巨額の貿易赤字が長引けば、日本経済再生への道は、さらに険しくなるばかりである。
輸出額から輸入額を差し引いた2013年度の貿易収支は、13・7兆円の赤字となった。貿易赤字は3年連続で、これまで最大だった12年度の1・7倍に達した。
政府は貿易赤字が今年度以降、海外景気の回復などを追い風に、緩やかに縮小していくと見ているが、楽観は禁物だ。
貿易赤字拡大の主因は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、停止した原発を代替するために、火力発電所向けの燃料輸入が急増したことである。
主力燃料の液化天然ガス(LNG)輸入額は、10年度の3・5兆円から13年度は7・3兆円と2倍以上になった。資源価格の高騰と円安で、円ベースの輸入額が膨らみ、赤字拡大に拍車をかけた。
資源国への国富流出は日本の国力を低下させる。安全性を確認できた原発の再稼働を進め、火力への過度な依存を脱却すべきだ。
気がかりなのは、安倍政権の経済政策「アベノミクス」で超円高が解消されたのに、輸出よりも輸入の方が大幅に増加し、貿易収支が悪化したことである。
生産拠点が海外に移転する「産業空洞化」が進み、国内に輸出品を生産する工場が減った。円安になっても輸出が増えにくい産業構造に変化したと言える。
薄型テレビなど日本メーカーの製品が、海外から大量に逆輸入されるようになった影響もある。円安になると逆輸入品の価格が上がり、むしろ赤字が拡大する「逆効果」の弊害が顕在化している。
政府は、日本産業への警鐘と受け止めるべきだ。
確かに大企業を中心に業績は回復しているが、空洞化の進行を食い止めないと雇用が減り、消費者に十分な恩恵が波及しない。国内の事業環境を好転させ、内需や雇用の拡大を図りたい。
日本の国際競争力を強化する成長戦略の具体化を、一段と加速させる必要がある。
安倍政権は6月に成長戦略の第2弾を策定する。雇用や医療、農業などの分野で、新たなビジネスの参入を阻む「岩盤規制」に、大なたを振るえるかどうかが、成否を占うカギとなろう。
原発や高速鉄道などインフラの輸出で官民連携を強め、具体的な成果を出すことも大切だ。
アジアや欧州の各国より高い法人税率についても、大幅な引き下げの実現が求められよう。
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