ウクライナ 混迷を長引かせるな

朝日新聞 2014年05月02日

ウクライナ 混迷を長引かせるな

ウクライナの混迷が止まらない。いまや本格的な軍事紛争の恐れも漂い始めている。

同国東部で親ロシア派勢力は地方政府や治安機関の施設占拠をさらに拡大している。重武装した一部が欧州安保協力機構の監視員らを人質にとるなど、行動も過激化する一方だ。

米国とロシア、欧州連合(EU)、ウクライナは、事態の打開をめざす行動について、先月に合意したばかりだった。だが、それは果たされないまま早くも崩壊した形だ。

その責任の多くは、ロシアにあるといわざるをえない。分離独立やロシア併合を求めて占拠している勢力に対し、ほとんど何の説得もしなかった。

「ロシア情報機関」の関与も疑われている。米国、EU、日本がロシアへの追加制裁に踏み切ったのは当然だ。

ロシアは、占拠をやめさせ、武装を解くよう影響力を行使すべきだ。ロシア自身も、ウクライナとの国境付近に展開している軍の大規模部隊をただちに引き揚げねばならない。

ロシア国防相は「侵略するつもりはない」としている。だが、クリミア半島でもそうした意向を繰り返したあげく、結局は併合したのだ。軍部隊の確実な撤収行動がないまま言葉だけを信用することはできない。

ウクライナ暫定政権は冷静な対応が求められる。合意の後、「反テロ作戦」を始めたが、東部の治安機関の多くが従わず、成果はあがらずにいる。

事態の収拾を武力だけで図ろうとすれば、逆効果を招く。暫定政権は自治権の拡大などへ向け、住民との対話を辛抱強く進めるべきだろう。

今月は政治的な日程が迫っている。親ロシア勢力は11日に東部の分離独立の是非などを問う住民投票をするといい、暫定政権は25日に大統領選挙を予定している。

激しく対立し合うままなら、大規模な衝突の事態が現実味を帯びる。国際社会は対応を急がねばならない。

ロシアは自国単独で一方的に平和維持部隊を導入する可能性を示している。だが、そうした行動は国際法上の根拠も明確でなく、むしろ事態を複雑にするだけだろう。

長期的な安定をめざすには、米、EU、ロシア、ウクライナの4者が合意し、国連安全保障理事会の承認を得た平和維持部隊を展開する方向が望ましい。

このまま危うい情勢を長引かせてはならない。4者は何度でも合意を作り直す覚悟で粘り強く交渉を続けねばならない。

読売新聞 2014年05月05日

ウクライナ混迷 国際合意に背を向けるロシア

ウクライナの混乱に拍車がかかっている。違法活動を続ける親ロシア派武装集団を制止しないロシアに非難が集まるのもやむを得まい。

ロシア系住民の多いウクライナ東部で、親露派武装集団による、地方政府庁舎や警察署の不法占拠が拡大している。

強制排除しようとした暫定政権の部隊と親露派との間の戦闘で、死傷者が出ている。親露派と暫定政府支持派の衝突は、南部でも激化し、多数が死亡した。極めて懸念される事態である。

米国、ロシア、ウクライナ暫定政府、欧州連合(EU)の4者は4月17日、ジュネーブで、不法な武装集団の武装解除や、不法占拠した建物の明け渡しなどを求めることで合意した。

しかし、2週間以上が過ぎても、状況は悪化するばかりだ。

先進7か国(G7)首脳は、ロシアが親露派に合意の履行を働きかけていないと批判して、ロシアへの制裁の強化に踏み切った。

ロシアが親露派に武装解除や明け渡しを迫っていないのは、事実だ。制裁強化は当然だろう。

米国は、ロシアの特殊部隊などが、東部の不安定化に積極的関与を続けているとも非難している。ロシアへの編入前のクリミア半島で、露軍兵士が親露派と共に行動したのを想起させる動きだ。

ロシアは、関与を否定し、暫定政府こそ反露的な極右集団の武装解除をすべきだと反論している。露軍は依然、ウクライナとの国境近くに大規模に展開中だ。

このままでは展望は開けまい。国際社会は、制裁に加えて、暫定政府の支援や関係国間の協議を通じ、事態打開を模索すべきだ。

今後の焦点は、今月25日のウクライナ大統領選だ。暫定政府は、自治の拡大を求めるロシア系住民に配慮し、分権化を問う投票も検討している。本格政権が選出されれば、危機の解決に向けた政治プロセスの始まりともなろう。

だが、東部の親露派は大統領選を認めない姿勢を示し、ウクライナからの分離の是非を問う独自の「住民投票」も計画している。

国際社会は、大統領選が東部でも実施されるように、暫定政府を後押しすることが求められる。

オバマ米大統領とメルケル独首相が会談し、ロシアが大統領選を妨害するなら、一層の追加的制裁を行う方針で合意したのも、そうした狙いからだろう。

安倍首相は、選挙監視団に要員を派遣すると表明した。日本も危機収拾のために貢献したい。

産経新聞 2014年05月04日

ウクライナ危機 G7は圧力強め沈静化を  

ウクライナ軍が、東部で行政施設を占拠する親ロシア勢力への制圧作戦を行って双方に死傷者が発生し、東部情勢が一段と緊迫化している。

プーチン露政権は米、露、欧州連合(EU)、ウクライナの4者による緊張緩和合意に違反するものだとし、合意履行への「最後の望み」を絶った、とウクライナ暫定政権を非難した。詭弁(きべん)というほかない。

分離独立を叫ぶ親露勢力は、東部各地で武力も用いて施設の不法占拠を拡大している。

こうした無法・無秩序状態を収めるのは政権の責務であり、作戦遂行も抑制的だといえる。南部オデッサでも政権派と親露派の衝突に伴う火災で40人余が死亡し、治安と秩序の回復は急務だ。

この事態を招いた大方の非はロシアにある。後ろ盾として最大の影響力を振るえる親露勢力に合意履行を迫るどころか、露メディアで彼らをあおっている。兵力4万をウクライナ国境地帯に展開し、暫定政権に脅しをかけている。

先進7カ国(G7)が対露制裁を追加発動したのは当然だ。ロシアが態度を改めるまで、強い圧力をかけ続けなければならない。

オバマ米政権は露国営石油会社ロスネフチ社長、セチン氏らプーチン氏側近の企業幹部らを資産凍結の対象に追加した。

EUは追加制裁の対象を政権幹部に限っており、なお及び腰だ。オバマ政権がエネルギー、軍需、金融など幅広い分野で強力な経済制裁に踏み込まないのは、EUと足並みをそろえて対露圧力をかけたいという判断があるからだ。

欧州は、天然ガスの3割をロシアに頼り、対露貿易も米国の10倍超に上るという事情がある。だが、ウクライナ問題には、経済的利益を超えて、他国の主権と領土を侵すべからずという世界の安定の大原則がかかっていることを、欧州は認識してほしい。

露政府関係者らへの査証発給停止でお付き合いした形の日本も、同様である。訪欧中の安倍晋三首相はドイツのメルケル首相とロシアとの対話継続が重要だとの認識で一致した。

首相には、プーチン氏との信頼関係をてこに北方領土交渉を進める思惑もあろうが、制裁強化を躊躇(ちゅうちょ)してはならない。

25日のウクライナ大統領選も全土での実施が危ぶまれている。G7は全面支援すべきだ。

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