デフレへの転落を阻止したいという強い決意の表れだろう。
欧州中央銀行(ECB)が大胆な金融緩和策を打ち出した。
政策金利を過去最低の年0・15%とし、民間銀行がECBに預金する際に適用する金利は、0%からマイナス0・1%に下げる。主要な中央銀行でマイナス金利を採用するのは初めてだ。
マイナス金利になると、ECBに資金を預けた銀行は「手数料」のように金利を払うことになる。銀行がECBに預けている余剰資金を企業融資に回し、景気を刺激する効果が期待されている。
金利水準全体を引き下げ、ユーロ高を是正する狙いもあろう。
ECBは低利資金を最長4年、民間銀行に供給する措置なども実施する。デフレの回避へ政策を総動員する姿勢は評価できる。
欧州経済は、ギリシャなどの金融・債務危機を乗り切ったものの、停滞状態が続く。
低成長とユーロ高の影響で、ユーロ圏の消費者物価上昇率は、「2%近く」としている物価目標を大きく下回り、8か月連続で1%を切っている。
このままでは、長期にわたり円高とデフレ不況に苦しんだ日本の二の舞いになりかねない。そうした危機感が、ECBに異例の緩和策を決断させた理由だろう。
今後の焦点は、今回の政策が、期待通りの効果を上げるかどうかである。
ECBの政策金利は、すでにゼロに近く、利下げの効き目は限定的とする見方も少なくない。
マイナス金利の導入については、民間銀行の負担が増し、銀行の財務悪化による融資の抑制や、貸出金利上昇などにつながりかねないとの指摘もある。
麻生財務相は、「いい結果になるか、悪い結果になるか分からない」と述べ、影響を見極めていく考えを示した。
市場ではECBがいずれ、国債を大量に購入している日本や米国のように、本格的な量的金融緩和策に踏み切らざるを得なくなるとの観測も浮上している。
だが、18か国のユーロ圏で金融政策を担っているECBが、各国の国債をどのような比率で購入すればいいのかなど、具体化に向けた難題は少なくない。
日本経済は明るさを増し、成長の回復した米国は量的金融緩和の縮小を進めている。
世界経済の安定に向けて、欧州の成長をどう回復するか。ECBの政策運営が問われる。
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