中国共産党が、民主化を求める学生らのデモを武力鎮圧した1989年の天安門事件から、4日で25年になる。
少なくとも数百人が死亡した天安門事件を、共産党は「反革命暴乱」と断じ、報道を規制しただけでなく、その後も事件の再評価を求める動きを徹底的に封じ込めてきた。
四半世紀の節目を前に、習近平政権も、犠牲者の追悼活動などへの締め付けを強めている。
5月には、事件に関する研究会に参加した弁護士ら5人を拘束した。ジャーナリストなどを摘発し、外国人記者への取材妨害も続けているのは、ゆゆしき事態だ。
インターネット上の事件に関する情報もつぶさに監視し、取り締まりを強化している。
天安門事件の話題が集会やネットで広がれば、新たな反政府運動の火種になりかねないと警戒しているのではないか。
中国は市場経済を大胆に取り入れて、急速な経済成長を実現した。「発展の果実」を国民に分け与えることで、民心の離反を防ぐ効果を期待した。
政治面では民主化運動を弾圧し、共産党独裁体制の安定を図ることを最優先してきた。
共産党は天安門事件について、学校教育などでも取り上げてこなかった。権力による「不都合な歴史」の隠蔽と言えよう。
事件後、「反日」を柱とする愛国主義の宣伝・教育を強化してきたことも、民族感情に訴え、政権の求心力を保つ狙いだろう。
だが、経済的な発展の裏で経済格差や腐敗、環境破壊など様々な問題が顕在化し、国民の不満は強まっている。ウイグル族など少数民族との対立は、激しさを増すばかりである。
習国家主席は4月の演説で、「他国の政治制度をまねることはない」と明言した。民主的な制度は不要であり、一党独裁を維持するとの意思表示と見られる。
習政権が政治改革や法治主義に背を向け続ければ、国民との対立がより先鋭化しよう。
年間約20万件とも言われる集団抗議行動の広がりは、これまでの強権的な統治手法が、限界に近づいていることを示している。
中国は最近、東・南シナ海で周辺国との対立を激化させている。国民の批判をかわすため、これまで以上に覇権的な対外姿勢を強める恐れがある。
日本政府は米国や東南アジア諸国と連携し、中国の威圧的な行動への警戒を怠ってはならない。
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