農協改革案 解体的出直しは避けられない

毎日新聞 2014年05月20日

農協改革案 「農家のため」を原点に

政府の規制改革会議が、農業協同組合(JA)グループの改革案を提言した。全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点にしたピラミッド構造を解体し、各農家が加入する地域の農協の自立を促す内容だ。

全中は強く反発している。しかし、国内農業の強化は待ったなしの課題である。それを進めるためには、農協が「農家のための協同組合」という原点に立ち返り、農家を支えていく必要がある。

全中は農協法で全国に約700ある地域農協を指導、監督する権限を与えられている。その権限に基づいて賦課金を集め、グループの方針を政策に反映させるための活動などに使ってきた。

しかし全中の方針が農業保護に偏り、結果的に農業の強化につながらなかったことは否めまい。上意下達の体制が各地の農協から創意工夫の余地を奪ってきたとの指摘もある。そこで改革案は全中主導体制を廃止し、全中をシンクタンク(調査研究機関)などに改組するよう求めた。

問題なのは全中だけではない。改革案は地域の農協を介して農産物の集荷・販売や資材の調達を担う全国農業協同組合連合会(JA全農)の株式会社化を提言した。市場原理を導入することで経営の効率化を促す一方、食品メーカーやスーパーなどとの連携、農産品輸出にも取り組みやすくする狙いがある。

多くの関連会社を抱える全農は経営効率が悪く、肥料や農薬などの資材がホームセンターより割高な場合がある。農産品の集荷でも品質にかかわらず画一的に値決めして個々の農家の努力を反映できていない。力のある大規模農家の全農離れが進んでおり、改革は避けられない。

もっとも、農協改革が全中や全農の影響力を弱めることで終わっては意味がない。目的はあくまで各地の農協の活性化だ。

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などの貿易自由化をにらみ国内農業の強化は急務だ。地域ブランドの育成や、生産(1次)・加工(2次)・販売(3次)を一貫して手がける「6次産業」化などで付加価値を高める必要があり、そのためには地域農協の創意工夫が欠かせないからだ。

安倍晋三首相も改革を指示した。政府は6月にまとめる成長戦略に反映させる考えだ。しかしJAグループや、農協を支持基盤にする自民党の反発は必至とみられる。政府の改革もJAの意識改革がなければ実効性をそがれるだろう。

農業強化のために、農産品の流通の半分近くを握る農協の役割が大きいことは間違いない。JAには組織防衛ではなく、農家のための自己改革を期待したい。

読売新聞 2014年05月20日

農協改革案 解体的出直しは避けられない

日本農業の再生へ、農業協同組合(JA)グループの大胆な改革は避けられない。

政府の規制改革会議が農業改革の原案をまとめた。農協法を改正し、全国に約700ある地域農協を指導監督する全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とした「中央会制度」を廃止することが柱である。

農作物の集荷や販売にあたる全国農業協同組合連合会(JA全農)の株式会社化も提案した。

全中は経営指導が画一的で、生産現場の創意工夫を阻んでいる、と批判されてきた。

規制改革会議が「農業振興に十分な役割を果たしていない」と問題視し、厳しい案を突きつけたのは理解できる。

地域農協の自立を促し、地元の特色を生かした独自経営を進めることで、「攻めの農業」への道が開けると見ているのだろう。

JA全農の株式会社化で、資金調達が進めやすくなり、販路拡大や流通の効率化も期待される。

改革案は、企業の農業参入を促進する規制緩和や、農地売買の許可権限を持つ農業委員会の見直しも打ち出した。

林農相が「農協は農業者の期待に応えていないという声がある。問題意識は共通している」と改革案を評価した意味は重い。

政府は、6月に策定する新たな成長戦略に大胆な農業改革を盛り込む方針だ。農業は「岩盤規制」の代表格とされる。実効性ある具体策を打ち出す必要がある。

全中は、「JAグループの解体につながり、大きな問題がある」と猛反発している。あくまで4月にまとめた自己改革案を推進したい考えとみられる。

だが、自己改革案はあまりに踏み込み不足で、JAグループの危機感の薄さは否めない。抜本改革を迫られたのは仕方あるまい。

日本農業はじり貧の状態だ。過去20年間で農業所得は半減し、耕作放棄地は倍増した。農業従事者の平均年齢は約66歳に達し、高齢化も進行している。

大詰めの環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では、農業分野の一層の市場開放が焦点だ。今、担い手農家に集中する振興策で生産性向上や競争力強化を実現しないと、再生のチャンスを逸する。

ただ、農協は強大な政治力を持つ。自民党内では農村部の選出議員を中心に、抜本的な組織見直しに対する慎重論もくすぶる。

農協や族議員の反発を抑えながら、いかに農業改革を進めるか。安倍政権の真価が問われよう。

産経新聞 2014年05月19日

「農協解体」提案 攻めの農業へは荒療治も

政府の規制改革会議の作業部会が、農業の成長産業化に向けた改革案を提示した。

最大の柱は、全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする「中央会制度」の廃止だ。

全国一律の硬直したピラミッド構造は、農業改革で最大の足かせともされてきた。地域の農協がそれぞれの実情に即した経営に取り組めるよう活性化させるには、なにより画一的な経営指導から解放することが必要だ。提言がJAグループの抜本的な組織見直しを求めたのは当然といえる。

改革案には、競争促進の観点から、農産物の販売や肥料や農薬などの購入を一括して担う全国農業協同組合連合会(JA全農)の株式会社化なども盛り込まれた。

一連の提言について、JA全中の万歳章会長は「組織の解体につながる」と強く反発している。だが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉が大詰めを迎えるなど、市場開放に向けた国際競争力の強化は待ったなしだ。「攻めの農業」の態勢づくりには荒療治も避けて通れない。改革案の基本的な方向性は妥当だろう。

農協は戦後、農家同士が経営を支え合うことを目的につくられた組織だ。それが今では農家の生産性や所得向上、営農技術の強化といった本来の役割が忘れられ、既得権益擁護の政治活動が優先されがちになっている。こうした実態は早急に改めるべきだ。

JA全中の運営は全国で約700ある農協からの「賦課金」で賄われている。農協法が根拠だが、総額は約80億円と全収入の7割近い。改革案は同法の改正も具体策として挙げている。

全国の農協が「JAバンク」の名称で展開している金融事業については、農林中央金庫などに業務を移すよう求めた。農林中金の預金量は約90兆円とメガバンク並みだ。農協本来の役割がなおざりにされてはなるまい。

自民党の伝統的支持基盤ともいえるJA組織に大なたを振るうことは、安倍晋三政権にとっても冒険だろう。だが、こうした岩盤規制を打ち破らない限り、真の農業改革は進まない。

この20年間で日本の農業所得は半減し、耕作放棄地は倍増した。農家の高齢化にも歯止めがかからない。改革を避け続けていては、崩壊のふちから日本農業を救うことはできない。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1816/