ダンス営業規制 実態に即した法改正が必要だ

朝日新聞 2014年04月29日

ダンスの自由 法律でしばれるのか

営業として客がダンスを踊れるようにしているなら、規制の対象とする。こんな時代遅れを残す現在の風俗営業法は、抜本的に見直した方がいい。

警察は近年、公安委員会の許可を得ずに客を踊らせていたクラブを次々に摘発してきた。騒音や暴力などで近隣からの苦情が続出したことが背景にある。

だが大阪地裁は、無許可営業していたとして、風営法違反の罪に問われた大阪のクラブの元経営者に無罪を言い渡した。

判決は、風営法の規制目的は性風俗にかかわる問題の防止にあり、騒音や暴力、薬物への懸念ではない、と明示した。風営法をたてにクラブに幅広い網をかけようとした捜査のあり方は反省を迫られる。

1948年に制定された風営法がダンスを規制の指標にしたのは、戦前のダンスホールが売春の温床にもなった時代背景があったとされる。

裁判で検察側は「男女の享楽的な雰囲気を過度にかもし出す」かどうかが、違法と判断する基準だ、と主張した。

ただこの裁判のケースでは、男女の客は触れ合ってもいなかったのに、大阪府警は摘発に踏み切った。結局のところ、違法の線引きは捜査側の裁量に委ねられ、あまりに判断基準があいまい過ぎる。

「どんな行為が犯罪かは明確でなければならない」という罪刑法定主義の考えにはとてもそぐわない。

ダンスは身体の動きが表現の手段である。言うまでもなく、憲法が保障した表現の自由を最大限に享受すべきである。判決は風営法の規制自体は合憲としたが、自由への制約は、できる限り小さくすべきであろう。

ヒップホップ、レゲエ、サルサ……。世界各地のさまざまなダンスを若者が楽しむ。男女が触れ合うペアダンスも、高齢者に人気を集める時代だ。ダンスを、風俗を乱す指標とみる考え方に、もはや合理性はない。

一連の摘発をきっかけに、文化人らの呼びかけで風営法改正を求める運動が高まった。超党派の国会議員連盟も今国会に改正案を出す構えだ。判決を機に、議論を加速させたい。

むろん、自由に踊れる環境をつくるには、周囲の理解が欠かせない。この点への気配りをおろそかにしたクラブもあったことが、近隣住民が不安を強めた要因である。

暴力や薬物などの犯罪の排除に進んで乗り出す。業界は自由を享受する一方で、自主、自律で努力を重ね、信頼を広げていく責任もある。

毎日新聞 2014年04月28日

ダンス営業で無罪 一律規制は時代遅れだ

若者らがダンスを楽しむ「クラブ」が性風俗を乱す風俗営業に当たるかどうかが争われた刑事裁判で、大阪地裁は、無許可営業をしたとして風俗営業法違反の罪に問われた元経営者に無罪を言い渡した。

客にダンスをさせ、飲食させる営業は公安委員会の許可が必要だが、判決は「性風俗を乱す恐れが実質的に認められる営業」と規制対象を限定し、客の踊り方や密集度、雰囲気などから総合的に判断すべきだという基準も示した。元経営者のクラブについては、客同士が触れ合って踊っておらず、わいせつ行為をあおる演出もなく、風営法が規制するダンス営業と認めなかった。

戦後間もない1948年に制定された旧風営法がダンス営業を規制した目的は、ダンスホールでの売春防止だった。当時の道徳観念を反映した規定は、現在のクラブのような営業形態を想定したものではない。いかがわしい営業とみなして一律に規制するのは時代遅れだ。

クラブは90年代から全国に広がり、DJ(ディスクジョッキー)やミュージシャンが流す曲に合わせて客が踊りを楽しむ。芸術表現を発信する文化の拠点とされ、経営者や音楽家らは、規制対象から外すよう求める署名活動をした。

一方、警察は犯罪の温床とみて無許可営業のクラブを摘発してきた。一昨年には東京都港区のクラブで男性客が集団に襲われ死亡する事件が起きた。騒音や酔った客の迷惑行為に対する周辺住民の苦情も多い。

判決は「重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置」として規制自体は合憲と判断し、「表現の自由を侵害する憲法違反の規定」という元経営者側の主張を退けた。悪質な店があれば、警察はきめ細かな対応で取り締まってもらいたい。

ダンスが健全な文化として社会に受け入れられるには、地元住民の理解を得ることが必要だ。暴力や薬物取引を排除し、営業の適正化を図る努力がクラブ側に求められる。

クラブの相次ぐ摘発は、社交ダンスにも影響を与えている。公民館での高齢者向け講座が自治体から中止を要請されたり、参加費を集めた発表会の施設利用を自治体が認めなかったりした。風俗営業に当たる恐れがあるという理由だが、風営法のダンスの定義や許可基準が明確でないことが混乱を招いている。

ダンスそのものは風俗や環境を乱すものではない。仲間とのコミュニケーションを深めようと中学校の必修科目にもなった。超党派の国会議員はクラブ営業やダンス教室に対する風営法の規制を緩和する改正法案を今国会に提出する予定だ。規制は時代に応じたものが望まれる。

読売新聞 2014年04月28日

ダンス営業規制 実態に即した法改正が必要だ

風俗営業法でダンス教室まで規制するのは、的外れと言われても仕方あるまい。実態に即した法改正が必要である。

若者らがダンスを楽しむ「クラブ」を無許可営業したとして、風営法違反に問われた元経営者に、大阪地裁が無罪を言い渡した。「風営法が規制する享楽的なダンスをさせたとは言えない」との判断からだ。

一方、弁護側の「風営法は営業の自由を侵害しており、憲法違反だ」という主張に対して、判決は「規制は公共の利益のために必要で、合憲」と結論づけた。

性風俗の乱れを取り締まる合理性は認めながら、クラブなどの個別の状況に応じて事実認定したのは、適切と言えよう。

風営法の規定で時代にそぐわないのは、ダンスに関するあらゆる営業を「風俗営業」と位置づけ、一律に規制している点だ。

風営法にダンスの営業規制が盛り込まれたのは、戦後間もない1948年の制定時に遡る。当時、ダンスホールが売春の温床となっていたことが背景にある。

客に飲食を提供しないダンスホールやダンス教室を含め、営業には、原則として公安委員会の許可が必要だ。住宅地や学校、病院などの近くでは開業できない。営業時間は原則午前0時までで、18歳未満の立ち入りは禁止される。

ダンスをスポーツや芸術活動として楽しむ人が増えている。高齢者を中心に社交ダンスも流行している。こうした現状を考えれば、ダンスホールやダンス教室への規制は撤廃すべきではないか。

その一方、クラブに対しては、一定の規制を残すべきだろう。大音響で音楽を流すため、騒音や振動の苦情が多い。薬物売買や暴力事件なども発生している。

超党派の国会議員約60人で作る「ダンス文化推進議員連盟」は、風営法改正案を今国会に提出することを目指している。

ダンスホール、ダンス教室の規制は撤廃し、クラブについては、立地規制を維持しつつ、許可を受ければ営業時間を延長できるとする案が有力とされている。

営業の終了時間が早いと客が集まらないとして、あえて無許可営業を続けているクラブは少なくない。改正案は、現実的な対策として検討に値するのではないか。

政府の規制改革会議の部会では、2020年の東京五輪を前に、クラブを観光資源として活用すべきだといった意見も出た。

重要なのは、ダンスを健全に楽しむための環境作りである。

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