榊原経団連 官民一体で改革の推進を

朝日新聞 2014年06月08日

経団連と献金 「やめる」決意はどこへ

経団連の会長に就いた榊原定征氏(東レ会長)は、企業が出す政治献金に経団連が再び関与するか、検討中だという。

やめた方がいい。「政策をカネで買うのか」という批判を招くだけだ。

「政治献金では物事は動かない。国民に訴えかけないと、政策を実現できない」「丁寧に国民に説明しなければ、経団連への支持は得られない」

これは一昨年末、経団連の事務総長(当時)が、朝日新聞に語った「決意表明」だ。安倍政権の発足が確実視されていたころのことである。

安倍政権は成長戦略として企業を支援する改革案を次々に打ち出している。それを後押ししつつ、ぎくしゃくした政権との関係も改善したい。そんな思いからの「変心」だろう。

ただ、政権が掲げ、経団連も求める改革案には強い反対がある。なぜか。国民の声に耳をすませ、自らを省みてほしい。

まずは、法人税の減税だ。

消費増税が実施され、所得税も控除見直しなどで課税強化が進む。「企業は減税、個人は増税」に、割り切れない国民は少なくない。

今年の春闘ではベアを実施する大企業が目立ったが、政府から半ば「強制」されたからだった。企業全体では巨額の利益をため込んでいるのに、なぜ自主的に賃上げできないのか。

働いた時間と報酬とを切り離し、成果主義の徹底を目指す労働規制の緩和策もある。

経済界は、同時に長時間労働を防げば生産性が高まる、とプラス面を強調する。

しかし、非正規労働者を都合よく使い、正社員にサービス残業を強いてきた企業が少なくないのが実態だ。改革案が体のよい人件費抑制策と受け止められても仕方あるまい。

日本経済が成長を取り戻すには、企業が元気に活動することが不可欠だ。雇用を増やす主役もまた企業である。

働く人にもメリットがあるなら、企業活動を支援する改革に理解が広がる。企業が「国民に訴える」とは、それを実際の行動で示すことにほかならない。

経団連は非自民連立政権が誕生した93年、会員企業に献金額を割り振る「あっせん方式」の廃止を決めた。04年に「口も出すがカネも出す」として、自民・民主両党への政策評価とともに会員企業に再び献金を促し始めたが、民主党政権が誕生した翌年の10年、中止した。

政権交代のたびに右往左往してきた過去を見ても、政党にすり寄る発想は捨てた方がよい。

毎日新聞 2014年06月08日

経団連の献金 再開は時代に逆行する

経団連は政治改革を逆行させるつもりなのか。新会長に就任した榊原定征(さだゆき)東レ会長が「政治との連携強化」を打ち出し、政治献金のあっせん再開を検討すると明言した。

経団連の地盤沈下が言われて久しい。新体制は存在感を高めるために国政への影響力を強めたいのだろう。しかし、巨額の企業献金を束ねて影響力を強めれば民主的な政策決定をゆがめ、「政治とカネ」にまつわる国民の不信を増幅しかねない。献金あっせんは再開すべきでない。

経団連は1950年代から、主に自民党への献金総額を決め、会員の企業や業界団体に割り振るあっせんを行ってきた。多いときには総額100億円規模に達した。しかし93年に自民党が下野し、ゼネコン汚職などで政財界の癒着批判も高まったことからあっせん廃止を決めた。

2004年には各党に対する政策評価を始め、会員企業に献金の目安として示すことで献金への関与を再開したものの、民主党に政権が移った後の10年にはこれも中止した。

ところが自民党が参院選で圧勝した後の昨秋に政府・与党の政策評価を再開した。そして今度は、あっせんそのものの再開を視野に入れる。

安倍晋三首相はアベノミクスの一環として、労働規制の緩和や法人税の減税など大企業の利益につながる政策を検討している。あっせん再開を検討するのは、資金面から政権を支援し、そうした政策を充実させる狙いがあるからだろう。

経済成長に役立つ政策を提言することは経団連の大切な役割だ。しかし、巨額の献金で利益誘導を図るようでは国民本位であるべき政策決定をゆがめる。

企業献金はそうした危険性をはらむために廃止すべきものである。政治改革の一環として95年に導入された政党交付金は企業献金全廃を前提にした代償措置だったはずだ。そして毎年、交付金として300億円以上の税金がつぎ込まれている。あっせん再開は企業献金が大手を振ってまかり通ることにつながり、時代に逆行すると言わざるを得ない。

経団連の存在感が薄れているのはサービス産業の台頭で経団連の中心を占めてきた製造業の地位が相対的に下がっているためだ。そうした産業構造の変化に対応した組織改革こそ急務である。

もちろん、中国や韓国との関係改善のように政治と経済との協力が欠かせない課題は少なくない。米倉弘昌前会長と政権との関係がぎくしゃくしていたこともあり、榊原会長が政治との連携強化を打ち出すこと自体は理解できる。しかし、献金のあっせん再開は短絡的であり、副作用が大きすぎる。

読売新聞 2014年06月05日

榊原経団連発足 政権との関係改善進めたい

影響力の低下した経団連を立て直し、日本経済再生の先頭に立てるか。財界トップが直面する課題は大きい。

経団連の新しい会長に東レ会長の榊原定征氏が就任した。

安倍首相は経団連の定時総会で「官民一体で改革と成長の実現に取り組みたい」と、エールを送った。榊原氏も記者会見で「政治と経済は車の両輪だ」と語った。

経団連と安倍政権の関係は、米倉弘昌前会長時代に冷え込んだ。トップ交代を機に、官民が連携して成長戦略を推進する環境が整ってきたことを歓迎したい。

東レは、経団連会長を輩出してきた企業に比べれば小粒だが、榊原氏には、政府の産業競争力会議の民間議員を務め、安倍政権とのパイプを持つ強みがある。

榊原氏は早速、諸外国より高い法人税の実効税率を、3年で20%台に引き下げるべきだと主張した。日本企業の競争力を高めたいとの考えは理解できる。

ただ、「減税の果実」を企業が内部留保としてため込むばかりでは困る。成長につながる投資にどう結びつけていくか、榊原氏は具体的な道筋を示してほしい。

4月に消費税率が引き上げられたばかりで、法人税減税には「企業優遇」との批判が根強い。好業績企業の賃上げで家計の所得が増え、消費拡大が業績をさらに押し上げる「好循環経済」の実現に経団連も貢献する必要がある。

賃上げの恩恵が多くの労働者に広がるよう、経団連は企業への働きかけを強めるべきだ。

サービス産業の比重が高まり、製造業が主要メンバーの経団連は変革を迫られている。情報技術(IT)企業が中心の新経済連盟も独自に政策提言している。

経団連が幅広い企業のニーズを吸い上げ、日本経済の成長に資する政策の実現を政府に求めていくことを期待したい。

政治献金への関与から手を引いた経団連は、以前より政界に対する発言力が弱まっている。

昨年には、傘下企業が政治献金先を決める目安となる「政策評価」を4年ぶりに再開したが、与党だけを評価し、政策分野ごとに評点をつけるランク付けも見送った。企業が献金先を判断する指標としては不十分だろう。

企業がルールを守ったクリーンな献金を通じて、政治に参加する意義は依然として大きい。

企業献金のよき判断材料となるよう、経団連は政策評価の充実を図るべきだ。

産経新聞 2014年06月05日

榊原経団連 官民一体で改革の推進を

経団連の榊原定征会長による新体制がスタートした。政治と経済を「車の両輪」とし、経済再生に向けて政府との連携を強化するとの考えは妥当なものだ。

増税を乗り越えて景気回復の足取りを確かにするには、政府の成長戦略と歩調を合わせて企業が収益を高め、設備投資や賃上げにつなげる官民一体の取り組みが欠かせないからだ。

もっとも、経団連が会員企業の利益ばかり優先して政治に要求を突きつけるのでは、単なる圧力団体と変わらない。指摘されることが多い「存在感の喪失」という課題に応えるには、国のあるべき姿を展望する大きな視点も持たねばなるまい。

経済成長に必要な改革に率先して取り組む責務を果たしつつ、米倉弘昌前会長時代にぎくしゃくした安倍晋三政権との関係の改善を急いでほしい。

経済界は法人税の実効税率引き下げを強く求めている。榊原会長も平成27年度からの実現を訴え、代替財源は景気回復に伴う増収分を充てるべきだとしている。

だが、法人税改革を進める上では、特定業種を税制面で優遇する租税特別措置の見直しも避けられない。既得権益に切り込む局面も出てこよう。新規産業を育成するための規制緩和も同様だ。

特定業種にとっては痛みを伴う改革であっても、日本経済の成長に必要なら実行する。そう説得する指導力と行動力に期待したい。日本の産業構造は多岐にわたる。製造業の大企業ばかりに目を向けては改革の方向性を見失う。

政治との関係では、企業に政治献金を促す組織的関与の再開を検討している点に注目したい。

企業も社会的存在として一定の献金が認められるのは当然だが、政界で政治資金の透明化への新たな取り組みがない中、単に政党の資金繰りを助けるのでは無責任だろう。受け取る側に厳しく注文もつける総合的判断を求めたい。

もう一点、指摘しておきたいのは、経団連が最重要課題としている中国、韓国との関係改善だ。

企業にとって中韓との関係悪化は懸念材料であり、民間外交での事態打開に期待する声もある。だが、政治と離れて経済だけが良好になる保証はない。経済界の動きが利用される懸念もある。

政府と緊密な連携を図ることが不可欠である。

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