憲法が禁じる「武力行使との一体化」の制約を極力限定し、多国籍軍などに対する自衛隊の後方支援を拡充すべきだ。
政府が安全保障法制整備の与党協議会に、自衛隊が行える補給・輸送・医療支援などの新たな判断基準を示した。
「提供する物品や役務が戦闘行為に直接用いられる」「支援する場所が戦闘現場にある」など4条件をすべて満たす場合のみ、「武力行使との一体化」に相当し、禁止されると判断するという。
戦闘地域でも、食料や水の提供、医療は戦闘に直接用いられないため、可能になる。禁止の対象は、戦闘中の他国部隊への武器・弾薬の提供などに限定される。
新基準は、自衛隊が支援可能な地域や内容を大幅に拡大し、日米同盟や国際協調の強化につながると、高く評価できる。
そもそも「武力行使と一体化する行為を禁じる」という考え方は日本独自の概念だ。負傷した他国の兵士の治療は、戦力の再生産になるため憲法違反の恐れがある、という理屈が常識外れだった。
自衛隊の活動は「非戦闘地域」に限られるといった、国内でしか通用しない概念も廃止したい。
インド洋での多国籍軍艦船への給油、イラクでの人員・物資の空輸などの活動は、一体化の禁止により様々な制約を受けてきた。
公明党は、「従来の方針の大転換になる」と慎重な姿勢を示し、合意には至っていない。だが、周辺有事の際の対米軍支援を含め、充実した国際協力を可能にするため、与党は、新基準を採用する方向で意見集約すべきだろう。
国連平和維持活動(PKO)参加中の自衛隊が、離れた場所にいる他国部隊や民間人を助ける「駆けつけ警護」についても、政府は新たな考え方を示した。
日本が承認した外国政府が当該地域で権力を維持していれば、その政府以外の武装集団に自衛隊が武器を使っても、「国や国に準ずる組織」への武力行使には当たらず、問題はないとしている。
自衛隊は他国軍に守ってもらっても、他国軍は守れない。そんないびつな現状を改善する必要性は高い。安倍政権の「積極的平和主義」の具体化へ、駆けつけ警護を可能にすることが急務である。
与党は、週1回、1時間程度だった協議時間を増やすことで合意した。安全保障政策の根幹にかかわる議論を重ねることは、与党の責務だ。議論の質も高め、年末の日米防衛協力の指針改定に結論を反映させてもらいたい。
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