インド政権交代 信頼関係をつなげよう

朝日新聞 2014年05月18日

インド総選挙 発展の果実を草の根に

インドの政権が10年ぶりに交代する。総選挙でナレンドラ・モディ氏の率いるインド人民党が地滑り的な勝利を収めた。

投開票に大きな混乱はなく、敗れた与党国民会議派も淡々と結果を受け入れた。

有権者数は8億人を超す。世界最大の民主主義国の面目躍如である。壮大な実践に、まずは敬意を表したい。

モディ氏は西部グジャラート州の首相として、インフラ整備に剛腕を振るい、停電をなくした。日本をはじめ外資を積極誘致して州を発展させた。

その手腕を開発と経済再生に生かして欲しい。そんな願いが人民党を押し上げた。

この10年、政権を担った経済学者のマンモハン・シン首相も改革が期待された。しかし連立他党の抵抗もあって規制緩和は進まず、経済成長は減速した。政府の汚職も次々発覚した。

国民会議派は、ネール初代首相のひ孫を選挙の顔に押し立てたが、結党以来の惨敗だった。政治王朝への批判もあり、立て直しは容易ではない。

単独過半数を得たモディ氏は強い指導力が発揮できる。経済界は、大胆な規制緩和や官僚主義の打破を待ち望んでいる。

成長を軌道に乗せ、その果実を国民全体に行き渡らせて欲しい。IT大国で人工衛星も飛ばす国でありながら、国民の6割はトイレも使えない状態にある。このいびつさを解消して、富を配分しなければならない。

懸念もある。かつてヒンドゥー至上主義団体の幹部だったモディ氏は02年にグジャラート州内で起きた宗教暴動を放置し、イスラム教徒の虐殺を止めなかったと非難された。この件で、米国からは入国を拒まれた。

インドには1億数千万人のイスラム教徒が住み、周りもイスラム国が多い。無用な摩擦を避け、テロなど突発事態にも冷静に対応することが求められる。

モディ氏は外交の経験がほとんどなく、米中などとの信頼構築も今後の課題だ。

インドは、カシミールの領有権問題で対立するパキスタンともども核兵器保有国でありながら、核不拡散条約(NPT)に加盟していない。

モディ氏は選挙期間中、核兵器の先制不使用の方針を維持する考えを示したが、人民党は選挙マニフェストで「核ドクトリンの見直し」を掲げていた。

日本はそのインドとの間で、原子力協定締結に向けた協議を進めている。巨大市場に目がくらんで、急ぐことがあってはならない。モディ政権に改めてNPT加盟を説く必要がある。

毎日新聞 2014年05月18日

インド政権交代 信頼関係をつなげよう

約8億人の有権者による「世界最大規模の総選挙」がインドで行われ、10年ぶりの政権交代が確実になった。インド政界の名門ガンジー家が率いる「国民会議派」に代わり、貧困層出身の首相候補モディ氏(63)が率いる最大野党「インド人民党」が大勝し、下院545議席の過半数を握って新政権を担う見込みだ。その手腕に期待したい。

インドの総人口は約12億人で、2025年には中国を抜いて世界一になると予想されている。治安維持などのため、投票は4月7日から5月12日にかけて地域ごとに分けて行われ、16日に一斉開票された。

人民党のモディ氏は、「決断と実行の人」と呼ばれる指導力が期待されている。西部グジャラート州政府首相に就任して企業誘致を進め、「奇跡」とも呼ばれる同州の経済発展をもたらしたことへの評価は高い。

国民会議派はシン首相(81)の下でインドの経済力を押し上げたが、この2年は経済成長が停滞し、国民の間に政権交代への期待が高まっていたとされる。シン首相の引退で、ネール初代首相から数えて4代目のラフル・ガンジー氏(43)を首相候補に立てて総選挙に臨んだが、経験不足などが指摘され伸び悩んだ。

モディ氏はヒンズー教至上主義団体の出身で、グジャラート州で02年に少数派イスラム教徒ら1000人以上が死亡した「虐殺事件」を州政府首相として防げなかったことへの批判がある。このため宗教対立の激化や、イスラム教徒が多数の隣国パキスタンとの関係悪化を懸念する声もある。地元州政府での成功が中央政界で通用するかも未知数だ。貧困層の削減や汚職撲滅、テロ対策など取り組むべき課題も多い。

核政策への懸念もある。インドは米英仏露中の5カ国だけに核兵器保有を認める核拡散防止条約(NPT)は「不平等条約」だとして加盟していない。1998年を最後に核実験を凍結し、モディ氏は「核先制不使用原則」の維持を表明しているが、人民党は公約に「核政策の再検討」を盛り込んだ。日本はインドと原子力協定の締結交渉を進めているが「核実験を実施すれば協力は停止する」との原則は譲ってはならない。

日本とインドは毎年首相が往来し、昨年末に天皇、皇后両陛下が訪印するなど関係強化を進めてきた。インドに進出する日系企業も増え続けている。今年1月に安倍晋三首相が訪印しており、次はインドの新首相が訪日する番だ。経済協力、人的交流に加え、台頭する中国をにらんだ安全保障とアジアの安定という面からも、日本はシン首相時代に培った信頼関係をしっかり次期政権との間にもつなげていきたい。

読売新聞 2014年05月19日

インド政権交代 変化求める声にどう応えるか

景気減速や腐敗政治に不満を持つ有権者が変化を求めて、10年ぶりの政権交代を実現させた。

インドの下院選挙で、最大野党のインド人民党が議席の過半数を獲得し与党の国民会議派に圧勝した。

人民党のナレンドラ・モディ氏が近く首相に就任する。8億人を上回る有権者のうち、過去最高の66・4%が投票した。新政権への強い期待の表れと言えよう。

選挙戦の争点は経済政策だった。高成長率は急減速し、最近では4%台に低迷している。深刻なインフレや、激しい経済格差に不満を持つ中産階層や農村の貧困層が、経済改革を訴える人民党の支持に回ったと見られる。

モディ氏は、インフラ開発に巨額の予算を投じる大胆な経済成長戦略を公約に掲げた。

西部グジャラート州の首相として、規制緩和やインフラ整備によって、日本など外国企業を誘致し州経済の立て直しに成功したのが実績である。有権者は、モディ氏の政策手腕と構想に、インドの将来を託したのだろう。

閣僚が辞任に追い込まれるなど相次ぐ汚職の発覚が、人民党勝利の追い風になったのも確かだ。

気がかりなのは、モディ氏にヒンズー至上主義者の一面があることだ。州首相在任中に、イスラム教徒虐殺事件で適切な措置を取らなかったという批判は根強い。

インドには1億人以上のイスラム教徒がいる。宗教対立を激化させぬよう、細心の注意を払わねばなるまい。対立を招けば、隣国のイスラム国家パキスタンとの関係も悪化し、周辺地域の不安定化を誘発する。

インドは、民主主義や法の支配といった価値観を共有する日本や米国と連携を保ちつつ、主要な新興国として中国やロシアに影響力を発揮してきた。

モディ氏は3月に、国境を接する中国について、「拡張主義を改めるべきだ」と述べた。力で現状を変更しようとする中国を牽制けんせいする上でも、インドの役割は極めて重要だ。世界と地域の安定へ、積極的に取り組んでもらいたい。

日本とインドは、毎年、首脳の相互訪問を実施し、政治、経済両面で関係を緊密化している。

今年1月の安倍首相の訪印では、海上自衛隊とインド海軍の共同訓練継続など、安全保障協力で合意した。日本から原子力発電技術の輸出を可能にする原子力協定も交渉中である。

モディ氏には、今後も日印協力を深めるよう期待したい。

産経新聞 2014年05月20日

インド次期政権 改革断行で成長の回復を

インド総選挙で最大野党、インド人民党(BJP)が大勝し、同党の首相候補ナレンドラ・モディ氏が新しい首相に就任することになった。

インドは、12億の人口を抱える「世界最大の民主主義国」であり、経済面だけでなく、台頭する中国をにらんで安全保障面でも日本の重要パートナーと位置づけられる。毎年の首脳の相互訪問などで培った信頼関係を継続し、連携を一層強めていきたい。

モディ氏は西部グジャラート州首相として州経済の発展に手腕を発揮した。実績を基に、今度は国家指導者としてインド経済の改革を断行してもらいたい。

日本は2011年にインドとの経済連携協定(EPA)を発効させた。中国ビジネスの政治リスクが高まる中で、インドなど他のアジア諸国との経済関係の強化は、日本企業にとって重要だ。

だが、高度成長軌道を走ってきた新興国の代表選手、インドは最近、経済の減速傾向が顕著だ。物価高騰やインフラの整備遅れが深刻で、脆弱(ぜいじゃく)な経済基盤が指摘されてきた。行政手続きの遅滞や労働争議なども懸念材料だ。

これでは海外からの投資も十分に呼び込めまい。モディ氏はグジャラート州では道路や電力を整備して外国企業を誘致し、雇用を創出した。インドは州政府の権限が強いが、規制緩和などの投資環境整備が広がるよう、氏の指導力に期待するところが大きい。

インドは民主主義や法治といった価値観を日米などと共有する。力による現状変更を試みる中国を牽制(けんせい)するため、安全保障面での連携強化も欠かせない。

安倍晋三首相は1月に訪印し、海上自衛隊とインド海軍の共同訓練の継続など海洋安保協力の強化を確認した。モディ氏の早期訪日を実現し協力を拡大したい。

モディ氏はヒンズー至上主義集団の出身だ。02年に同州で起きたイスラム教徒約千人の虐殺を黙認したとの批判も根強い。政権のヒンズー色を強めすぎて宗教対立を激化させてはならない。

シン政権与党の国民会議派は3世代にわたり首相を輩出した「ネール・ガンジー家」の4代目、ラフル・ガンジー氏を首相候補に立てて戦ったが、議席を4分の1に減らす歴史的惨敗を喫した。会議派は、門地門閥によらない政治へ大転換を図る必要があろう。

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