安保改定50年 重層的深化の実上げよ

朝日新聞 2010年01月19日

安保改定50年 「同盟も、9条も」の効用

50年前のきょう、岸信介首相とアイゼンハワー大統領が出席して、米ホワイトハウスで、現在の日米安全保障条約への署名が行われた。

これがやがて、60年安保闘争として歴史に残る騒乱につながる。5カ月後には、全学連の学生らが国会に突入。樺(かんば)美智子さんが命を落とした。

戦争が終わってから、まだ15年だった。しかも、当時は米ソ両国による冷戦のまっただ中だ。アジアでは朝鮮戦争は休戦したものの、間もなくベトナム戦争が始まるなど、身近に戦争が感じられる時代だった。

朝日新聞の世論調査では、安保改定で日本が戦争に巻き込まれるおそれが強くなったとの回答が38%もあった。日本の安全を守る方法として、中立国になることを挙げた人も35%いた。

A級戦犯だった岸首相の復古的なイメージや強引な政治手法への反感も強かった。占領以来の鬱屈(うっくつ)したナショナリズムが噴出したとの見方もある。

それから50年、同盟の半世紀は日本社会にとって同盟受容の半世紀でもあった。今や朝日新聞の世論調査では、常に7割以上が日米安保を今後も維持することに賛成している。

冷戦終結後、アジア太平洋地域の安定装置として再定義された日米同盟の役割はすっかり定着した。核やミサイル開発を続ける北朝鮮の脅威や台頭する中国の存在を前に、安保体制の与える安心感は幅広く共有されているといえるだろう。

日本が基地を提供し、自衛隊と米軍が役割を分担して日本の防衛にあたる。憲法9条の下、日本の防衛力は抑制的なものにとどめ、日本が海外で武力行使することはない。在日米軍は日本の防衛だけでなく、抑止力としてアジア太平洋地域の安全に役立つ。

それが変わらぬ日米安保の骨格だ。9条とのセットがもたらす安心感こそ、日米同盟への日本国民の支持の背景にあるのではないか。

米国の軍事行動に日本はどこまで協力すべきか、おのずと限界がある。国論が二分する中でイラクに自衛隊を派遣したが、もし9条という歯止めがなかったら、その姿は復興支援とは異なるものになっていたかもしれない。

アジアの近隣諸国にも、「9条つきの日米同盟」であったがゆえに安心され、地域の安定装置として受け入れられるようになった。

アジアの姿はさらに変わっていく。日米両政府が始めた「同盟深化」の議論では、新しい協力の可能性や役割分担について、日本が主体的に提示する必要がある。米軍基地が集中する沖縄の負担軽減や密約の解明問題も避けて通れない。

しかし、「9条も安保も」という基本的な枠組みは、国際的にも有用であり続けるだろう。

毎日新聞 2010年01月19日

安保改定50年 重層的深化の実上げよ

日米安全保障条約は19日、改定署名から50周年を迎えた。日米両政府は共同声明を発表し、両国の同盟関係深化に向けた協議を開始する。

日米同盟の基盤は軍事である。その根幹となる安保条約は時代の変遷とともに役割を変化させてきた。

1951年に締結された旧安保条約は、日本を朝鮮戦争に出撃する米軍の後方基地としたが、日本は、軍事を米国に依存することで経済復興に専心することができた。

その後、米国とソ連をそれぞれの盟主とする冷戦構造が続く一方、50年代後半の中台危機やベトナム情勢の悪化など東アジアの安保環境の変化も生まれた。日本国内では「55年体制」の成立で政治が安定し、経済も高度成長期に移行する。こうした状況を受けて締結された現在の安保条約の本質は、「対ソ・対中の軍事同盟」であり、日本がベトナム戦争の米軍出撃基地にもなった。

しかし、89年の冷戦終結、91年のソ連崩壊が日米安保見直しを迫ることになった。両国政府がまとめた96年の日米安保共同宣言は、日米安保を「アジア太平洋地域安定のための公共財」と位置付けるとともに、米軍への自衛隊の後方支援を可能とする法整備も導き出した。そして、01年の9・11後の「日本の国際貢献」は、自衛隊の活動領域・内容をさらに拡大するものだった。

冷戦時代の日米安保が軍事中心であったことは間違いない。が、日米同盟の下で日本の平和と安全が確保され、繁栄の条件となったことも事実である。安保改定半世紀を機に、自由と民主主義など基本的価値を共有する米国との同盟関係を、21世紀にふさわしい「世界の平和と繁栄のための公共財」に発展させることは日本の国益に資する。今、日米関係の「トゲ」となっている普天間移設問題の解決は、その前提である。

「ポスト冷戦」の20年間で、日本をとりまく安保環境は大きく変化した。隣国・北朝鮮は核実験と弾道ミサイル発射を繰り返している。大きな脅威だ。台頭する中国は透明性を欠いたまま軍備増強を図っている。軍事を背景にした抑止力は依然として有効であり必要である。

一方、9・11以降、国際的テロリズムが新たな世界の重要な安保課題となってきた。その温床となっている貧困や民族紛争への対応が求められ、新たな貧困を生み出す地球環境悪化や飢餓なども新しい安保問題ととらえて取り組む必要が生まれている。

重要なのは「軍事」と「非軍事」をバランスよく発展させることである。鳩山政権には、米政府との協議開始にあたって、これらの両立を図った重層的な同盟深化のビジョンを示してもらいたい。

読売新聞 2010年01月19日

安保改定50年 新たな日米同盟を構築したい

岸首相とハーター国務長官が現在の日米安保条約に署名してから、19日で50年を迎える。

この半世紀の日本の平和と繁栄は、安保条約に基づく強固な日米同盟が礎となってきた。同盟関係は、安全保障はもとより、政治、経済、文化交流など幅広い分野にわたる。

日米両国は、時に、通商や防衛問題をめぐる摩擦も経験したが、基本的には良好な関係を維持し、地域の安定と自由貿易の恩恵を享受してきた、と言えよう。

昨今の世界情勢は激しく変動している。次の50年間に向けて、同盟関係を深化させ、新たな協力体制を構築することが、日本の国益にとって肝要だ。

1951年の旧安保条約を60年に改定した際の重要な変更点は、米軍の日本防衛義務の明確化にある。東西冷戦下、米国は本当に日本を守ってくれるのか、という真剣な問いかけがあったからだ。

旧ソ連崩壊と冷戦終結により欧州の安全保障環境は大きく改善したが、東アジアでは依然、様々な不安定要因が存在する。

北朝鮮の核保有宣言や中国の軍備増強、国際テロの脅威など、日本を取り巻く状況はむしろ厳しくなったと自覚する必要がある。

そんな中、昨秋の鳩山政権の発足後、米軍普天間飛行場の移設問題などで日米関係がぎくしゃくしているのは、極めて残念だ。

5月という期限にこだわらず、問題の早期解決を図るとともに、11月のオバマ大統領来日に向けた同盟深化の作業をより実質的なものにする努力が重要である。

当面の安全保障面の課題は、在日米軍再編、米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の交渉、日米地位協定の見直しなどだ。

鳩山政権の重大な欠陥は、在日米軍の負の部分ばかりに目を向けて、地元負担の軽減の追求に偏重した姿勢だ。米軍の抑止力が日本とアジアの平和に貢献してきた役割を正当に評価し、米国と共通の理解を持つことが大切である。

日米同盟は本来、経済交渉にありがちな、片方が得をすればもう一方が損をするゼロサムの関係ではなく、双方が得をするプラスサムの関係であるべきだ。

中長期的な課題には、集団的自衛権の行使を可能にするための政府の憲法解釈見直しや、自衛隊の海外派遣に関する恒久法の制定、武器使用権限の拡大がある。

日本が、こうした問題に正面から取り組み、その国力にふさわしい国際的な役割を担うことが、日米同盟の深化には欠かせない。

産経新聞 2010年01月19日

日米安保50年 普天間決着し空洞化防げ

日米両国が旧日米安全保障条約に代わる現行条約への改定に署名して以来、19日で50年になる。日米同盟関係の根幹となる記念すべき節目にその大切さを再認識し、新たな50年へ向けた同盟強化と発展をめざしたい。

問題はこの重要な年にもかかわらず、鳩山由紀夫政権の下で同盟がかつてない空洞化の危機に直面していることだ。21世紀の国際環境に適応するための在日米軍再編計画は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で迷走を続け、日米首脳間の意思疎通も図れない状態に陥った。

鳩山首相はこの現実を是正し、同盟深化協議を正しい軌道に乗せるためにも普天間問題で現行合意の履行を直ちに決断すべきだ。

日米首脳は1960年1月、旧条約になかった米国の「対日防衛義務」や事前協議を含む相互協議制を盛り込み、より対等で公正な同盟関係をめざす現行条約への改定に署名した。6月には発効50周年を迎える。

1951年に結ばれた旧条約と合わせて、新・旧安保条約は日米同盟体制の基盤を提供してきた。この1年は日本の安全や同盟の歴史だけでなく、日米関係の今後にとっても重要な意味を持つ。

この半世紀間、日米両国は冷戦崩壊や湾岸戦争、米中枢同時テロ、核拡散など世界の激動に対応し、アジア太平洋の平和と安定に不可欠な役割を果たし、日本の安全を着実なものとしてきた。

北朝鮮の核開発、中国の軍事的台頭など、今世紀に入っても同盟の重要性と意義はますます深まっているといっていい。

にもかかわらず、普天間問題の迷走に加えて、鳩山政権は国際社会のテロとの戦いで重要な意義のあった海上自衛隊によるインド洋補給支援活動も15日に打ち切り、米国やパキスタンなどの失望を招いた。中国との距離など日米中の戦略的関係についても、米国は対日不信を募らせている。

先の日米外相会談で形だけの同盟深化協議の着手に合意したものの、日本の国際貢献のあり方や日米共同の抑止力強化など実質的論議にいつになったら入れるのか。すべてが不透明な状態だ。

日米同盟の現状には、台湾や東南アジア諸国からも懸念が出ているという。鳩山首相は同盟関係をこれ以上空洞化させることがないように、何よりも普天間問題で決断を下すことが必要だ。

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