で問題を正面から提起して議論を尽くすという姿勢が首相には乏しい。

責任は野党にもある。民主党は海江田万里代表の続投問題で足元が揺れる。いわゆる第三極勢は日本維新の会の分党が決まり、みんなの党は政治とカネの問題で党首が交代した。降りそそぐ火の粉を払うのでせいいっぱいだった。

昨夏の参院選惨敗後「1年で目に見える成果」を約束した海江田氏はここにきて他党党首と会談するなど「実績」演出に懸命だ。第三極勢は今度は野党再編に躍起になっている。だが、いずれもどんな政策の実現を目指して生き残りに執念を燃やしているのかが伝わってこない。

集団的自衛権行使の是非をめぐり民主党は見解を決められず、論戦は核心がぼやけた。多くの野党が安倍内閣が掲げるアベノミクスの経済路線やいわゆる「積極的平和主義」外交に具体的な論争を挑めず、対立軸を示せないことに問題の根がある。

自民、民主党などは国会改革で党首討論の原則月1回開催を次期国会から衆院で先行実施することなどで合意した。今国会唯一だった今月の討論の空疎さを思うと、論戦の質を高める効果は疑問である。

そもそも国会閉会中に憲法解釈の変更が閣議決定されかねない重大さを各党はどう受け止めているのか。言論の府として自覚があるのであれば閉会中の審議に即応できる態勢を最低限、取り続けるべきだ。

読売新聞 2014年06月23日

通常国会閉幕 与野党協調を一層進化させよ

通常国会が閉幕した。与野党の協力で成立にこぎつけた法律も少なくない。この流れを大切にしながら、国会を活性化する必要がある。

安倍内閣が今国会に提出した新規の81法案のうち、医療・介護総合推進法など79本が成立した。成立率は97%と極めて高い。

昨年7月に衆参のねじれが解消されてから初の通常国会は、一定の成果を上げたと言える。

一昨年12月の第2次安倍内閣の発足以来、閣僚が一人も交代せず、内閣が安定していることも、国会が円滑に進んだ一因だろう。

国会終盤に石原環境相が、原発事故に伴う汚染土などの中間貯蔵施設の建設を巡り、「最後は金目でしょ」と発言したのは不適切だった。石原氏が謝罪し、発言を撤回したのは当然だ。

野党は、衆参両院に石原氏の不信任決議案などを提出したが、否決された。閣僚は、国会での与党多数に慢心せず、緊張感を持って職務に努めねばならない。

議員立法では、与野党の協調が一段と進化した。

憲法改正の手続きを明確にする改正国民投票法は、与野党7党が歩み寄って超党派の合意を形成して、衆参両院の9割を超える議員が賛成した。

特定秘密保護法の運用を監視する国会の監視機関についても、与党は日本維新の会、みんなの党などと協議した。最終的に、与党提出の国会法改正案は、みんなの党も賛成し、成立した。

与党が「数の力」で押し切るのでなく、野党と協力関係を構築したことは評価できる。安倍政権は、引き続き丁寧な国会運営を心掛けることが大切である。

国会では、自民党の勢力が突出した「1強多弱」の状況が続く。民主党は海江田代表の求心力が低下し、代表選の前倒し論が出るなど、存在感を示せなかった。

維新の会は、石原、橋下両共同代表が、原発政策を巡る対立に加え、野党再編に関する意見の違いを埋められず、分裂することになった。橋下氏側と結いの党は、合流への調整を急いでいる。

自民党に対抗する勢力の結集を目指す狙いは理解できるが、政策の一致を前提とすべきだ。政策ごとに政権と協力する「責任野党」の立場も忘れてはならない。

安倍政権は今後、集団的自衛権の憲法解釈の見直しに関する議論を活発化させる考えだ。与党は、解釈変更に前向きな維新の会やみんなの党などの協力を得るよう、努めることが欠かせない。

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