安全保障にかかわる機密情報の保全と、国民の「知る権利」を両立させるため、国会が担う役割は極めて重い。
自民、公明両党は、特定秘密保護法の運用状況を監視する「情報監視審査会」を衆参両院に常設する国会法改正案を国会に提出した。日本維新の会、みんなの党などの賛成を得て、今国会中の成立を目指している。
衆参の情報監視審査会は、委員各8人で構成する。政府から秘密保護法の運用状況の報告・説明を受け、必要に応じて政府に秘密の提出を要求できる。秘密の指定や解除などに問題があると判断すれば、運用の改善も勧告できる。
国会の国政調査権に基づく政府の秘密保護状況の監視は、官僚による安易で恣意的な秘密の指定・解除に対する一定の抑止力になると評価できる。委員が多すぎると秘密漏洩の危険性が高まる。8人は妥当な規模だろう。
政府は「安全保障に著しい支障を及ぼす恐れがある場合」は秘密の提供を拒否できる。審査会の改善勧告には強制力がない。こうした点を問題視する向きもある。
だが、第三者への不開示を条件に他国から秘密を提供されることもある。国会への提供を拒む場合は、理由の明示が義務づけられる。三権分立の観点からも、改正案の規定はおおむね適切だ。
重要なのは、政府からの年次報告や、行政機関の長からの説明の聴取を充実させることだ。秘密指定の件数などの報告を受けるだけなら、審査会は、行政の「追認機関」に陥ってしまう。
12月に秘密保護法が施行されると、官僚が萎縮・過剰反応し、報道機関の取材に前向きに応じなくなる恐れが指摘されている。
審査会は、報道の自由の重要性も十分に踏まえて、政府の秘密保護法の運用を監視してほしい。
こうした一連の役割を果たすには、審査会の事務局職員に専門性のある人材を育成することが中長期的に欠かせない。
審査会委員も、秘密を漏らせば、刑事罰や国会の懲罰の対象となるが、国会内の発言は「院外で責任を問われない」との憲法51条の規定により刑事罰は免責される。
国会議員がこの特権を悪用してはならないのは、言うまでもない。秘密保護制度に関与する責任を自覚して行動すべきだ。
特定秘密は、一定期間後に公開され、後世の検証を受ける。国会もまた、どんな役割を果たしたかについて、将来、評価されることを忘れないでもらいたい。
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