STAP問題 理研は不正の再発を防げるか

毎日新聞 2014年05月10日

STAP調査 これで幕引きは早い

このままでは、一般の人はもちろん、科学者たちの納得も得られないのではないだろうか。理化学研究所の調査委員会は、STAP細胞論文について再調査はしないと結論付けた。今後、小保方晴子氏らの処分を検討するという。

問題は、理研が限られた項目の調査に終始し、これに法律的な解釈をあてはめ、幕を引こうとしているように映る点だ。残された疑問点は多く、それを解明しなければ理研への信頼は回復できない。科学者への信頼や期待が損なわれる恐れもある。

理研が公表した小保方氏らの不服申し立てに対する審査結果は、具体性を増した。新たに追加された別の論文誌への投稿の情報などを考え合わせ、小保方氏が画像の切り張りと流用について問題を認識していたはず、との指摘はうなずける。小保方氏側に科学論文に対する誠実さが欠けていたことは確かだろう。

しかし今もって、本当に起きたことは何なのか、なぜこういうことが起きたのか、真相は解明されていない。調査結果に納得感が得られないのは、このためだ。

調査委が不正認定した項目以外にも論文への疑問はくすぶっている。理研は、不信感を払拭(ふっしょく)するためにも、すべての画像やグラフ、データについて調査し、公表する必要があるはずだ。論文に関係のある細胞やマウス、組織の切片など、既存試料をリストアップし分析する作業も早急に進めるべきだ。その際に第三者の独立した視点を入れるのは当然のことだ。

疑問の徹底解明や公表に消極的な姿勢は、これ以上の問題が明らかになるのを恐れているからではないか、との臆測も招く。実験ノートに不備があり、試料などの由来をたどるのが難しいケースは当然予想されるが、そのことも含めて公表することが、信頼回復につながるはずだ。

そもそも、理研には、小保方氏らの「発見」を組織のために利用したいとの思惑もあったはずだ。理研として実施した大々的な広報からも、その一端がうかがえる。背景には、科学と経済を短絡的に結びつける国の政策の問題もあるだろう。

そうであればなおさら、小保方氏一人を断罪するようなやり方で幕を引いてはならない。腰を据えて実際に起きたことの解明を進め、問題点を明らかにするのが理研の責任ではないだろうか。外部有識者で作る改革委員会が対策を打ち出すためにもそれが重要だ。

それにしても、調査委と小保方氏側のやりとりが法的争いの様相を呈し、科学論争と思えなくなっていることが残念だ。科学者集団である理研は、科学者らしい論理と誠実さで、この問題に対処してほしい。

読売新聞 2014年05月09日

STAP問題 理研は不正の再発を防げるか

理化学研究所が、STAP論文の再調査は「不要」と結論づけた。

科学的な論文としての体を成していないと認定した以上、当然の判断と言えるだろう。

理研は4月、STAP論文の画像に捏造ねつぞう、改ざんがあったとの報告書をまとめた。これに対し、主著者の小保方晴子ユニットリーダーが、再調査を求め、不服申し立てをしていた。

小保方氏は、「真正の画像がある。論文には取り違えて掲載した」と主張したが、今回、理研の調査委員会は、示された画像の実験条件や撮影日などを確認できなかったという。

画像の縮尺変更も行われていた。研究不正の典型例であり、調査委が「正確な情報が失われた」と指摘したのは、もっともだ。

調査委は「悪意があったことは明らかだ」と小保方氏を批判した。理研も調査委の見解を承認し、論文の撤回を勧告した。

「悪意はなく、不正には当たらない」という小保方氏のこれまでの反論に対しても、理研は、「悪意」は「故意」と同じ意味であると定義し、改めて、論文には不正があったと断じた。

画像を見やすくするために加工したという小保方氏の主張そのものが、故意に基づく行為を認めているというわけだ。

小保方氏は、今回の理研の結論に反発しているが、根幹が否定されたことを考えれば、論文を撤回せざるを得まい。

論文の不正が確定したことで、理研は、小保方氏や共著者の処分を検討する。しかし、処分によりSTAP問題が幕引きとなるわけではない。小保方氏を重用し、成果を大々的にアピールした理研の責任は重大である。

理研は、不正が起きた背景にまで踏み込んで調査し、再発防止を図らねばならない。

STAP細胞が存在するかどうかという肝心の点も、未解明のままだ。理研は1年がかりで検証実験を進めている。真偽に決着をつけるのは、日本を代表する研究機関としての責務である。

今回の問題を通して、理研の信頼は失墜した。調査委のメンバーにさえ、画像加工の疑いが浮上した。お粗末と言うほかない。

理研の野依良治理事長は、所属研究者約3000人の過去の論文について、不正の有無を自主点検するよう指示した。

膨大な作業が予想されるが、信頼回復のため、研究者一人一人が真摯しんしに取り組んでもらいたい。

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