日韓局長級協議 関係修復へ粘り強く接点探れ

朝日新聞 2014年04月18日

日韓局長協議 関係改善の足がかりに

従軍慰安婦問題をめぐり、日本と韓国の外務省の局長がソウルで話し合った。

互いの主張には隔たりがあり、今回は基本的な立場の確認にとどまった。次回は来月に東京で開くという。

解決への道のりは曲折も予想されるが、安倍政権と朴槿恵(パククネ)政権のもとで直接協議が始まったことを歓迎したい。

この問題を放置できないとの認識を両政権が確認し合った。少なくとも、そこが出発点だ。両政府は、この協議をきっかけに、総合的な関係改善の足がかりを築いてほしい。

今回の協議の伏線は、先月、オランダで開かれた日米韓首脳会談にあった。オバマ米大統領が仲介し、就任から1年以上実現していなかった日韓両首脳の直接対話ができた。

この首脳会談と、いわばパッケージの形で進められてきたのが今回の局長級協議である。

調整は難航した。韓国側は慰安婦問題にしぼった話し合いを求めた一方、日本側は竹島問題や対北朝鮮政策なども協議すべきだと主張した。

開催にこぎつけたのは、日韓の和解を強く求めるオバマ氏が来週、両国を訪れることを双方が意識したためだろう。

結局、初回の協議は慰安婦問題を集中的に話し合ったが、次回以降は幅広いテーマが取り上げられる見込みだという。

慰安婦問題で日韓がもっとも対立するのは日本の「責任」をどこまで認めるかだ。

韓国政府は、市民団体などの強い主張を背景に「法的責任」の認定を求めるが、日本側は国交正常化の際に「法的には解決済み」と主張する。

ただ、日韓ともに前政権だった一昨年秋に、政治決着の間際までこぎつけたことを、双方の当事者らが証言している。

日本側は当時、駐韓大使によるおわびや、すべて政府資金による被害者支援を提案した。

日本の衆院解散で実現しなかったが、韓国側は朴政権下でも同様の提案を求めてきた。

安倍政権も人道的な措置の必要性は認め、韓国側と水面下の折衝を続けている。

日本政府は今後も誠意をもって可能な限りの措置を探るべきだ。一方の韓国政府も市民団体との対話を進め、現実的な解決策に対する国内世論のとりまとめに取り組んでほしい。

日韓の間にはこの問題以外にも多くの懸案が横たわる。両国のトップは、対話のチャンネルを広げ、真の未来志向の日韓関係を切り開く指導力を発揮してもらいたい。

読売新聞 2014年04月18日

日韓局長級協議 関係修復へ粘り強く接点探れ

冷え切った日韓関係を修復することは簡単ではないが、未来志向の関係を再構築するための重要な一歩としたい。

外務省の伊原純一アジア大洋州局長と韓国外交省の李相徳東北アジア局長がソウルで会談し、いわゆる従軍慰安婦問題について協議した。

伊原局長は会談後、「真摯しんしな姿勢で意見交換ができ、有意義な協議だった」と語った。

ただ、慰安婦問題をめぐる日韓双方の主張の隔たりは大きい。

韓国政府は、日本の法的責任の認定や政府による補償など「誠意ある措置」を求めている。

日本政府は、慰安婦問題は「解決済み」との立場だ。国家補償に応じる国際法上の義務はない。1965年の日韓請求権協定は、個人も含めた賠償請求権問題について「完全かつ最終的に解決された」と明記している。

それでも日本は90年代にアジア女性基金を創設し、「償い金」の支払いや医療福祉支援、首相のおわびの手紙など、元慰安婦に対する人道的な措置を講じた。

韓国側が国家賠償と区別された形の「償い金」支給に強く反発し、日本の法的責任の追及にこだわったため、この措置はあまり評価されなかったという経緯がある。

朴槿恵大統領のかたくなな反日姿勢が日韓双方の国民感情の悪化を招いている現状も踏まえれば、日本政府が慰安婦問題で新たな措置を講じるのは政治的には困難だ。

一方で、安倍首相と朴大統領がまだ一度も首脳会談を行えないという異常事態が続いている。

米政府が日韓関係の改善を本格的に仲介してきたのは、北朝鮮の軍事的挑発や中国の軍備増強が続く中、日米韓の連携を立て直す必要があると考えたからだろう。

今回の局長級協議も、来週のオバマ米大統領の日韓歴訪を前に、日韓双方が対話姿勢を演出した面があるが、この機会を関係改善に役立てるべきである。

次回協議は、5月に東京で開かれ、慰安婦問題以外の議題も取り上げる見通しだ。日韓間には、元徴用工による賠償請求訴訟、竹島問題など懸案が多い。様々な問題を協議する中で、双方が歩み寄れる接点を粘り強く探りたい。

来年は日韓国交正常化50周年かつ戦後70年のため、歴史問題が改めて注目される可能性が高い。

今年秋のアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際会議に合わせて、日韓首脳会談を実現する必要がある。双方が一層努力を重ねなければなるまい。

産経新聞 2014年04月18日

日韓局長級協議 広範な関係改善を目指せ

日韓両国の外務省の局長どうしがソウルで会談し、協議を継続していくことなどを確認した。

オバマ米大統領の仲介で日米韓首脳会談が実現したのを契機に、日韓でも実務者による本格的な話し合いが始まった。

折から、ワシントンでは日米韓3カ国の防衛担当の局長級協議が始まる。核やミサイルの開発をやめず、「新形態の核実験」も示唆する北朝鮮への対処など、地域の平和と安定に向けて日米韓の連携は欠かせない。

その3カ国連携を機能させるためにも、日韓の外交当局者らが日頃から緊密な意思疎通を図っておくことが重要である。

協議では、慰安婦問題が中心テーマとなり、韓国側は日本政府による法的責任の認定や謝罪、賠償を求めた。日本側は、1965年の日韓請求権協定に基づき、賠償問題は「完全かつ最終的に解決済み」との立場を表明した。

忘れてならないのは、関係修復を図る過程でも、日韓首脳会談の実現を焦り、原則を外れた安易な譲歩をしてはならないことだ。

日本政府は過去、賠償問題は解決済みとの原則を貫く一方、アジア女性基金を通じ、受け取りを拒否しなかった元慰安婦へ償い金を支払っている。首相名で心からのおわびと反省の気持ちを表す手紙も渡してきた。

安倍晋三首相は、慰安婦募集の強制性を認めた河野談話を継承するとしている。だが、菅義偉官房長官が「日本の基本姿勢が今回の協議で変わる余地はない」と述べているように、戦後賠償に関する原則的な立場は変えていない。

韓国側は「誠意ある措置」を求めているが、日本が法的責任を認め、政府支出による補償金を支給することなどを意味するものなら応じることはできない。

韓国は、両国関係を停滞させるかたくなな姿勢を改めるべきだ。河野談話の発表後も、韓国は慰安婦問題を蒸し返してきた。謝罪を繰り返す日本の譲歩は、問題解決につながらなかった。

日韓間には、安全保障面の情報共有を可能とする秘密保護協定、自衛隊と韓国軍が相互に軍需物資や役務を提供する物品・役務相互提供協定(ACSA)の締結などの課題がある。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など、経済面での関係強化も重要だ。これらにこそ共に取り組んでほしい。

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