アジアにおける航行・飛行の自由や法の支配を実現するため、日本は、最大限の関与と貢献をすべきだ。安倍政権の「積極的平和主義」の重要な試金石となろう。
安倍首相が、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議で、「アジアの平和と繁栄よ永遠なれ」と題して基調講演を行った。
力や威圧に頼らない、国際法に基づく紛争の平和的解決の重要性を強調した。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の南シナ海行動宣言を拘束力のある行動規範に格上げすることも支持した。
南シナ海・パラセル(西沙)諸島の領有権を巡る中国とベトナムの対立を念頭に置いた主張だ。
中国は一方的に石油掘削を開始したばかりか、漁船の衝突によりベトナム漁船を沈没させた。
東シナ海に防空識別圏を設定したうえ、戦闘機を自衛隊機に異常接近させ、既成事実化を図ろうとする手法と同様のものだ。
中国の「力による現状変更」の試みを阻止するためには、日本は、米国やASEAN各国と緊密に連携し、中国に粘り強く自制を促すことが欠かせない。
首相は講演で、日米中など18か国が参加する東アジア首脳会議(EAS)の活性化や、EASとASEAN地域フォーラム(ARF)、アジア国防相会議との重層的な連携を検討するための常設組織の設置を提案した。
地域の安全保障の国際ルールを策定し、中国に順守を迫るため、中国を含む多国間協議の枠組みを強化する狙いは適切だろう。
今夏のARFや今秋のEASに向けて、首相提案を具体化するため、関係国との協議を重ねて理解を求める外交努力を続けたい。
東南アジア各国の海上保安能力を高めることも大切である。
首相は、インドネシア、フィリピンに続き、ベトナムにも巡視船を供与する意向を表明した。
4月に決定した防衛装備移転3原則に基づき、救難、警戒監視、輸送などを目的とする武器輸出を通じてASEAN各国との装備協力を進める考えも示した。
安全保障分野でASEANを支援し、アジアの平和に貢献することは、日本自身の平和と安全の確保に役立つ。「積極的平和主義」を具体化することが重要だ。
日本単独でなく、米国とも協力し、ASEAN支援の効果を高めることが大切だ。巡視船供与などハード面に限らず、沿岸警備隊員の研修・育成などソフト面の支援を拡充することも求められる。
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