海上行動規範 中国に「国際常識」順守を迫れ

読売新聞 2014年04月24日

海上行動規範 中国に「国際常識」順守を迫れ

中国軍に危険な示威行動の自制を促し、不慮の海上事故や衝突を防ぐうえで、重要な合意だ。

日米中など21か国の海軍幹部らが参加し、中国で開かれている西太平洋海軍シンポジウムで、他国艦船への火器管制レーダー照射などの危険行為を禁じる行動規範が採択された。

規範は、各国海軍の艦船や航空機が洋上で遭遇した場合の無線通信や安全確保の手順を定めた。ミサイルなどを他国艦船に向けたり、他国艦船近くで模擬攻撃をしたりするなど5項目の「回避すべき行動」も明記している。

法的拘束力はなく、中国以外の海軍にとっては極めて常識的な内容だが、中国を含む多国間の枠組みで、安全確保のための国際ルールを明文化した意義は大きい。

中国海軍は昨年1月、海上自衛隊の艦船に火器管制レーダーを照射した。南シナ海でも、フィリピン、ベトナムなどへの挑発行為を繰り返している。一歩間違えば、事故や衝突に発展しかねない。

中国海軍は従来、海上での行動規範によって、自らの活動が制約されることに慎重だった。しかし、議長国として規範をまとめた以上、その内容を各部隊に徹底させ、太平洋地域の航行の安全確保に協力する責任がある。

重要なのは、各国が今回の規範を足がかりとして、事故回避のルールを着実に拡大することだ。

日中の防衛当局は2012年6月、制服組幹部間のホットライン設置などの「海上連絡メカニズム」の構築で大筋合意した。だが、中国側が同年9月の日本の尖閣諸島国有化に反発し、協議を停滞させて、正式合意に至っていない。

海上連絡メカニズムの構築は、中国にとっても利益となる。中国側は依然としてかたくなな姿勢を続けているが、日本は粘り強く交渉し、早期の合意を目指したい。

南シナ海では、東南アジア諸国連合(ASEAN)が、紛争の平和的解決をうたった中国との行動宣言について、拘束力のある行動規範への格上げを目指している。これに対し、中国は消極的だ。

日本は、米国などと連携し、ASEANを後押しすべきだ。

中国はシンポジウムに合わせた国際観艦式を計画し、海自だけに招待状を送らなかった。これに反発した米軍が艦船派遣の見送りを決定し、観艦式は中止された。

海自と米海軍の長年培ってきた信頼関係が中国の「日本外し」を頓挫させた。日本を一方的に敵視する中国の姿勢は、国際社会の中国異質論を加速させるだろう。

産経新聞 2014年04月27日

海上衝突回避 中国の規範順守が必要だ

各国の海軍艦艇、航空機が洋上で遭遇した際の危険行為を禁じる「海上衝突回避規範」(CUES)に、アジア太平洋の海軍当局が合意した。

法的拘束力はないとはいえ、紛争の引き金となりかねない偶発的な衝突を避ける効果が期待できる。歓迎したい。

日米中、東南アジア諸国など21カ国の海軍トップらが中国・青島に集った西太平洋海軍シンポジウムで採択され、日本からは河野克俊海幕長が参加した。

この規範はいずれも、日米をはじめとする大方の国ではすでに実行されている内容だ。危険性の除去は、多分に中国がこの国際ルールを尊重するか否かにかかっているといえる。中国海軍には規範の履行徹底を求めたい。

規範は海軍艦艇、航空機が対象だ。射撃管制用レーダーの照射を禁止するとともに砲、ミサイル、魚雷を相手に向けないよう求め、挑発的飛行も戒めている。

近年、激しい海洋進出攻勢をかけている中国海軍は、海上自衛隊や米海軍が国際的慣行の警戒監視活動に当たることに対しても、危険な妨害行動に出ている。

2013年1月に、尖閣諸島北方百数十キロの東シナ海で、中国フリゲート艦が、約3キロ離れて警戒監視中だった海自護衛艦「ゆうだち」に対し、射撃管制用レーダーを照射した。

反撃されても仕方がないほど危険極まりない行為である。だが、中国政府は射撃管制用レーダーの照射は「日本の捏造(ねつぞう)だ」と、日本側の抗議をはねつけている。

同年12月には、南シナ海で米イージス巡洋艦「カウペンス」が、中国空母「遼寧」の訓練情報を収集中、中国艦艇に約460メートルの至近距離まで急接近されて進路を妨げられ、衝突寸前になった。

12年の同シンポジウムでは難色を示していた中国が今回、賛成したことで規範は成立した。自らをルールで律するかどうか各国が注視していることを、中国海軍には銘記してもらいたい。

課題は他にもある。中国空軍や沿岸警備隊に当たる「中国海警」は対象外という点だ。尖閣周辺で海警船の日本領海侵入が常態化していることを踏まえれば、類似の衝突回避策が必要だろう。

日本は日中防衛当局間でホットラインを設ける「海上連絡メカニズム」の構築も呼びかけている。中国は早急に応じるべきだ。

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