毎日新聞 2014年06月21日
都議会ヤジ 「品位」以前の問題だ
これが首都の議会か。こうあきれた人も多いだろう。
東京都議会みんなの党会派の塩村文夏(あやか)議員(35)が本会議で一般質問の最中、議場からセクハラというべきヤジを浴びせられた。さらには、その発言者がなかなか名乗り出ないという異例事態である。
不作法だとか品位を欠くといったこと以上にこのヤジの根は深い。
近年、政治や行政が女性の社会進出、子育て支援などを力説しながら、一皮むけば、このような不見識や偏見が今もあっさりと顔をのぞかせるのではないか。意識変革の遅れを今回の問題は示唆する。
塩村議員が質問に立ったのは18日。女性の妊娠・出産をめぐる都の支援体制などを取り上げた。
塩村議員によると、ヤジは男性の声で「自分が早く結婚した方がいいんじゃないか」「まずは、自分が産めよ」「産めないのか」などと言った。声は最大会派の自民党席あたりから聞こえたという。だが、発言者の特定には至っていない。
社会各分野で指導的地位の3割以上を女性にするという目標を掲げるなど、安倍政権は女性の社会進出と活躍の機会拡大を「成長戦略」の柱にしている。そのためには、子育て支援充実など課題は多岐にわたり、男女の緊密な協力が支えとなる。
その理念や取り組むべき課題を踏まえていれば、議場で今回のようなヤジが飛ぶはずもない。驚くべき無理解というほかはない。
過去においても、政治家の問題発言はあり、例えば、2007年には当時の柳沢伯夫厚生労働相が「女性は産む機械」とたとえて、厳しい批判を受けた。
政治家らの認識も高まったはずだが、今回のような問題が起きるとむなしい。
一方、都議会(定数127)全体の対応の鈍さはどうしたことか。
ヤジが飛んだ時、議場には笑い声さえ上がったといい、たしなめたりする様子はなかったという。
問題化しても、ヤジを飛ばした当人がすぐに名乗り出ないという事態も異例なら、周辺に座っていてヤジの発声を間近に聞き、発言者を特定できるであろう議員がいない、というのも納得できない。
この悪質なヤジに議会がただちに反応し、発言者不明なら超党派で徹底調査するぐらいの即応力を発揮していれば、ここまで議会不信の傷は深くならなかったかもしれない。
みんなの党会派は、ヤジの主が自ら名乗り出ないなら、声紋分析も考えるという。そのような事態になる前に、議会自らが主体的に解明し、この苦い体験を今後に生かすべきではないか。
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