国際社会のルール違反は容認しない。そんな明確なメッセージを発信したことは評価できる。
先進7か国(G7)がブリュッセルで首脳会議を開いた。クリミア半島を編入し、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害しているロシアを非難する首脳宣言を発表した。
ロシアは、国際法違反のクリミア編入の既成事実化や、ウクライナ東部の不安定化を図っている。G7が批判したのは当然だ。
首脳宣言は、新生ウクライナを支援する方針を表明した。ロシアに対し、ウクライナ政府との対話を促す一方、今後の対応次第では追加制裁を行う余地も残した。
この問題の解決には、G7が一致団結し、「対話と圧力」の両様の姿勢で臨むことが大切だ。
宣言は、名指しは避けながらも、中国が強引な海洋進出を進める東・南シナ海の現状に「懸念」を表明した。国際法に基づく航行・飛行の自由を確保する重要性に言及し、「力による一方的な試みに反対する」とも明記している。
安倍首相は首脳会議で、中国の海洋進出とロシアのクリミア編入を関連づけ、「世界のどこでも力を背景とする現状変更を許してはならない」と訴えた。その認識をG7が共有した意義は大きい。
中国に強権的な外交姿勢の転換を促すことは今や、国際社会の共通の課題だ。G7を中心に、関係国の足並みをそろえたい。
G7は、北朝鮮の核・ミサイル開発を強く非難した。日本人拉致問題を含む人権侵害について、北朝鮮の速やかな対応も求めた。
日本は、拉致と、核・ミサイル問題の包括的な解決を目指す方針を堅持し、国際社会との連携を強めなければならない。
今回の首脳会議は、ロシアを排除した、G7で開かれた。
G7は、東西冷戦終結後の1997年にロシアが正式参加し、主要8か国(G8)に拡大した。だが、グルジア、シリア問題などでG7とロシアの溝は徐々に広がり、プーチン大統領は近年、米国との対決姿勢を強めていた。
中国、インドなど新興国の台頭でG7の相対的な影響力は低下しているが、主要20か国・地域(G20)は、各国の自己主張が目立ち、意味のある合意が難しい。
自由や民主主義などの価値観を共有するG7の役割は依然、大きい。この先、ロシアとの対話も国際社会の安定に欠かせない。
ウクライナ情勢と中国の問題への対処が、転換期を迎えたG7の試金石となろう。
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