地球温暖化対策 危機回避の道筋描く時

朝日新聞 2014年04月15日

地球温暖化 対策は待ったなしだ

私たちはこのまま破局への道を歩み続けるのか。

煎じつめれば、それが地球温暖化をめぐる世界の多くの専門家からの問いかけである。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめる報告書の概要が固まった。

07年の前回から中身はそう変わらないが、この7年間に各国で重ねられた研究により、温暖化とその甚大な影響がより確実に見えてきた。「懐疑論」はほぼ否定されたといってよい。

報告書によると、このままでは今世紀末に世界の平均気温は産業革命前より3・7~4・8度上昇する。国際目標の2度未満を大きく上回る。

水資源や農作物などへの悪影響はすでに表れている。熱波や洪水、台風など極端な気象現象や海面上昇の恐れが高まり、生き物の大絶滅が起きかねない。水や食料の欠乏は、人間を戦争に駆り立てる要因にもなる。

対策は待ったなしだ。二酸化炭素など温室効果ガスの排出を減らして気温上昇を抑える「緩和策」と、温暖化に伴う災害や凶作などに備える「適応策」の両輪を回すべきときだ。

今世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるにはどうしたらよいのか。世紀半ばのガス排出量を10年比で4割から7割減らし、そして世紀末にはゼロにする。それでやっと目標達成の可能性が高まるという。

そのためには、もっと省エネと再生可能エネルギーの利用を進めるとともに、ガスを空中に出さない新火力発電などを普及させることが重要だ。

原子力の拡大は、核の拡散や廃棄物処理など別のリスクの深化が避けられない。原発事故の処理も総括もできていない日本のとるべき選択肢ではない。

ことし9月の国連気候変動サミットを起点に、来年末には20年以降のガス排出削減に向けた新しい枠組みがつくられる。

各国がバラバラに動いても状況は改善しない。環境技術を途上国に広め、統一的な炭素価格の導入でガス排出を減らすなど世界の協調行動が必要だ。

英米独や中韓では、温暖化で起きる問題を定期的に調べ、国や自治体レベルの適応計画づくりも進めている。そうした流れに日本政府は遅れている。

日本が昨年示したガス排出削減の目標は、努力不足として国際的に批判された。国の適応計画づくりも来年の予定だ。

世界に通じる削減目標を早急に詰めるとともに、温暖化に備えた防災構想や省エネ型の都市づくりなどを強力に進める態勢を整えるべきだ。

毎日新聞 2014年04月15日

地球温暖化対策 危機回避の道筋描く時

地球温暖化の破局的な影響を食い止めるには、21世紀末に世界の温室効果ガス排出量をほぼゼロにする必要がある。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第3作業部会は報告書でそう指摘した。温暖化を巡る国際交渉では、すべての国が参加する排出削減の新たな枠組みについて、来年末の合意を目指している。報告書はその科学的な土台となる。各国は、温暖化が招く危機回避に向け、対策の具体的道筋を早急に描かなければならない。

IPCCには三つの作業部会があり、各国の政府代表や科学者が参加している。第1部会は昨年9月、有効な対策が取られないと21世紀末の気温は最大4・8度上昇すると予測した。第2部会は先月、そうなれば世界的な食料危機や紛争を招く恐れがあると指摘した。第3部会の報告書は7年ぶりの改定で、具体的な削減対策やそのコストを評価した。

各国は地球の平均気温の上昇を18世紀の産業革命前と比べ2度未満に抑える目標に合意している。実現には「2050年までに世界の温室効果ガス排出量を10年比4~7割削減し、21世紀末にはほぼゼロにする必要がある」というのが第3部会の結論だ。50年時点では、再生可能エネルギーなど低炭素エネルギーを3~4倍に増やすことが求められる。

達成は容易ではない。しかし、第3部会の試算では、対策コストは世界全体の消費拡大率を0・04~0・14ポイント鈍化させるだけで済むという。

三つの部会報告書が示したのは、温暖化対策は世界にとって待ったなしの課題であり、そのコストは現実的で、負担が不可能なものではないということだ。子孫につけを回さないためにも、国際社会は今こそ連携を強め、対策を促進する時だ。

先進国の取り組みは当然だが、世界の温室効果ガス排出量は途上国が先進国を上回る。第3部会報告書は、温暖化対策が大気汚染の削減やエネルギーシステムの強靱(きょうじん)化をもたらすことも示している。中国やインドなど新興国は、こうした観点からも積極的な貢献をしてもらいたい。

日本は、昨年打ち出した20年に05年比で3・8%削減という排出削減目標の引き上げを国際社会から迫られるだろう。政府はエネルギー基本計画で原発再稼働の推進を打ち出したが、原発頼みの削減対策は認められない。第3部会報告書は原発を低炭素エネルギーの一つと位置づけつつ、核拡散や核のごみなどの「障壁やリスクがある」と指摘した。

福島第1原発事故を経験した私たちの責務は、原発に依存しない温暖化対策を推進することだ。省エネや再生エネの導入を加速し、生活様式を見直す絶好の機会としたい。

産経新聞 2014年04月16日

温暖化対策 今は原発を動かすときだ

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会が、温室効果ガスの排出削減に関する新たな報告書を公表した。

産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑え、気候の激変を避ける「2度目標」を達成するには、2050年の温室効果ガス排出量を10年比で4~7割削減し、今世紀末にはゼロまたはマイナスにする必要があるとしている。

そのためには、今世紀半ばまでに再生可能エネルギーや原子力などの供給を3~4倍にしなければならないという。

今回の報告書では、原子力を「成熟した低炭素エネルギー」と明確に位置づけた。

日本政府は、原発のリスクとメリットを冷静に評価し、国際社会と地球環境を視野に入れて利用を考えるべきである。

日本は現時点で全ての原発が停止し、火力発電による二酸化炭素の排出増が続いている。

温暖化は、熱波や干魃(かんばつ)、強大な台風などの極端な気象現象をもたらし、人命を脅かす。農作物へも悪影響を与え、食糧不足は国際紛争の火種にもなりかねない。

報告書は原子力について「各種の障壁やリスクが存在する」とも指摘した。しかし、国内の原発リスクを回避することだけを優先し、地球規模の温暖化対策に背を向けるような姿勢では、国際社会の理解は得られない。

バイオマスなどの再生可能エネルギーや、二酸化炭素を地中に埋めるCCS(炭素回収・貯留)の飛躍的な普及、拡大には時間がかかる。現時点で、低炭素化への貢献が計算できる「成熟した技術」は原子力だけだ。

今回の報告書は、今秋公表される第5次統合報告書に盛り込まれ、2020年からの温暖化対策の次期国際枠組みを決めるための土台になる。米中露や多くの新興国は、原発を重要なエネルギーと位置づけ、温室効果ガス削減対策にも織り込むだろう。

日本政府が昨年示した排出削減目標は、国際社会から「後ろ向き」と批判された。

将来的に「原発にも化石燃料にも依存しない社会」を目指すとしても、今は原発の安全性を高めて動かすべきだ。脱原発に縛られると国際社会から孤立し、日本が貢献してきた省エネ技術も正当に評価されなくなる恐れがある。

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