オバマ政権1年 初心に戻り「チェンジ」を

朝日新聞 2010年01月21日

オバマ政権1年 指導力の揺らぎが心配だ

オバマ氏が米大統領に就任してちょうど1年になる。「チェンジ」へのあの熱気はどこへ行ったのか、と思いたくなるほど、冷たい逆風にさらされている。就任直後は7割近かった支持率が、最近は約50%に落ち込んでいる。

その逆風を象徴するのが、マサチューセッツ州での連邦上院補欠選挙での民主党候補の敗北だ。昨年亡くなったエドワード・ケネディ議員が47年間も維持してきた議席で、民主党の「指定席」のはずだった。昨秋のニュージャージー、バージニア両知事選の連敗に続く敗北で、ショックは大きい。

民主党は上院の安定多数を失った。共和党の議事妨害を阻止できなくなるため、成立直前までこぎつけていた医療保険改革法案の成否は分からなくなってしまった。議会対策でいっそうの妥協を迫られるのは間違いない。

逆風の原因ははっきりしている。不況の出口がいっこうに見えないことに、有権者の不満が募っているのだ。

政権発足から400万人以上が職を失った。失業率が10%台に達し、人々の生活を直撃している。膨張する財政赤字への不安も高まっている。

リーマン・ショックが引き金となった金融危機の中で発足したオバマ政権である。大胆な財政出動で破局のふちから米経済を救ったことは評価できるはずだが、痛みのさなかにいる米国民にとっては話は別なのだろう。

オバマ政権は、医療保険改革に全力をあげてきた。国民皆保険の導入は、クリントン政権も試みて、失敗した民主党の宿願だ。今回も保守派は「負担増につながる」「社会主義のよう」と猛反発し、国論を二分する対立を引き起こしている。

なぜ失業対策にもっと真剣に取り組まないのか。そんな憤りが、無党派層の支持離れの背景にあるようだ。オバマ大統領の人柄への評価は依然として高いが、その政策は不人気だ。

11月には米上下両院の中間選挙があり、政治の風圧は強まっていく。心配なのは、内政で足元が揺らぐことで外交面での指導力が弱まらないかという点だ。雇用確保を重視しようとして、保護貿易主義の誘惑に屈するようなことになっては困る。

オバマ大統領は、ブッシュ前政権の「単独行動主義」を国際協調主義に転換するとともに、「核のない世界を目指す」と核廃絶・軍縮に意欲を見せてきた。ノーベル平和賞を受賞したのも、そうした姿勢が評価されてのことだ。日本の鳩山政権も同じ方向性で協調しようとしている。

核廃絶も温暖化対策も、これからが正念場である。世界の相互依存が深まる一方で、各国とも内政に迫られてゆとりを失いつつある。初心を見失わずに、逆風をどう乗り切るか。オバマ政権に早くも試練の時だ。

毎日新聞 2010年01月21日

オバマ政権1年 初心に戻り「チェンジ」を

オバマ人気のかげりを象徴するような出来事である。ケネディ米上院議員(民主)の死去に伴う19日のマサチューセッツ州上院議員補選は、共和党候補が民主党候補を抑えて勝利した。ケネディ氏は同州で上院議員を45年以上務めていた。いわば「ケネディ王朝」のおひざ元、民主党の牙城での敗北である。

20日で就任1年のオバマ大統領への打撃というより、オバマ政権の不人気が民主党候補の足を引っ張った感もある。連邦議会上院で民主党は安定多数(60議席)を割り込み、オバマ政権が力を入れる医療保険制度改革の行方も怪しくなった。何よりも、民主党は11月の中間選挙に向けて大きな不安を抱え込んだ。

1年前、オバマ大統領は「チェンジ」を掲げて、さっそうと登場した。当時70%近かった支持率が今は40%台で低迷しているのは、多くの米国民が「期待外れ」の印象を持ったからだろう。景気・雇用の改善とともに、世界をリードする存在感が必要だ。近く行われる一般教書演説も含めて、米国や世界の人々の信用と期待の回復に努めてほしい。

01年の9・11テロ後にブッシュ前政権が始めたアフガニスタン攻撃とイラク戦争。オバマ氏はイラクからの米軍撤退に一応の道筋をつけ、アフガンについても増派と撤退計画を組み合わせた新戦略を示した。情勢は楽観できないとはいえ、前政権からの、硝煙くすぶる出口なき世界の息苦しさは、かなり緩和された。

それを思えばノーベル平和賞はあながち時期尚早ではない。「核兵器なき世界」演説や米露核軍縮交渉の進展も含めて、オバマ大統領は世界の空気を変えた。地球温暖化防止の対策でも、米国は国際協調へとカジを切った。今後の課題は、オバマ大統領が演説などで打ち上げた構想を着実に、力強く実行することだ。実行力を示せなければ、オバマ氏の人気は急速にしぼむかもしれない。

日本に限れば、普天間問題をめぐる摩擦の中でも、オバマ大統領が友好的な姿勢を保っているのは評価できる。しかし、流血の連鎖が続くイスラエルとパレスチナの中東和平に関して米国は仲介に消極的だ。核開発を続けるイランと対話するのか国連制裁を強化するのか、オバマ政権の対応は分かりにくい。北朝鮮の核をめぐる6カ国協議も前政権下で宙に浮き、再開のめどは立っていない。

世界の脅威は前政権時から、ほぼそのまま残っている。未曽有の経済危機の中、内政に力点を置いたとしても、1年前、オバマ氏に期待された「チェンジ」には、世界を平和と安定に導くことが含まれていたはずだ。政権2年目にあたり、まずは初心に立ち返ることが必要だろう。

読売新聞 2010年01月22日

オバマ就任1年 厳しさを増す変革路線の前途

就任1年を迎えたオバマ米大統領には、手痛い敗北だろう。

マサチューセッツ州で行われた米上院補欠選挙で、民主党は共和党に敗れ、上院の安定多数、60議席を割り込む結果となった。

今回の補欠選は、民主党の重鎮エドワード・ケネディ上院議員の死去に伴うものだ。兄の故ケネディ大統領以来、60年近く民主党の指定席だった上院議席の、まさかのとりこぼしだ。

敗因は、有権者の半数を占めた無党派層の支持取り付けに失敗したことにある。一番の関心事である雇用対策への批判票が、共和党に勝利をもたらした。マサチューセッツ州で30年余り続いた民主党の上院2議席独占も終わった。

失ったのは上院1議席だが、政権への打撃は極めて大きい。

米世論調査で、1年前、68%あった大統領の支持率は、50%前後にまで落ち込んでいる。オバマ離れは、共和党支持者や無党派層にとくに目立つ。

未曽有の金融危機の中で登場したオバマ政権は、7870億ドルの景気対策を打ち出し、大手金融機関への公的資金投入によって金融システムを安定させ、大恐慌への転落を防止した。

にもかかわらず、失業率は昨年10月から10%台で高止まりしたまま、新規雇用の増大につながらない閉塞(へいそく)状態が続いている。立ち直った大手金融機関が巨額のボーナス景気にわく一方、中小企業や自営業者は不満を募らせている。

実効ある雇用対策、景気浮揚策を打ち出さない限り、11月の中間選挙で民主党の大幅な議席減は避けられまい。下院の多数派維持を危ぶむ見方が早くも出ている。

オバマ大統領の変革路線の前途には、厳しさが増すばかりだ。

上院で、共和党による審議妨害演説を打ち切るために必要な60票の確保に失敗したことで、議会運営は強い逆風にさらされよう。

最重要課題と位置づけ、早期成立を目指してきた医療保険制度改革法案や地球温暖化対策法案の行く手に、黄信号がともった。

国際社会が目指す、温室効果ガス排出量削減の新たな枠組み作りへの影響も避けられない。

アフガニスタンとイラクでの戦争の行方、核開発を続ける北朝鮮とイランへの対応、ロシアとの核軍縮交渉など、外交・安全保障の重要課題は目白押しだ。

オバマ大統領には、来週、米議会で行う一般教書演説で、重要政策への明確で具体的な取り組みを示してもらいたい。

朝日新聞 2010年01月18日

日独協力 核軍縮にルネサンスを

自国に配備された米国の核兵器の撤去を求めていく。ドイツの自由民主党(FDP)党首であるベスターベレ氏は、昨年9月の総選挙でそう公約した。「核のない世界」をめざすと強調したオバマ演説を受けて、「軍縮のルネサンスを」とも訴えていた。

総選挙の結果、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と連立政権を組むことになった。連立合意の中でも、今後の北大西洋条約機構(NATO)での論議を踏まえながら、との前提つきではあるが、やはり核撤去を模索する方針が盛り込まれた。

連立政権で外相に就任したベスターベレ氏が来日した。岡田克也外相と会談し、核ゼロに向けて非核国の日独がリードしなければいけない、との認識で一致した。

日独の協力の意味は大きい。

米ロは今、第1次戦略兵器削減条約の後継条約づくりを急いでいる。両国のさらなる核削減は世界にとって重要な一歩だ。その成否は今後のNATO戦略をも大きく左右する。

NATOの中で米国の核はドイツ、ベルギー、トルコなどに配備されているとされる。まだ成立の見通しはないが、ベルギー上院には核の製造、貯蔵、移送などの禁止法案が出されている。NATOは今年中に「新戦略概念」をまとめる計画で、核配備問題をどう考え、いかにロシアと安定した関係を保っていくかが大きな焦点だ。

日独がまずすべきことは、米国や他のNATO加盟国に対し核の役割を大幅に減らすよう説得に力を入れることだ。NATOの核戦略を修正し、ロシアとの新たな関係を構築することは、将来的に英仏も含めた多国間の核軍縮への道をひらく土台にもなる。

米国は、今後約10年の核政策の基礎となる「核戦略見直し」を3月1日までにまとめる方針だ。オバマ大統領は核兵器の役割低減を重視するが、国防総省内には異論もある。オバマ演説の精神を政策に結実させるうえで、同盟国からの支持は欠かせない。

核問題では日豪も、核廃絶への提言をまとめた国際賢人会議を設置するなど、連携を強めている。北東アジアの日本、欧州のドイツ、南太平洋の豪州が、同盟国である米国に核の役割低減を歓迎する意を示せば、オバマ大統領の強い味方となる。それがNATO戦略の見直しにも反映されよう。

核兵器にできるだけ頼らない地域安定のための安全保障、軍備管理の枠組みづくりでも、日独豪が米国と緊密に連携しつつ、積極的に提案すべきだろう。北朝鮮やイランの核問題の打開策でも知恵を絞っていく必要がある。

次の10年が軍拡でなく軍縮の10年となるよう共に貢献したい。ベスターベレ外相はそう語った。政治的意思を成果につなぐ果敢な外交が求められる。

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