参院選の「1票の格差」を是正し、「違憲状態」を解消する目的は理解できる。ただ、人口減に悩む地方の声が国政に十分反映されるかどうか。
この案をたたき台に、議論を深めてもらいたい。
参院選挙制度協議会座長の脇雅史参院自民党幹事長が、参院選改革の座長案を示した。議員1人当たりの人口が少ない選挙区を隣接区と統合する「合区」を導入するインパクトのある案である。
「鳥取・島根」「徳島・高知」「大阪・和歌山」など11の合区を作る一方、東京、神奈川など6選挙区の改選定数は1ずつ増やす。東京は「6人区」となり、「1人区」は17選挙区に抑えられる。
1票の格差は、昨年の参院選の最大4・77倍から1・83倍へ一気に縮小されるという。
選挙区選と全国比例選を組み合わせた現行制度の骨格と参院定数242は維持しているが、「抜本改革」案と言えるだろう。
脇氏が、参院で1票の格差を「2倍以内」に抑えるという野心的な方針を掲げた結果、長年定着している都道府県の行政単位を超える選挙区が22府県にも上る。
文化や歴史が異なる選挙区の合区には、抵抗も予想される。
特に、改選定数1の合区では、人口が少ない方の県から「参院に我々の代表を送れなくなる」との不満が出る可能性が大きい。
各党は、隣接する両県から3年ごとに交互に候補者を擁立するなどの調整も必要となろう。
比例選は、各党が候補者の名簿順位をつけられる仕組みにする。合区における候補者調整の余地を残すのが狙いだろうが、複雑な制度になるのは否めない。
参院各党は、座長案を踏まえて来月中に見解をまとめる予定だ。脇氏は、今国会中の改革案の合意を目指しているが、各党の主張には依然、隔たりがある。
自民党には現在、特定の改革案はない。公明党は11ブロック程度の大選挙区制を主張し、民主党は40程度の定数削減案を検討中だ。共産党などは、完全比例選の導入を提案している。
日本の国会議員が人口比では他国と比べて決して多くない以上、民主党が主張する定数削減は今回の改革と切り離すべきだ。
新制度の導入を目指す2016年の次期参院選に向けて、各党は検討を急がねばならない。
1票の格差是正が最優先の課題なのか。衆院と参院の役割・機能分担はどうあるべきか。こうした本質的な議論も欠かせまい。
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