参院選挙制度改革 進まぬ衆院と違う姿を

毎日新聞 2014年04月23日

参院選挙制度改革 進まぬ衆院と違う姿を

衆院と同様、「1票の格差」問題を抱える参院の選挙制度をどう改革するか。与野党でつくる参院選挙制度協議会の脇雅史座長(参院自民党幹事長)が近く、隣接している有権者が少ない選挙区同士を一つにし、削減分を都市部に回すなどを柱とする座長案を示す見通しとなった。

合区案はかねて有力案の一つとされてきた。だが「鳥取・島根」など対象となる選挙区議員の反発は確実だ。政党は毎回、2県のうち人口の多い県の候補者を擁立する可能性があり、候補者を出せない県では有権者の不満も出そうだ。このため早くも合意は困難との見方が出ている。

ただし与野党の協議が決裂して現状が放置されたり、一時しのぎの策で終わったりするのは最悪だ。座長案提示を機に与野党は具体案を出し合い、必ず合意を目指すという約束の下、協議を急いでもらいたい。

参院の「1票の格差」も深刻だ。最大5倍になった2010年の参院選について最高裁は「違憲状態」の判決を下し、都道府県単位の今の制度の見直しを求めた。しかし参院の是正策は選挙区定数を「4増4減」する措置にとどまり、昨夏の参院選も格差は最大4.77倍だった。この選挙に対しても各地の高裁で「違憲」や「違憲状態」とする判決が相次いでいる。抜本策は待ったなしだ。

確かに選挙制度には一長一短がある。各党の利害もからむ。脇座長の足元の自民党でさえ、合区の対象となる選挙区の議員が多いだけにまとまる保証はない。一方、社民党は選挙区を全国11のブロックに変更し、定員を各ブロックの人口に応じて配分する独自案をまとめた。これも一案だ。結果的に衆院と似通ってしまった今の選挙区と比例代表の組み合わせにこだわることはない。2年後の次期参院選に間に合わせるため、他の案も含めて各党で早急に検討を進めてほしい。

その際、党利党略を排するのはもちろん、大事なのは参院の役割とは何か、原点に立ち返る議論だ。

毎日新聞は以前から参院を「分権の府」と明確に位置づけ、地方代表の性格を強めていくのが一つの選択肢だと主張してきた。「1票の格差」が広がるのは大都市圏への人口集中が止まらないひずみが要因だ。選挙制度の議論は国のかたちを議論することにつながる。そんな気構えが必要だ。それが今も根強い「参院不要論」に立ち向かう方法でもある。

衆院の選挙制度改革は各党の思惑が交錯してまとまらず、第三者機関に委ねるといいながら、その機関さえできる見通しが立っていない。脇座長は第三者機関設置自体が無責任だと批判的だった。ならば、ぜひ参院は独自で決着を図ってもらおう。

読売新聞 2014年04月26日

参院選制度改革 「合区」案は受け入れられるか

参院選の「1票の格差」を是正し、「違憲状態」を解消する目的は理解できる。ただ、人口減に悩む地方の声が国政に十分反映されるかどうか。

この案をたたき台に、議論を深めてもらいたい。

参院選挙制度協議会座長の脇雅史参院自民党幹事長が、参院選改革の座長案を示した。議員1人当たりの人口が少ない選挙区を隣接区と統合する「合区」を導入するインパクトのある案である。

「鳥取・島根」「徳島・高知」「大阪・和歌山」など11の合区を作る一方、東京、神奈川など6選挙区の改選定数は1ずつ増やす。東京は「6人区」となり、「1人区」は17選挙区に抑えられる。

1票の格差は、昨年の参院選の最大4・77倍から1・83倍へ一気に縮小されるという。

選挙区選と全国比例選を組み合わせた現行制度の骨格と参院定数242は維持しているが、「抜本改革」案と言えるだろう。

脇氏が、参院で1票の格差を「2倍以内」に抑えるという野心的な方針を掲げた結果、長年定着している都道府県の行政単位を超える選挙区が22府県にも上る。

文化や歴史が異なる選挙区の合区には、抵抗も予想される。

特に、改選定数1の合区では、人口が少ない方の県から「参院に我々の代表を送れなくなる」との不満が出る可能性が大きい。

各党は、隣接する両県から3年ごとに交互に候補者を擁立するなどの調整も必要となろう。

比例選は、各党が候補者の名簿順位をつけられる仕組みにする。合区における候補者調整の余地を残すのが狙いだろうが、複雑な制度になるのは否めない。

参院各党は、座長案を踏まえて来月中に見解をまとめる予定だ。脇氏は、今国会中の改革案の合意を目指しているが、各党の主張には依然、隔たりがある。

自民党には現在、特定の改革案はない。公明党は11ブロック程度の大選挙区制を主張し、民主党は40程度の定数削減案を検討中だ。共産党などは、完全比例選の導入を提案している。

日本の国会議員が人口比では他国と比べて決して多くない以上、民主党が主張する定数削減は今回の改革と切り離すべきだ。

新制度の導入を目指す2016年の次期参院選に向けて、各党は検討を急がねばならない。

1票の格差是正が最優先の課題なのか。衆院と参院の役割・機能分担はどうあるべきか。こうした本質的な議論も欠かせまい。

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