ウクライナ選挙 新政権は和解に全力を

朝日新聞 2014年05月27日

ウクライナ 選挙尊重し混迷打開を

国民は混乱にくじけず、民主政治を実行しようとしている。民意をしっかり受けとめ、事態の打開に結びつけるべきだ。

欧州とロシアの間で揺れ続けるウクライナで大統領選挙があり、ポロシェンコ元外相が勝利する見通しだ。

欧州連合(EU)への加盟を唱える親欧米派の政治家だ。ただし、欧米の軍事組織である北大西洋条約機構(NATO)への加盟問題は明言を避けた。

欧米一辺倒でなく、ロシアとの関係も重んじる柔軟さの表れと受け止められている。

政治的な対決でなく、現実的な解決策を探る実務肌。それがポロシェンコ氏の人物評だ。

製菓業を中心に事業を手広く営む富豪の「チョコレート王」でもある。過去に、親欧米派、親ロシア派の両政権を通じて要職をこなした実績がある。

この国は親欧米の西部と親ロシアの東部とに分裂している。なのに歴代の政権は、一方に傾斜した政策をしばしばとり、深刻な対立をもたらしてきた。

いまの混乱も同じ構図だ。EU接近策を転換した前大統領を親欧米派が打倒した。怒った親ロシア派が東部の独立へ動き、暫定政権と衝突した。

東西の争いは国の根本の成り立ちすら危うくさせかねない。国民は、バランス感覚と実務能力をそなえた政治の指導力を待ち望んでいるのだろう。

まず、東部への対応を急がねばならない。今回、有権者の1割超を占める東部ドネツク、ルガンスク両州の多くの地域は親ロシア派武装勢力による妨害で投票ができなかった。

選挙後、ドネツク州では、同勢力と暫定政権との武力衝突が激化している。東部の地方権限強化も前提にした対策を通じ、流血の拡大を防ぐべきだ。

経済の立て直しも急務だ。歴代政権の深刻な汚職と腐敗体質もあり、巨額の対外債務を抱えて破綻(はたん)の瀬戸際にある。

ロシアからは天然ガスの供給を止められる恐れもある。ウクライナ経由でロシアからのガスに頼る欧州にも重い不安をもたらしている。

早く混乱を収拾し、経済再建とエネルギー対応などへの取り組みを急いでもらいたい。

ロシアのプーチン大統領は「大統領選の結果を尊重する」と明言した。ならば、新たに生まれる政権の正統性を認め、真剣な対話を始めるべきだ。

ロシアはクリミア併合などの強硬策に出たことで、欧米から経済制裁を受けている。これ以上、対立を長引かせることは誰の利益にもならない。

毎日新聞 2014年05月27日

ウクライナ選挙 新政権は和解に全力を

ウクライナが危機収束への一歩を踏み出した。25日の大統領選挙で、実業家のポロシェンコ最高会議(国会)議員(48)が当選を確実にし、2月の政変以来の暫定政権に代わる「正統政権」を率いることになる。だが東部では親ロシア派武装集団の抵抗でなお緊張が続く。新政権は東部住民との和解を急ぎ、国家再建に全力で取り組んでほしい。

欧米が支援する暫定政権の正統性を認めてこなかったロシアのプーチン大統領も「ウクライナの人々の選択を尊重する」と表明した。親露派武装集団とは距離を置き、新政権の出方を見定める考えだろう。オバマ米大統領は選挙の有効性を認める声明を発表し、選挙妨害があった場合に発動を警告していたロシアへの追加制裁は当面見送りそうだ。

だが危機が去ったわけではない。東部のドネツク、ルガンスク両州では、独立を宣言した武装集団が州政府庁舎などの占拠を続け、選管事務局を襲撃するなど選挙を妨害した。両州の約7割の地域で選挙が実施できなかったとされ、「国民の総意」とも言い切れなかったのが実情だ。

ロシア治安機関の関与が疑われる武装集団の強硬手段を、東部住民の多くが支持しているとはいえない。だがロシアと緊密な東部の利害を顧みなかった政変への反発は根強い。新政権は東部住民の声に耳を傾け、今後の統治に反映させていく必要がある。住民を過激な武装集団から切り離し、同じ国民として取り込んでいく努力は最優先課題だ。

大統領になるポロシェンコ氏は、菓子メーカーや民間テレビ局を経営し、2月政変ではデモ隊を資金援助したとされる。かつて親欧米路線を進めてロシアと敵対したユーシェンコ政権時代に外相を務めた。今回も欧州連合(EU)への加盟を目指す方針を打ち出している。

だがかつて「オレンジ革命」で発足した親欧米政権が内部対立で自壊した失敗を繰り返してはならない。汚職が横行する古い経済構造を断ち切り、国民の信頼を得て財政を立て直す取り組みが求められる。

経済再建のためにはロシアとの関係改善も必要だ。ロシアは天然ガス代金の未納を理由に再びガス供給停止などの圧力を加えてくる可能性がある。ロシアには冷静な対応と話し合いによる解決を求めたい。無論、混乱の過程でロシアがウクライナ南部クリミア半島の一方的な編入を決めたことは認めることはできない。

今回の危機は、ウクライナが揺らげば欧州、ロシア、米国を巻き込む国際的な緊張を招くことを示した。日本も欧米など国際社会と協調してウクライナ新政権の国内和解と国家再建を支援していく必要がある。

読売新聞 2014年05月27日

ウクライナ選挙 混迷を脱却する契機としたい

新指導者の選出を、ウクライナが混迷から脱する契機としたい。国際社会には、連携して支援することが求められる。

ウクライナ大統領選は親欧州のポロシェンコ元外相が、対立候補に大差をつけて勝利する見通しとなった。

今回の大統領選は、投票がきちんと行われるかどうかが焦点だったが、東部ドネツク、ルガンスク2州では、親ロシア派武装集団によって投票が妨害された。ロシアに不法編入されたクリミア半島では投票自体が行われなかった。

だが、全体としては、選挙は平穏に実施され、投票率は60%に達した。欧州連合(EU)が、「緊張緩和と治安回復に向けた主要なステップ」とコメントするなど、国際社会も高く評価した。

選挙の正統性は保たれたと言えるのではないか。

ポロシェンコ氏は、過去の親欧州政権だけでなく親露政権でも閣僚を務めた。成功した企業家としても知られ、その実務的な手腕に国民は期待を託したのだろう。

勝利宣言の中で、ポロシェンコ氏は、国民が「欧州統合の道を選んだ」と述べ、EUとの政治、経済両面での関係深化を推進する方針を表明した。

一方、安全保障面でロシアと協議を始める意向を示し、ロシアへの外交的配慮を見せた。東部のロシア系住民の不満に対処するため地方自治拡大も図る考えだ。

選挙結果を受けて、ラブロフ露外相は記者会見で、「ロシアは、ウクライナの新しい大統領と対話の用意がある」と述べた。

しかし、ロシアがウクライナへの強硬姿勢を改めたと考えるのは早計である。プーチン露大統領は、ウクライナ国境付近に展開した露軍の撤収を命じたと述べたが、大半の部隊は残ったままだ。

ロシアの後押しを受けている東部の親露派は、空港や地方政府庁舎などを占拠し、分離独立の方針を変えていない。

国際社会は、当面、ロシアに対して制裁による圧力を維持する必要がある。

来月開かれる先進7か国(G7)首脳会議では、ウクライナ問題への対応が中心議題となろう。対露制裁強化の検討と合わせ、ウクライナ支援の継続が求められるのは、言うまでもない。

日本は、今回の大統領選を重要な節目と見て、国際選挙監視団にも参加した。菅官房長官は「新政権が誕生したら支援していきたい」と語った。日本としても積極的に役割を果たす必要がある。

産経新聞 2014年05月28日

プーチン発言 威嚇恐れず毅然と対応を

ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ情勢をめぐる日本の対露制裁が続くなら、北方領土交渉を中止するとも取れるような発言をした。

極めて遺憾である。制裁は、ウクライナ南部クリミア半島を武力でもぎ取るなどしてロシア自らが招いた。安倍晋三政権は、威嚇に屈することなく、「力による現状変更」には毅然(きぜん)と対応してもらいたい。

発言は、主要国の通信社と会見した中で行われた。氏は日本の制裁に「驚きをもって聞いた」と不快感を示し、「私たちには(領土)交渉の用意がある」としつつも、領土問題に関する「対話の中断」に言及した。

安倍首相は、「(領土問題を)次の世代に先送りしてはならない」として、この約1年で日露首脳会談を5回も重ねている。交渉への熱意は、プーチン氏から問われるまでもない。

だが、だからといってクリミアなどで手加減すべきではない。

北方領土は、先の大戦終結時に日ソ中立条約を破ってソ連軍が侵攻し、以来、不法占拠されている。クリミアも、ロシア系住民保護などの名目でソ連継承国のロシアが武力で併合した。

いずれも同じ国による領土の強奪という点で共通している。

しかも、プーチン氏は先の訪中に際し「歴史の改竄(かいざん)は許さない」と、北方領土の不法占拠を正当化する姿勢を示唆した。第二次大戦戦勝70周年の記念式典も中国と合同開催する予定という。

日本は本来なら、「クリミア返還」の先頭に立つぐらいの姿勢で臨んでしかるべきだ。

だが、ロシア企業の資産凍結へとプーチン政権締め付けを強める米国に比べ及び腰の欧州連合(EU)からも大きく後れ、露政府関係者ら約20人の査証(ビザ)発給停止にとどまっている。

菅義偉官房長官はプーチン氏の発言後も、今秋に予定される氏の来日に「何ら変更はない」と述べた。6月には欧米の制裁対象となった氏の側近、ナルイシキン下院議長の来日も決まっている。

北方領土問題の解決を追求することはもちろん、中国を牽制(けんせい)するためロシアを戦略的に引き付けておくことも重要だが、威嚇ともいえる発言を許しているようでは、いずれも実現はおぼつかない。プーチン氏来日を白紙に戻すぐらいの覚悟が必要だろう。

産経新聞 2014年05月27日

ウクライナ選挙 新政権は流血拡大を防げ

ウクライナ大統領選で親欧米の実業家、ポロシェンコ元外相が過半数を得票し、決選投票を経ずに勝利した。

実施そのものが危ぶまれてきた選挙が行われ、2月の政変以来、暫定政権下にあった同国に、ようやく正統政権が誕生する意義は小さくない。

だが東部では親ロシア勢力が抵抗を続け、南部クリミア半島はロシアに併合されたままだ。選挙翌日、同勢力がドネツク国際空港に押し入り、ウクライナ軍が空爆した。事態収拾に向けた強い意志の表れとみられるが、可能な限り平和的手段であたってもらいたい。

親露派の妨害により東部2州の3分の2で投票できず、クリミアでは選挙が見送られたものの、全土の投票率は60%に達した。

ポロシェンコ氏は政府要職を歴任し、親露政権で経済発展・貿易相を務めてもいる。氏の勝利はその政治力、調整能力への有権者の期待を物語っていよう。

氏に託される第一の課題は、東部の治安、秩序の回復だ。

東部2州では親露派がなお政府施設を占拠して抵抗の拠点にする一方、住民投票で「独立」を既成事実化しようとしている。ドネツク空港では激しい戦闘が行われたとみられるがこれ以上の流血を避けつつ、強制力と対話の硬軟両様で事態を鎮めなければならない。新政権は微妙なバランスを取ることが求められている。

その意味で注目されるのが、ロシアのプーチン大統領が「ウクライナの人々の選択を尊重する」と述べた点だ。

政変で大統領を追われたヤヌコビッチ氏に正統性ありとして暫定政権を認めてこなかったプーチン氏は新政権の誕生を機に、東部の沈静化を含む隣国関係の安定化を模索すべきだ。

破綻寸前の財政の立て直しも急務だ。日米欧などによる強力な経済支援が不可欠だろう。

忘れてはならないのがクリミアだ。ポロシェンコ氏はクリミア併合を一切認めないと明言し、オバマ米大統領も選挙実施を祝福する声明で改めてクリミア併合を不当と強調した。当然である。

主要国(G8)からロシアを除外して来月初めに開催される先進7カ国(G7)首脳会議などの国際舞台で、クリミアを旧に復するよう訴えて、ロシアに圧力をかけ続けなければならない。

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