ナイジェリア 少女救出へ各国で総力を

朝日新聞 2014年05月19日

ナイジェリア 放置できぬテロの温床

驚くべき蛮行だ。学校から200人を超すキリスト教徒の女生徒が武装組織にさらわれた。

この娘たちを奴隷として売り飛ばす。そう脅しつつ、収監中の仲間の釈放を求めている。

アフリカ西部のナイジェリアで4月から続くこの事件に、世界の目が注がれている。

組織の名は、ボコ・ハラム。「西洋の教育は罪」という意味だという。女性に学校教育は要らない、と唱える過激派だ。

彼らはイスラム主義を掲げているが、イスラムの教えからは程遠い。誘拐だけでなく、爆破や襲撃も繰り返してきた。

教育を受ける権利は平等であり、性別も国籍も宗教も関係ない。それは今の世界に共通する普遍の原則である。

近年の紛争介入に及び腰だった米欧も素早く反応した。救出へ国際支援が集まりつつある。一日も早い帰還を願う。

この多民族国家は長い内紛の歴史を抱えている。様々な抗争で、この15年間で2万5千人超の命が失われたとされる。

テロは、この国の社会に深く巣くった病なのである。

その背景にはアフリカの国々にありがちな構造がある。貧困と格差、そして腐敗だ。

ナイジェリアには豊かな油田がある。だが、その恩恵はキリスト教徒の多い南部の特権層が独占している。イスラム教徒が多い北部はとくに貧しい。

その反発から生まれた抵抗組織を政府は弾圧し、多数を警察が処刑してきた。それが報復の連鎖に拍車をかけた。

そんな惨状に国際社会はどれほど関心を払ってきただろう。

9・11テロ事件以来、米国がご都合主義の対テロ戦に終始した責任は重い。だが、アフリカ大陸への深い理解を欠いてきたのは、米国だけではない。

アルジェリアで昨年、日本人10人が犠牲となる痛ましい人質事件が起きた。その背景には、この地域でのイスラム過激派の台頭があった。ナイジェリアの組織も無縁ではない。

「地球最後の巨大市場」。アフリカは近年そう呼ばれ、安倍政権も中国に負けじと経済関与の拡大にかじを切る。

その戦略を描くときに、アフリカ共通の難題である腐敗と人権軽視への取り組みが、どれほど意識されているだろうか。

遠い国といえどもテロの温床を放置すれば、やがては地球規模で暴力が拡散する。それが9・11の教訓だったはずだ。

格差と貧困の撲滅に向けて、もっと貢献の道を探れないか。それこそ「地球儀外交」「積極的平和主義」の名に値しよう。

毎日新聞 2014年05月11日

ナイジェリア拉致 非難の声を広げよう

16~18歳の女子生徒200人以上が深夜、学校の宿泊施設に侵入した武装集団に拉致される事件が先月中旬、西アフリカのナイジェリアで起きた。今月5日になって、イスラム過激派「ボコ・ハラム」の指導者がビデオ声明で犯行を認め、彼女らを「奴隷として市場で売る」と宣告した。決して許されない非道な犯罪だ。

ボコ・ハラムは現地語で「西洋の教育は罪」を意味する武装集団だ。女子教育への反対など過激思想の類似性から「ナイジェリアのタリバン」とも呼ばれる。女子教育の必要性を世界に訴えてタリバンに襲われ、重傷を負ったパキスタンの少女マララ・ユスフザイさん(16)は、英BBC放送のインタビューに「黙っていたらこうしたことが次々に起こる」と国際社会に行動を呼びかけた。女子生徒の救出を求める声は、短文投稿サイト「ツイッター」などで世界中に広がっている。こうした声に応えたい。

犠牲者は女性だけではない。ボコ・ハラムは近年、キリスト教会や警察署、国連施設、市場などへの襲撃や爆弾テロを繰り返し、活動を過激化させている。今年2月には寄宿制学校を襲撃し、男子生徒約60人を殺害した。これまでの犠牲者は数千人に上るとされる。

ボコ・ハラムは2002年、ナイジェリア全土へのシャリア(イスラム法)導入を求め、イスラム教徒が多数派の北部で結成された。背景にはキリスト教徒が多数派で比較的豊かな南部との経済的な「南北格差」が指摘されている。近年はマリやソマリアなど他のアフリカのイスラム過激派集団と連携を進め、周辺国への勢力拡大も懸念されている。

ナイジェリアは豊かな石油資源を武器に経済成長を遂げた。国際通貨基金(IMF)によると、昨年の国内総生産(GDP)は5100億ドルと、アフリカでトップの経済大国になった。だがその富が国民に十分行き渡らず、政府の統治能力も弱い。今回の拉致事件でも政府の対応の遅れに国民の批判が高まっている。

各国の指導者もようやく声を上げ始めた。先週になって米国、英国、フランスが相次いで女子生徒の救出作戦への支援を表明。ナイジェリアを訪問していた中国の李克強首相も協力を申し出た。

日本は、岸田文雄外相が9日、事件を非難し、一刻も早い女子生徒の解放を求める談話を発表した。昨年9月、安倍晋三首相は国連総会で、武力紛争のもとで女性への暴力がやまない現実を指摘し、犯罪予防や被害者救済に「わが国は努力を惜しみません」と述べている。日本も国際社会と連携して非難の声を広げ、問題の解決に取り組んでいくべきだ。

読売新聞 2014年05月15日

ナイジェリア 拉致された女生徒救出を願う

事件発生から1か月経過したが、拉致された女子生徒たちの行方は不明だ。人権を踏みにじる、卑劣な犯罪である。早期の救出を願いたい。

西アフリカのナイジェリアで、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が、女子学校を襲撃して、200人を超す生徒を連れ去った。犯行声明を出し、「奴隷として売る」と脅している。

12日にボコ・ハラムが公開したビデオには、イスラム式の衣服をまとった約130人の女子生徒が映し出された。キリスト教からイスラム教に改宗させたという。

解放の条件として、獄中の仲間の釈放を求めている。ナイジェリア政府は、協議に応じる意向を示しているが、解放のめどは立っておらず、ビデオに映された場所すら分かっていない。

ナイジェリア政府による解決が難航する中、女子生徒たちの救出に向け、国際社会が連携して動き出したのは、妥当と言えよう。

米政府は、女子生徒の居場所を軍の偵察機で捜索するとともに、人質事件の専門家らを現地に向かわせた。英国も専門家チームを派遣し、フランスは、ナイジェリアと近隣国の首脳が対応を話し合う会議の開催を提案した。

拉致を非難する国際世論が日々高まっていることもうなずける。

ツイッター上では、「女の子たちを帰せ」という運動が始まった。ミシェル・オバマ米大統領夫人や、女性の教育の権利を訴えるパキスタンの少女、マララ・ユスフザイさんらが加わった。

拉致事件の背景には、深刻化する経済格差があると見られる。

ナイジェリアは、豊富な石油資源で外貨を稼いで、アフリカ有数の経済大国となった。だが、裕福になったのはキリスト教徒の多い南部で、住民の大半がイスラム教徒の北部は、貧しいままだ。

「西洋の教育は罪」という意味の名を持つボコ・ハラムは、こうした格差に付け込み、北部を中心に警察署、キリスト教会などを襲撃し、最近は、首都でも爆弾テロを起こしている。犠牲者は数千人に上っており、看過できない。

ナイジェリア政府には、治安の改善とともに、貧困問題に積極的に取り組み、テロの根源を絶つ努力が求められる。

今回の事件について、岸田外相は、「強い衝撃と憤りを覚える」と述べる一方で、地域の安定や、女性に対する暴力の防止に日本としても協力する意向を示した。成長大陸・アフリカを引き続き支援することが大事だ。

産経新聞 2014年05月11日

ナイジェリア 少女救出へ各国で総力を

耳を疑いたくなるおぞましい所業である。

アフリカ大陸西部ナイジェリアで、イスラム過激派武装勢力ボコ・ハラムが学校から女子生徒200人余を拉致し、「奴隷として売る」とのビデオ犯行声明を出した。

同国はもちろん、国際社会を挙げて、非道な「教育テロ」から少女たちを救出しなければならない。

パキスタンで女子の教育の権利を訴え武装勢力に銃撃されたマララさんも、「黙っていては事態は悪くなる一方だ」と声を上げた。女子教育が脅かされる状況をどこであれ許してはならない。

現地語で「西洋の教育は罪」を意味するボコ・ハラムは、中東やアフリカに拡散する国際テロ組織アルカーイダ系勢力の中で疎外されるほどの蛮行で知られる。

12年前の結成以来、ナイジェリア北部の貧困や南北の宗教、民族対立などを土壌に増殖し、政府、教会、学校へのテロで数千人の犠牲者を出している。今回、襲われたのも北部の学校だった。

同国は大陸最大の産油国で1億7千万と最大の人口を擁し、政府発表では今春、南アフリカを抜いて大陸一の経済大国になった。しかし、貧困層がなお7割を占め、キリスト教の南部に比べイスラム教の北部はとりわけ貧しい。

問題は、ジョナサン同国政権が腐敗にまみれ、南北格差・対立などテロの温床も含め同勢力に十分に対処してこなかったことだ。少女集団拉致でも、首都アブジャの世界経済フォーラムに6千人の厳戒要員を割きながら、約2週間も見るべき手を打たなかった。

だが、残忍な声明を機に「少女らを取り返せ」の機運が世界で高まり、ジョナサン政権も遅まきながら本腰を入れだしている。少女らの救出・解放へ向けて全力を尽くしてもらいたい。

オバマ米大統領も「あらゆることをする」と支援を表明して救出の専門家チームを送り、英国やフランスなども追随している。

ただ、ボコ・ハラムの下から自力で脱出した一部を除く大半の少女は所在不明で、国外に分散移動させられたとの懸念もある。救出作戦は時間との戦いだ。

日本も、アフリカ開発会議(TICAD)の枠組みを通じた人材育成、技術移転支援などで、過激組織を生まない環境作りを手助けできる。今回のような事態の再発防止に貢献していきたい。

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