力による一方的な現状変更を試みて国際社会に指弾されている中国とロシアの首脳同士が、緊密な連携を誇示した。
中露に圧力をかける米国への挑戦的な姿勢をアピールしたと言えるだろう。
習近平・中国国家主席とプーチン露大統領が、上海で会談した。共同声明も発表し、両国間の戦略的協力関係を新たな段階に引き上げると宣言した。
米国の「アジア重視」政策に反発する中国と、ウクライナ領のクリミア編入を巡って米国や欧州諸国、日本から制裁を受けるロシアとの思惑が一致したのだろう。他国による「内政干渉」や「一方的制裁」への反対も表明した。
会談に合わせて行われた中露海軍の合同演習開幕式にも、両氏はそろって出席した。日米同盟に対する露骨な牽制とみられる。
両氏が、歴史問題で歩調を合わせたことも懸念材料である。
共同声明は、第2次大戦後70年の来年に、「ドイツのファシズムと日本の軍国主義」に対する戦勝祝賀行事を共催することを確認し、「歴史の改ざんと戦後秩序の破壊に反対する」と強調した。
名指しされた日本政府が「日本は歴史と正面から向かい合い、平和国家を築き上げてきた」と反論したのは、当然である。東シナ海や南シナ海、ウクライナで国際秩序の「破壊」を試みているのは、中露の方ではないか。
ただ、中露接近に同床異夢の側面があることも確かだろう。ロシアは、北極海にまで触手を伸ばし始めた中国の海洋進出を警戒している。中国も、国内に少数民族の分離独立運動を抱え、ロシアのクリミア編入を支持できない。
問題なのは、首脳会談後のアジア相互協力信頼醸成措置会議の基調演説で、習氏が、新たな安全保障構想を提唱したことだ。アジア各国が対等な立場で協力を進めることを原則とするという。
「アジアの問題はアジアの人々が処理し、アジアの安全はアジアの人々が守る」とも語った。
アジアの安全保障は、米国ではなく、中国が主導するとの決意を表明したものと言える。
独善的な姿勢を強める中国と、どう向き合っていくか。
日本は、米国との同盟関係を軸に、アジア諸国が結束を強化するよう働きかける必要がある。
東アジア首脳会議や東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムなど、アジアの安全保障問題について協議する多国間の枠組みを積極的に活用すべきだ。
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