韓国客船沈没 一人でも多く救いたい

毎日新聞 2014年04月18日

韓国客船沈没 一人でも多く救いたい

韓国で重大な海難事故が起きてしまった。既に少なからぬ犠牲者の遺体が収容される一方、300人近い乗客・乗員が安否不明のままだ。

旅客船の内部に閉じ込められている可能性が高いと見られる人々が多いだけに、家族をはじめ関係者の心痛はいかばかりか。

とりわけ気がかりなのは修学旅行中の韓国の高校生たちが多数、生存未確認のままであることだ。一衣帯水の関係にある隣国の苦悩は日本国民にとってもただごとではない。

支援できることがあるなら全力を尽くして支援したい。菅義偉官房長官は「必要なことがあればお手伝いさせていただくと申し入れている」と述べた。日本政府は韓国政府にその意思を重ねて伝え、救助作業に役立つ人員や機材があるなら積極的に提供すべきである。

この事故で残念なのは、沈没した旅客船の船長や乗員に何らかの過失があった可能性が高いことだ。

観光地として日本でも名高い済州(チェジュ)島(ド)を目指し、韓国北部の仁川(インチョン)港を15日夜に出港した「セウォル号」は翌日午前、これも名高い南部の珍島(チンド)付近を航行中に横倒しとなり、その後に沈没した。

韓国メディアの取材を受けた高校生らの証言がある。「船室にとどまれという放送の後、船が傾いて水が入り始めてから救命胴衣着用の指示が出たが、下の階に下りてしまった人たちもいた」「突然船が揺れてコンテナが傾いた。閉まっていた扉を先生たちが開けた。死にたくない一心で冷たい海に飛び込んだ」。数多い同種の証言は、避難誘導が不適切だった可能性を示すものだろう。

そしてそもそも船の沈没原因がまだ特定されていない。船長や操船に関わる乗員らは全員無事だったが、それ以外の乗員たちの中には犠牲者が出ている。

まずは生存者の捜索・救出に全力を尽くし、原因究明も徹底して行い、二度とこうした惨事を起こさないというのが韓国民すべての念願であろう。それは日本国民の願いでもあることを改めて強調しておきたい。

韓国では1990年代、フェリー沈没事故やソウルを貫流する大河・漢江(ハンガン)での橋脚崩落事故、大型デパート崩壊といった大事故が相次いだ。これを教訓に安全を重視し、海洋汚染などが起きれば大勢のボランティアが駆けつける文化も定着した。

しかし今回、韓国社会が受けた衝撃はあまりにも大きく、さまざまな「自粛」が広がっている。ソウルでは買い物客の姿さえまれだという。

今なすべきことは時間との闘いに違いない。決してあきらめず、救える命を一人でも多く救うこと。それが今の韓国の最大の使命であろう。

産経新聞 2014年04月19日

韓国旅客船事故 今一度安全確認の徹底を

韓国の旅客船事故で亡くなった人と安否不明者は、300人近くを数える。修学旅行中の高校生も多く含む。一人でも多くの人が救助されることを祈りたい。

船中に取り残された高校生らは、船が沈没する直前、両親らにメールを送っていた。

「お母さん、僕は話せそうにないから送っておくよ。愛している」「船が傾きすぎて出られないの」「私がよくなかった部分は、全部許して」

文面の一つ一つに胸が痛む。どれだけ恐ろしかったろう。安否不明のまま海を見つめる家族は、どれだけつらいだろう。まず、救助活動に全力を挙げてほしい。

多くの乗客を船に残したまま脱出した船長は、業務上過失致死傷などの容疑で海洋警察の取り調べを受けている。船員の多くも救助された。傾きかけた船内では、繰り返し「動かないでください」とアナウンスが流れ、乗客の避難を遅らせたとみられる。

救命いかだの多くが海上に下ろされていなかった。停電で船内の扉が作動しなくなり、避難を妨げた可能性も指摘されている。

沈没の詳しい原因は分かっていないが、避難誘導などが正しく行われていれば、これほどの大きな被害にはならなかったのではないか。家族らが憤るのも当然だろう。守れたはずの命を人災が奪ったのだとすれば、到底許せるものではない。

ゴールデンウイークが近い日本も行楽のシーズンを迎える。

国内外へ旅行に出かける人も多いだろう。国土交通省は日本国内の旅客船会社すべてに安全運航の徹底を求める通達を出し、救命設備や航路の安全性を再確認するよう求めた。

船舶だけではない。航空、鉄道、高速バスなどの運行会社、ホテル、旅館、旅行代理店など旅客を扱う業者は、この際、安全の確認作業を徹底してほしい。

避難路の確保や避難誘導の訓練は万全か。老朽化した部分はないか。運転手や乗員に過剰労働を強いていないか。防火・防煙設備は正常に作動するか。改めて今一度、点検してもらいたい。事故が起きてからでは遅いのだ。

一人一人の自衛意識も大切だ。避難路の確認や、災害時の避難場所の把握は、旅先でも怠らないようにしよう。一瞬の判断の迷いが事態を悪化させることもある。

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