日米防衛相会談 「北」への共同対処を強化せよ

読売新聞 2014年04月09日

日米防衛相会談 「北」への共同対処を強化せよ

この1年で4回目の日米防衛相会談が東京で行われた。自衛隊と米軍の協力を閣僚が緊密に協議し、具体化していることは高く評価できる。

ヘーゲル米国防長官は小野寺防衛相との会談で、北朝鮮の核やミサイルの脅威に対応するため、2017年までに米海軍の弾道ミサイル防衛対応型のイージス艦2隻を日本に追加配備し、計7隻態勢にすると表明した。

日米同盟の抑止力を高める米海軍の増強を歓迎したい。

北朝鮮は一昨年12月、米本土に到達する可能性がある長距離弾道ミサイルを発射した。先月下旬にも中距離弾道ミサイル2発を発射しており、小野寺防衛相は、さらなる発射に備え、ミサイル破壊命令を自衛隊に発令している。

ミサイル防衛では、ミサイル発射の兆候の把握に加え、発射の探知、追尾、迎撃という一連の対応を短時間に行う必要がある。その実効性の向上には、日米双方が情報を共有し、適切に役割分担して連携することが欠かせない。

海自と米海軍は長年、密接な協力関係にあるが、その関係を一層深めることで、ミサイルへの対処能力が高まるはずだ。

集団的自衛権に関する日本の憲法解釈見直しの動きについて、ヘーゲル長官は「その努力を奨励し、支持する」と明言した。

北朝鮮や中国の軍備増強や示威活動によって、北東アジアの安全保障環境は一段と厳しくなっている。解釈変更によって日米同盟を強化することは、日本だけでなく、アジア全体の平和と安定を確保するうえで大きな意味を持つ。

政府・与党は、集団的自衛権の行使を容認する方向で合意形成を急いでもらいたい。

防衛相会談で、中国の「力による現状変更」に反対し、尖閣諸島が日米安保条約の対象であることを再確認したことは重要だ。

ヘーゲル長官がウクライナ情勢に関連して指摘した通り、21世紀において、力による威嚇を背景にした国境線の変更は許されない。日米を含む国際社会全体が結束して対応しなければならない。

日本に続き中国を訪問したヘーゲル長官は、常万全国防相と会談した。中国が昨年、東シナ海で防空識別圏を一方的に設定したことを厳しく批判したという。

米国は、中国に対し、サイバー能力を含む軍事力の透明性の向上に努めるよう呼びかけている。

日本も米国と共同歩調を取り、様々なルートで中国への働きかけを強めることが大切である。

産経新聞 2014年04月10日

米中国防相会談 自らの挑発は忘れたのか

東シナ海、南シナ海の安全保障をめぐり、中国を訪れたヘーゲル米国防長官と常万全国防相が激しく応酬した。

会談後の会見で、ヘーゲル氏は尖閣諸島への挑発を繰り返す中国を念頭に、日米安全保障条約に基づいて「日本防衛の義務を完全に果たす」と述べた。中国による東シナ海上空での一方的な防空識別圏の設定も批判した。

常氏は「領土を守る必要があれば武力を使用する準備はできている」と恫喝(どうかつ)的表現で反論した。

ヘーゲル氏が、力による現状変更は認めないとの立場を明確に示した点は歓迎する。同盟国日本へのリップサービスにとどめるのではなく、米国には中国牽制(けんせい)をより具体的な行動で示してほしい。

ヘーゲル氏は日本、中国訪問に先立ち、ロシアのクリミア併合に言及しながら「ロシア以外にも力ずくで他国の領土主権を侵害しようとする国は存在する」と中国を念頭に置いて指摘していた。

米国の外交・安全保障面での影響力低下には、日本や東南アジア諸国など多くの国が不安を抱いている。ヘーゲル氏の一連の発言には、こうした懸念を和らげる意味合いもあるのだろう。

だが、オバマ政権はシリア問題への対応で軍事介入をためらい、ロシアによるクリミア併合にも効果的な手を打てているとはいえず、威信を失う場面が続く。

常国防相が尖閣周辺や南シナ海での自らの挑発行為を棚に上げ、安倍晋三首相を名指しし「歴史を逆行させ、地域の平和と安定に脅威を与えた。米国は日本を放任すべきでない」と批判したのも、米国による牽制が十分、効いていないことの表れではないか。

常氏は、中国は緊張を高めないよう自制しているとしたが、尖閣近海で政府公船による領海侵入などを繰り返しているのはどこの国なのか。「中日関係の悪化は全て日本に責任がある」などの発言には唖然(あぜん)とするばかりだ。

米国は日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定などを通じ、中国への牽制が実効性あるものとなるよう、抑止力の充実を図るべきだろう。

日米の共同対処能力を高めることに加え、日本が尖閣など領土、領海を自ら守る努力を強めるのは当然だ。漁民を装った武装工作員の上陸に対処できるよう、領域警備法制の整備も急務である。

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