限られた財源で、増大する高齢者の医療・介護ニーズに対応するため、必要な改革を着実に実行しなければならない。
医療法や介護保険法を一括して見直す医療・介護総合推進法が成立した。
高齢者が病院や施設に頼らず、在宅生活を続けられるよう、医療や介護、生活支援を一体的に提供する。そうした体制を築き、給付費を抑制するのが目的だ。
医療分野では、退院支援を重視して病院・病床の再編を図り、在宅医療を推進する。
介護保険では、収入の多い人の自己負担割合を1割から2割に引き上げる。特別養護老人ホームの入所要件も厳しくする。
全野党が、給付縮小と負担増につながる推進法に反対した。
だが、団塊の世代が75歳以上になる2025年にかけて、医療・介護の費用は膨張し、このままでは制度の維持が困難になる。給付の効率化と重点配分は不可欠だ。推進法に盛り込まれた改革は避けて通れない。
国会審議では、比較的軽度の「要支援者」向け介護保険サービスの見直しが焦点となった。
訪問・通所介護を全国一律の保険サービスから外し、市町村が独自に内容を決めて実施する方式にするものだ。ボランティアやNPOも活用し、費用抑制を図る。
現行のサービスには、掃除や洗濯、レクリエーションなど、専門職が携わる必要のないものが含まれている。財源を重度者へ重点的に振り向けるためにも、適切な見直しと言えよう。
ただ、課題も多い。
担い手の確保が難しい市町村は少なくない。サービスの地域格差の拡大や質の低下を懸念する声も根強い。高齢者が適切なサービスを受けられなければ、症状の悪化を招く恐れがある。
一部の市町村は既に、ボランティアの養成や、サービスを提供する団体の設立支援などに取り組み、実績を上げている。
政府は、先駆的なノウハウを紹介し、事業展開に関する具体的な運営指針を示すなど、市町村を支援していく必要がある。
地域住民が、ボランティアとして積極的に事業に参加すれば、新たな支え合いの仕組みも生まれるだろう。市町村は、住民主体の街作りのチャンスととらえ、工夫を重ねてもらいたい。
施設や病院に入れない人が「介護難民」とならないよう、地域ぐるみで在宅の高齢者を支えることが求められる。
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